点滴が逆流するとどうなる?看護師が原因と対処法を徹底解決!

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看護師の皆さん、忙しい毎日お疲れ様です!今回は、看護業務の中心である点滴のトラブルについて解説していきます。

点滴と言っても色々な種類があります。中心静脈路か末梢静脈路か?一時的な点滴か持続点滴か?末梢静脈路を確保して行う点滴か金属針を穿刺して行う点滴か?

高速道路逆走事故

今回は点滴の逆流がテーマです。点滴の逆流が起こると、業務が増えて多忙に拍車がかかりますし、患者さんに恐怖感を感じさせてしまうこともあります。看護師にとっては出来る限り避けたい事態ですね。

年末年始に帰省で高速道路を利用された方も多いのではないでしょうか?最近では高齢者による高速道路の逆走が度々話題になりますね。同様に、本来進むべき進路を逆向きに流れることはいかなる場合においても危険が生じるものです。

この記事では、点滴の逆流を起こさないコツと点滴の逆流が起こった時のスマートな対処法について解説していきます。ぜひ最後まで読んで参考にしてみて下さい。

基本の基本、点滴の逆流はどういう状態か

点滴の逆流の定義は、「点滴の投与ルートの末梢側(輸液本体側)に患者の血液が逆流している状態」と言えます。

血液の量が多く、点滴ボトルまで達しているような事例、末梢静脈針(サーフローなど)の内部に血液が逆流して固まってしまった事例、輸液ルートや延長チューブの接続が外れたりゆるんだりして血液が漏れている事例など、点滴の逆流の程度は様々です。

患者さん自身が「点滴が逆流している!」と慌ててナースコールを押してくるケースは、逆流する血液の量が多く、輸液チューブ内や点滴ボトルに明らかに血液が見られるケースがほとんどです。

点滴の逆流は、逆流の原因、逆流による悪影響の2つに分けて考えていきましょう。

点滴の逆流が起こる原因を解説

点滴の逆流が起こる原因を解説していきます。トラブルに対応するためには、まず原因を把握することが大切だからです。

人体には「血圧」があります。血圧は動脈の圧として数値化されますが、実は静脈にも圧があります。静脈にも血が流れているのですから当然ですね。

静脈血圧は20~30mmHgと、動脈血圧に比べれば大変低いですが、静脈内に留置針などのルートが挿入された状態で、その先端を穿刺部と水平か、下方向に置けば血液が逆流していきます。

点滴が逆流する主な原因は以下の通りです。詳しく解説していきます。

  1. 末梢静脈針が動脈に入っている
  2. 点滴ボトルなどの本体と点滴穿刺部の落差が少なすぎる
  3. 輸液ルート、延長チューブの接続外れと緩み
  4. 輸液流量が少なすぎる

原因その1 末梢静脈針が動脈に入っている

末梢静脈を穿刺するような点滴手技で起こります。

金属針、翼状針、末梢静脈留置針を穿刺した時に、勢いよく血液が逆流してきたり、輸液ルートを接続しても点滴が滴下されず、血液が逆流してくるため直ぐに分かります。

静脈を穿刺するはずが動脈を刺す?!そんなことあり得るの?そんなバカなことはあり得ない!と思われるかもしれません、が実際に起こります。起こりやすい状況は、全身状態が悪く極めて動脈血圧が低い患者さんの末梢静脈路確保や、シャント形成がある患者さんです。

シャント形成は、過去に心臓カテーテル治療・脳血管治療などの血管治療を受けた時に、シースと呼ばれる太い管を屈曲部位である肘動脈に挿入・留置した際に、動静脈シャント形成されてしまう事例があります。この場合、知らずにシャント部位より末梢を静脈穿刺した時、動脈血が流入してくることになります。まれなケースです。

輸液ボトルを穿刺部位より上にあげても、血液の逆流が止まらない場合は直ちに医師を呼んで対応してもらいましょう。焦って針を抜いてしまうと、止血困難になる危険がありますので注意しましょう。

原因その2 点滴本体と穿刺部の落差が少なすぎる

最も多い点滴の逆流の原因です。

ベッドや点滴用の椅子で安静にしている時は、順調に点滴滴下されていても、患者さんが立ったり動いたりして、点滴の滴下液面と穿刺部位の落差が小さくなり、輸液ルート内に血液が逆流してきます。また、排便などの努責(いきみ)によって圧が上昇し、逆流が起こることもあります。動ける患者さんに起こりやすい原因と言えるでしょう。

高齢の患者さんは、点滴中にトイレに行きたくなった時、どうしていいか分からず点滴台を押さずに点滴ボトルを抱えて移動してしまうことがあります。看護師にとっては「点滴台を押して歩くのが当然」であっても、丁寧に説明しておかなければ予想外の行動をされることがあります。

「点滴中にお手洗いに行きたくなったら、このボタン(ナースコール)を押して看護師を呼んで下さい。点滴前に一度お手洗いに言っておきましょう。」など、細かく説明しておくことが大切です。

血液の逆流により、ルート内・針の閉塞が無ければ、点滴本体を高く上げて輸液を再開すれば解決します。

原因その3 輸液ルート、延長チューブの接続外れと緩み

点滴の逆流が、輸液ルートや点滴ボトル内にとどまらず、体外に出血してしまう怖い原因です。

末梢静脈路や中心静脈路に先端が留置された状態で輸液ルート、延長チューブのゆるみが生じると、血液が逆流しジワジワと体外に流れ出ていきます。輸液接続外れによる失血死の事例は年間複数報告されています。

患者さんの体動、不穏や理解力不足によって自分で接続部位を外してしまうケースもありますが、重症管理中や術後状態でベッド上臥床の患者さんにも発生しています。布団などの掛物で出血が隠れて発見が遅れることがあるようです。

側管から薬液を投与した後で、三方活栓の操作を誤ったうえ蓋が緩んでいても逆流は発生します。側管からシリンジポンプで薬液を投与していたが、シリンジポンプにセットしたシリンジとチューブが外れていたというケースもあります。ダブルルーメンの中心静脈路の、使用していないルートの蓋が緩んで血液が逆流することもあります。

発見した場合は、輸液ルート・延長チューブのゆるみを直し、患者さんのバイタルサインを測定しましょう。すぐに医師に報告し出血量に応じた対応を行います。

末梢静脈路、中心静脈路ともに輸液本体から穿刺部位までの全ての経路においてゆるみや外れがないかを定期的にチェックする必要があります。

原因その4 輸液流量が少なすぎる

静脈圧よりも点滴輸液流量が好きな過ぎる場合、血液が逆流して閉塞を起こします。点滴がゆっくり過ぎると、点滴ルートが詰まるということです。

例えば、シリンジポンプを使用しある輸液製剤を2.0ml/Hという速度で投与している場合、患者さんによってはチューブが閉塞してしまいます。

点滴速度は、医師の指示に従いますが、あまりにも輸液流量が少ない場合は閉塞の危険があると認識しておきましょう。

点滴が逆流して詰まってしまった時、やってはいけないこと

点滴が逆流して、点滴が落ちなくなってしまった。留置針が詰まってしまった。こんな時、患者さんは不安そうにされますし、看護師もちょっと焦ってしまいますね。

特に、点滴が入りにくく、針を刺すのに苦労した患者さんの場合は、針を差し替えるのは嫌だなあと思います。中心静脈路の逆流による閉塞はもっと困ったことになります。中心静脈カテーテルは医師が留置しますし、簡単に入れ替えられるものではありません。

中心静脈路を詰まらせた、なんて言いにくい。医師や先輩に報告するのが嫌だなあ。と思います、共感します。

点滴が逆流して詰まってしまった時、さほど時間が経っていなければ、小さい注射器(2.5cc程度)で輸液製剤や生理食塩水でフラッシュ(患者さんの体側に液を流す)すれば、詰まりが取れて、点滴できるようになることがあります。フラッシュで、解決すればホッとしますね。

ちょっと待ってください!

末梢静脈路や中心静脈路の詰まりは、血液のカタマリ「血栓」です。そのカタマリを患者さんの血管内に戻すのは、危険な行為でもあるのです。特に、中心静脈路の血栓は大きく、先端が心臓に近い部分にありますので、危険です。自然な力でスッとフラッシュ出来ない場合、無理に押し込むことは絶対に止めましょう

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知っておきたいサイフォニング現象とは

点滴の逆流問題で、絶対知っておいて欲しいことがあります。

それが「サイフォニング現象」です。シリンジポンプを使用して薬液を投与する看護師は絶対に知っておくべきです。

シリンジポンプにセッティングしたシリンジ(注射器)が何らかの原因で正しくセットされず、押し子部分が外れた際に、患者さんの身体との高低差によって、薬剤が急速投与されてしまう現象です。シリンジポンプで投与する薬剤は、カテコラミン(昇圧・強心)、抗不整脈剤、鎮静剤など、わずかな投与量を厳密に管理する必要があるものがほとんどです。

カテコラミン製剤が、急速に投与されれば循環器系に重篤な副作用を起こす危険性があります。シリンジポンプが患者より高い位置に設置されているほど、サイフォニングの影響が強く現れます。

シリンジポンプを使用している時は、以下のポイントをチェックしましょう。

  • シリンジポンプが患者より高い位置に設置されすぎていないか
  • 注射器が正しい位置にセットされているか
  • シリンジポンプの押し子がフックに正しく固定されているか、ズレていないか

点滴の逆流によって患者さんを不安にさせることも

看護師の本音はどうでしょうか

点滴を逆流させる患者さんに「申し訳ないことをした」という思いよりも、「動かないでって言ったのに、勝手に動くから点滴が詰まったじゃない」「忙しい時に、点滴の入れ替えなんて面倒くさい」と思ってしまうことは否めません。

点滴の留置針を入れかえた直後の患者さんが、トイレに歩いて点滴ボトルが下にさがり、逆血しているのを見た時など「さっきトイレに行っておいてっていったのに、なんで今よ」とイラっとするときもあります。

患者さんの声はどうでしょうか

点滴を受けていたら、自分の血がチューブに上がってきている。点滴が止まってしまっている。これらは患者さんにとってかなり怖い事です。しかも、点滴が詰まってまた針の差し替え、となると痛みも伴います。さらに看護師がちょっと怒っているとさらに不安になってしまいます。

点滴を逆流させないため、先回りした丁寧な説明と対応が大切なようです。

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まとめ

点滴の逆流を起こさないコツと点滴の逆流が起こった時のスマートな対応について解説してきました。

点滴の逆流を防止することは、患者さんの不安や身体的な負担を軽くすることと同時に、看護師の業務負担を軽くすることでもあります。点滴の逆流を防止するためには、原因をしっかり把握して危険を予見することが重要ですね。

看護師の皆さん、忙しい毎日ではありますが工夫しながら頑張っていきましょう。

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