看護師さんの「輸血」のお仕事はどんな内容?

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輸血療法は、適正に行われた場合には大変有効性が高く、広く普及している治療法です。

輸血は怖い、輸血は苦手、輸血は分かりにくい、輸血は不安という看護師は少なくありません。特に新人看護師さんは、輸血に関わる業務は緊張度が高いと思います。

看護師と輸血療法の関りは深く「私の働いている診療科は絶対輸血に関わることはない」と言い切ることは出来ません。血液内科関連で働く看護師だけが輸血をするわけではありませんし、内視鏡検査室、放射線科、手術室も輸血に関わります。入院患者さんだけではなく、外来患者さんも輸血療法を受けます。

輸血療法は看護師が避けて通ることのできない道と言えるでしょう。

この記事では、看護師が絶対知っておきたい輸血療法の基本について丁寧に解説していきます。ぜひ、最後まで読んで参考にして下さい。

輸血は看護師が実施者になる、その責任は大きい

輸血

輸血療法に緊張感と不安が付きまとう理由。それは、看護師が輸血の実施者になるということです。

点滴も、配薬も、褥瘡処置も看護師が実施者なのだから、そんなことは当たり前じゃないか!何を今さら!と思われるかもしれません。

輸血療法の指示を出すのは医師です、輸血療法を実施するのは看護師です。しかし、輸血療法は、医師と看護師だけが関わるわけではありません。日本赤十字や臨床検査技師など多数の業種が関り、成り立っています。自己血採血または献血で採取された血液が加工され、患者さんに届くまで、何重もの行程がありどこにもミスが許されません。

患者さんに輸血製剤を投与する、最終行程を看護師が担当するということは、全行程に対する最終責任を負うということを意味します。

  • クロスマッチテストは正しく行われていたが、不規則抗体プラスを見逃していた
  • 輸血同意書は取っていたが、サイン漏れと不備があった
  • 赤血球製剤の外観が黒く変色していることに気が付いた

これらのミスを発見する最後の砦は看護師です。そういった意味で、強い緊張感や不安を感じるのは無理のない事だと言えます。

輸血用血液製剤の種類を知っておこう

輸血用血液製剤の種類

輸血用血液製剤の種類を知っておきましょう。輸血療法で投与する血は赤いとは限りません。

主な輸血用製剤は「赤血球液製剤」「濃厚血小板製剤」「新鮮凍結血漿」の3種類です。

ここでは、「血液凝固因子」「アルブミン」「フィブリン接着剤」「免疫グロブリン」などの血漿分画製剤については省略します。

200ml献血、400ml献血、成分献血で採取された血液は、遠心分離にかけて赤血球、血漿、血小板の3つの成分に分割されます。患者さんの病状的に必要とする成分だけを輸血する成分輸血が現在の主流です。患者さんに必要な成分だけを投与でき、身体への負担が少ないためです。

遠心分離されていない血液は、全血輸液製剤と言います。事故や外傷などに伴う大量出血で、緊急的にすべての血液成分を同時に補充する場合に投与されます。現在はほとんど実施する機会はありません。

知っておきたい赤血球液製剤

赤血球液製剤は最も使用頻度が高いものです。

出血性病変や外傷、手術などで赤血球不足の状態に使用されます。高度貧血の患者さんに使用する輸液製剤です。

保存温度は2~6℃で、有効期間は採血(献血)後21日間です。

投与時は、一定時間室温においてから投与します。昔は加温機で人肌程度に温めて投与していましたが、現在では行っていません。輸血製剤の「赤血球液製剤」「濃厚血小板製剤」「新鮮凍結血漿」中で「赤い」のはこの「赤血球液製剤」だけです。

知っておきたい新鮮凍結血漿

血液凝固因子が欠乏状態で、出血傾向のある状態に使用されます。

保存温度は-20℃以下で、有効期間は採血(献血)後1年間です。

カチカチに凍った状態ですので、融解して使用します。融解には新鮮凍結血漿を恒温槽やFFP融解装置を使用します。これらの装置がない場合は、湯煎で有形します。30~37℃を保って融解する必要があり、冷たすぎても熱すぎても凝固因子活性の低下をきたす危険があります。

また、融解3時間以内に輸血する必要があります。取り扱いが難しい製剤と言えるでしょう。

知っておきたい濃厚血小板製剤

血小板の減少、血小板機能低下による出血傾向悪化の状態に使用されます。

保存温度は20~24℃で、有効期間は採血(献血)後4日間です。

献血で得られた血液を加工して作る事には変わりありませんが、4日しか有効期限がないため、確保が難しい輸液製剤です。

輸血製剤投与時の流れ、注意点を解説

「赤血球液製剤」「濃厚血小板製剤」「新鮮凍結血漿」を投与する時に、共通する流れ、注意点を順に解説していきます。

① 輸血同意書に署名があることを確認

患者さんが輸血に同意しているかを確認します。それには、各病院で定められた輸血同意書に署名されているかを確認します。

輸血同意書に患者さんの署名があっても、医師の署名が漏れていたり、日付が記載されていないなどの不備がないか十分に確認しましょう。

② 投与する輸液製剤の種類、単位数を確認

輸液製剤の種類、単位を十分に確認します。特に単位数は間違えやすいので注意が必要です。

例えば、「赤血球液製剤」は1単位1パックのものと、2単位1パックの2種類が存在します。「赤血球液製剤」4単位投与の指示が出た場合、2単位1パック+1単位2パックの組み合わせになることもあるということです。

③ 有効期限、製剤内の外観異常の確認

輸血作業

輸液製剤が届いたら、パックに記載されている有効期限が適切かを確認します。「新鮮凍結血漿」は融解後3時間以内かを確認します。

輸血製剤は、外観上異常が無いか、目視での確認が大変重要です。溶血や感染の有無を判定する工程になります。チェックするポイントは以下の通りです。

パックの割れや破れ

新鮮凍結血漿は、カチカチに凍った状態で落下などの津用衝撃が加わると、パックごと割れる恐れがあります。凍っている時は気が付かず、融解時に発見されることがあります。

色調の変化

パック内の輸液製剤の色調に異常が無いかを確認します。

「血小板濃厚液」は室温(20~24℃)で保存するため、ごくまれに細菌汚染を起こす危険性があります。外観上、白く濁ったりしていないかを確認します。「赤血球液製剤」は保存によるエルシニア菌汚染が問題となります。黒っぽく変色していないか、ポート部分と本体の色調に著しい違いがないかを確認しましょう。異常かどうか分からない場合は、必ず医師、臨床検査技師に確認しましょう。

④ 保管方法が適切か確認

輸血製剤が適切な温度で保管されていたかを確認します。輸液製剤は適切に保管されていたもの以外、使用できません。

「血小板濃厚液」が冷蔵庫内で保管されている、「赤血球液製剤」が加温されている、「新鮮凍結血漿」が融解されてから3時間以上経っている、これらは全て間違いです。

⑤ 患者間違いがないか確認

患者氏名、血液型を確認するのはもちろんですが、輸液製剤番号、交差適合試験(クロスマッチ)結果、不規則抗体の有無、血液製剤放射線照射の有無も確認が必要です。

輸血実施マニュアルに沿って、2人以上で確認します。

これらの確認は、実際に輸血投与する時だけではありません。検査室から輸血製剤を受領する時、輸血製剤準備の時、実施直前など、その都度確認を行います。各施設のマニュアルを熟知して、確実に実施しましょう。準備段階で輸液セットが正しく選択されているかもダブルチェックします。

⑥ 輸血製剤投与経路の確認

輸血製剤の投与経路は主に末梢静脈路です。

末梢静脈路が確保できない患者さん、手術中の患者さんなど特殊なケースは、医師の指示で中心静脈ルートや一時透析用カテーテルなどから輸血製剤を投与する場合もあります。

末梢静脈路の場合、20G以上の末梢静脈確保ができているか、血管外漏出がないか(点滴漏れがないか)、穿刺部位に感染兆候がないか、必ず確認します。22G以上の細い末梢静脈確保では、輸液製剤が滴下できなかったり、溶血の可能性があります。

⑦ 輸血療法の副作用観察

投与開始時から15分程度は付き添って観察することが望ましいと言われています。特にアナフィラキシーショックは迅速な対応が必要です。異常を観察した場合は、直ちに投与中止し医師に報告します。

輸血製剤の投与速度は医師の指示に従います。急速な投与は循環器に負担をかけ、心不全を起こす危険性があり注意が必要です。また、輸液製剤を滴下する時は、普通の点滴用輸液ポンプを使用してはいけません。専用の輸液ポンプを使用します。

⑧ 輸血療法記録の作成

輸血療法中のバイタルサイン、一般状態、輸血療法開始時間、製剤更新時間、終了時間などをマニュアルに沿って記録を作成します。

輸血療法の副作用について

輸血療法の実施者である看護師にとって、副作用の早期発見は重要な役割です。輸血療法の副作用について記述していきましょう。

ちょっとむつかしく感じるかもしれませんが、大切なポイントですのでしっかり押さえておきましょう。

副作用は大きく分けて「溶血性副作用」「非溶血性副作用」に分かれます。

「溶血性輸血副作用」の代表的なものは、急性型副作用として輸血療法開始後数分から数時間以内に発症する血液型不適合による血管内溶血が挙げられます。「非溶血性輸血副作用」の代表的なものは、アナフィラキシーショックです。気分不良、顔色不良、意識レベルの低下、発熱、バイタルサインの変動などが見られた場合、輸血投与を中止して直ぐに医師に報告します。

患者さんの側を決して離れず、看護師の応援を呼びましょう。バイタルサインを継続的に観察します。生理食塩液など医師が指示した点滴に更新する場合は、必ず輸血セットを交換して行います。

知っておこう輸血関連急性肺障害(TRALI)

輸血関連急性肺障害(TRALI)は聞きなれない医療用語かもしれませんが、輸血療法の副作用を理解するうえで絶対に知っておいて欲しいことの一つです。

輸血中、輸血後6時間以内に起こる、重篤な非溶血性輸血副作用です。呼吸困難、酸素飽和度の低下、時に血圧低下、発熱、低酸素血症など、心不全症状をきたします。現在はっきりとした原因が解明されていない副作用です。

注意点としては、輸血療法の循環器負荷による心不全ではないという点です。もっとかみ砕いていえば、心機能の悪い患者さんへの急速輸血や、循環血液量の増加による心臓への負担ではないということです。

知っておこう輸血後移植片対宿主病(GVHD)

「献血してくれた人」「血液の提供者」の血液から作られる輸液製剤は、投与される患者さんにとっては「異物」です。

輸血製剤中に含まれる血液の提供者のリンパ球が、輸血を受けた患者さんの体内で増殖し、全身組織を攻撃することで起こる副作用です。2000年以降は国内発生は無いとされています。

過去には、輸血療法後に1~2週間頃に発熱,紅斑,下痢,肝機能障害及などを伴う激しいアレルギー反応を起こして死亡するケースがありましたが、現在は原因が解明されており、対策が取られています。

その対策とは、輸血製剤製造過程のリンパ球除去と、放射線照射血液の使用です。輸血製剤に放射線を照射し、残存する血液提供者のリンパ球を死滅させることで発症を防ぐことができます。輸液製剤になぜ放射線照射?とギモンに思っていた方もこれで解決ですね。

輸血療法を受ける患者さんの不安と向き合おう

輸血療法は、看護師など医療従事者の緊張以上に、患者さんの不安や緊張が強い治療です。輸血同意書には、かなり重篤な副作用に関して記載されていることが普通です。

  • C型肝炎やエイズが移ったらどうしよう
  • アレルギー反応で死ぬこともあるらしい
  • 人の血が体に入るのは、怖い
  • 針は凄く太いらしい、痛そう

実際に「赤血球液製剤」の赤い血が、準備されているのを見ると、恐怖感を訴える患者さんもおられます。看護師は、患者さんが輸血療法のメリットと効果をポジティブにとらえてもらえるよう援助していきます。

輸血開始直後から付き添って観察することは、副作用の早期発見と共に、患者さんに安心感を持ってもらえるよう援助することでもあるのです。

さいごに

輸血製剤は、献血者の善意で提供された血液で作られる大変貴重な製剤です。そして、大変高価なものです。適切に投与されれば、輸血療法は患者さんの苦痛を取り除き、命を救う治療です。

看護師は、輸血療法の実施者として何よりも安全に治療が行えるようサポートする立場です。輸血に関わることは、不安かもしれませんが正しい知識と技術を身に着けて、患者さんの回復を支援できるようになりましょう。

何度も確認することは、無駄にはなりません。安全第一で輸血療法に関わっていきましょう。

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