看護師が教える!インシデントレポートを簡単・正確にスラスラ書くコツ
  • 患者さん、利用者さんが転倒した!
  • 絶食検査なのに食事をしてしまった、しそうになった!
  • 薬の変更がドクターの指示通りになっていなかった!

当事者でなくても、発見者であれば「インシデントレポート書いて」と言われてしまいます。

誰しも、インシデントレポートを書いて提出する必要性は分かっているんです。でも、書く事自体に時間がかかって大変だし、内容について注意されたうえに訂正させられることもあり、インシデントレポート作成は看護師を悩ます存在ですね。

この記事では、看護師が簡単に正確なインシデントレポートを書く方法、しかもスラスラ書く方法を伝授します。ぜひ参考にしてください。

丁寧に書いたインシデントレポート、なぜ訂正させられるの?

ここからは、インシデントレポートの「出来事」の部分を簡単に書く方法を伝授していきます。

同じ「出来事」を3人の看護師さんに書いてもらいました。早速見ていきましょう。齋藤さんという患者さんが自室内で転倒した、というインシデントです。

まずは、新卒で働き始めたばかりのサクラさんです。

「昼から体温の再検をしようと訪室すると斉藤氏が転倒しているのを発見した。すぐに応援を呼んで、医師に報告した。立ち上がろうとして滑ったと言われた。外傷はなかった。」

看護師2年目のアカリさんです。

「肺炎治療中で抗生物質点滴中の斉藤氏を訪室したところ、斉藤氏が床に倒れているところを発見した。バイタルサインは正常で、意識レベルの低下も無かった。すぐに医師に報告し、診察の上経過観察となった。」

看護師10年目のミユキさんです。

「肺炎治療中で抗生剤点滴中の斉藤氏の体温再検のため14:00に個室を訪室した。ベッド右側の床に仰向けの状態で倒れているところを発見した。自力でスリッパをはいて立ち上がろうとしたところ、滑ってしまったと話された。バイタルサインは異常なし、意識清明で外傷はなし。半介助で立ち上がることができた。医師に報告し、診察の上経過観察となった。普段は杖歩行、転倒転落アセスメントスコア危険度Ⅱで、看護計画立案されている。」

サクラさん、アカリさん、ミユキさんのインシデントレポートを読み比べてどう感じましたか?

「出来事」は細かすぎない程度に、客観的にありのままを書く

病室3人のインシデントレポートの一番大きな点はどこだと思いますか?

それは「転倒していた」「床に倒れていた「ベッド右側の床に仰向けの状態になっていた」という部分です。

サクラさんは、斉藤さんが倒れる瞬間を見てはいません。「転倒していた」はあくまでもサクラさんが推測したにすぎません。厳密には、アカリさんの「倒れていた」も間違いです。客観的事実は、ミユキさんの「ベッド右側の床に仰向けの状態」なのです。

経験が浅い看護師さんのインシデントレポートが何回も書き直しさせられる理由は、「出来事を客観的に記載できてない」ことなのです。

インシデントレポートを読んだ人が、対象者をイメージできるか

転倒してしまった斉藤という患者さんを知らない人も、斉藤さんをイメージできるインシデントレポートであるか?を考えてみましょう。

患者さんの事を良く知らない上司が、インシデントレポートを読んで「意味が分からない」となるとアウトです。

インシデントレポートには、「出来事」とは別に対象者の属性である、性別、年齢、認知症の有無などを記載する項目がありますから、「出来事」にプロフィール的に細かく記載する必要はありません。

ミユキさんのインシデントレポートから、斉藤さんに関するたくさんのことが分かると思います。

  • 斉藤さんは肺炎の治療中である。
  • 杖があれば歩けるが、転倒のリスクはやや高い
    (転倒転落アセスメントスコア危険度Ⅱ)
  • 個室入院している。
  • 話すことができる。
  • 倒れた時に発熱はなかった。
  • スリッパを履いて移動している。

斉藤さんは麻痺などは無いけれども、歩行がやや不安定。しかし普段はしっかりした患者さんということが分かってきますね。

再発予防策につての考察につながる「出来事」の記載がカギ

サクラさんは、「再発予防策」を考えて記載するところに悩んでいます。斉藤さんが倒れているのを発見してしまったばかりに、インシデントレポート作成に追われ仕事が全然はかどらず、残業確定か?と嘆いています。

なぜ転倒が起こったのか?再発防止にはどうすればいいのか?という項目です。転倒を二度と起こさないための方法なんて、考えられるワケないじゃない!と頭を悩ませているのです。

ポイントは、ミユキさんのレポートで得られた、斉藤さんに関する情報にあります。「出来事」の部分にキーワードがちりばめられているのです。再発予防策を考える上で、丁寧な状況描写がカギになります。詳しく解説していきましょう。

肺炎治療中、スリッパ、滑る、杖、個室すべてがキーワード

スリッパ

斉藤さんはなぜ転倒してしまったのでしょうか?斉藤さんいわく「スリッパを履こうとして滑った」とのことです。

看護師さんは、ここからさらに一歩進んで原因について掘り下げていく必要があります。

看護師10年目のミユキさんに教えてもらいましょう。インシデントレポートの再発予防策を見てみましょう。

「斉藤氏は杖無しの自力歩行がやや不安定であり、転倒転落の危険性は予見されていたため、歩行に不安があるときは看護師を呼ぶよう指導されていた(看護計画より)。自宅の床と違う感触で履きなれないスリッパということもあり滑ってしまったと考えられる。本人、家族と相談し、滑りにくく履きなれた靴を持ってきて頂くこと、ベッドからの移動時はナースコールして頂くことを再発予防策とした。再発予防策を講じても危険と判断した場合は、詰所近くの大部屋に移って頂く可能性もあると説明し、同意を得た。」

ミユキさんが考え、実行した再発予防策はかなり完成度の高い内容と言えます。

経験の浅い看護師さんは、普段は杖歩行、スリッパで滑る、個室だった、という客観的なキーワードを組み合わせることで、考えがまとまってくると思います。

キーワードを「出来事」に盛り込むことで、インシデントレポートを書くことはグンと楽になります。

インシデントレポートがスラスラ書けると看護師のストレスは減る

インシデントが無くなることは絶対あり得ません。

インシデントレポートを収集する目的は、取り返しのつかない大きな事故を回避するためです。看護師さん一人一人のミスを責めたり、ペナルティーを科すためではありません。

看護師さんにとって、インシデントレポートがスラスラ書けずつまづいてしまったり、提出したはいいけれど、書き方について注意されたりすることは大変なストレスです。特に、夜勤明けでインシデントレポートを書き終わるまで帰れない時などは、苦行以外の何物でもありません。

インシデントレポートを正確に書く事、簡単に書く事、スラスラ書く事は「出来事を客観的にとらえる力」にかかっています。インシデントレポートのストレスから必ず解放されます。

まとめ

いかがでしたか?

看護師さんを悩ますインシデントレポート。簡単に正確にスラスラ書くコツについて伝授してきました。
参考書では5W1H(いつ・どこで・だれが・なにを)を正確に書くようにと解説されていますが、もっともっと気楽に考えてもらえる様に解説してきました。客観性が大切、という点については同じ意味と思ってください。

インシデントレポートを書くことは大変な負担だと思いますが、きっと患者さんの役に立ちます。看護師の皆さん、一緒に頑張りましょう。