「イノバン」とは!?看護師が知りたい「イノバン」のあれやこれや
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イノバン(ドーパミン)、ノルアドレナリン、ボスミン、ドブトレックス(ドブタミン)、γ(ガンマ)計算、こんな言葉が飛び交う現場で働く看護師の皆さん、お疲れ様です。

イノバン 分かりにくい” 等でインターネット検索されたということは、なんとなく分かりにくいこれらの薬剤や用語について漠然とした不安を持っておられるということだと思います。

カテコラミンを投与する患者さんの看護は、大変緊張する場面が多いと思います。この記事では、イノバについてできる限り分かりやすく、実践に役立つ情報をお届けします。是非最後まで読んで下さい。

イノバンを知りたければカテコラミンをまず知って欲しい

イノバンを理解できるように先に知って欲しいことを解説します。カテコラミンについて、です。イノバンを知るためにはカテコラミンを知る必要があります。ここは絶対に読み飛ばさないでください。

カテコラミン

カテコラミンとは、カテコール骨格を有するアミン系のホルモンです。
ドーパミン・アドレナリン・ノルアドレナリンの3種類で交感神経及び副腎髄質から分泌されます。

つまり人体内で作り出される物質です。ポイントはこの中にドブタミンは含まれていないことです。ドブタミンは人工的に合成されたカテコラミン様物質です。

イノバンの一般名はドーパミンです。イノバンはカテコラミンの一つです。

人体にカテコラミンが必要なわけ

バランス

複雑な生命の進化の中で生み出された、ホルモンバランスという素晴らしい仕組み。ホルモンとしてのカテコラミンはなぜ必要なのでしょうか。

カテコラミンは、精神的興奮、外傷、低血糖、大量出血、酸素欠乏等のストレスによって分泌されます。

生物が猛獣に襲われて大量出血を起こした時、カテコラミンであるノルアドレナリンの血管収縮作用で出血を止める、出血状態をドーパミンの心臓賦活作用である脈拍数増加によって循環血液量を増やし酸欠状態を補う、生命を守るメカニズムが働きます。

カテコラミン分泌は、生物が生命の危機を回避するため生み出されたシステムなのです。

治療にカテコラミン製剤が使用されるわけ

心拍出量の減少、ショック状態などで循環血液量が維持できず血圧が下がってしまう。これは、生命体にとってのピンチ、ストレスです。ストレスが発生を完治すると大脳皮質から視床下部、交感神経と伝わり副腎髄質からカテコラミンが分泌されます。

人体内で合成されるカテコラミンの量では救命できないため、薬剤としてイノバン等の薬剤を投与して補っていると考えて下さい。

心停止、重篤なショック状態にはアドレナリン(ボスミン)を急速投与し心肺蘇生法を併用し心拍動を回復させます。重症心不全、劇症心筋炎などで心拍出量が低下している場合は、ドーパミン(イノバン)を持続投与し心収縮力増大させます。

ここで知って欲しいことは、カテコラミン製剤は目的によって使用する製剤、投与量が変化する、ということです。
末梢血管収縮作用・心収縮力増大作用・末梢血管拡張作用です。

 

交感神経のα・β1・β2作用だけ覚えて欲しい

自律神経は交感神経、副交感神経があります。
自律神経系の話は、難しそうで嫌だ、学生時代に覚えるのに苦労したけどもう忘れた。という方が多いでしょう。でも頑張ってください!イノバンを知るには避けて通れない話なのです。

カテコラミンは興奮神経である交感神経に作用します。カテコラミンが作用するのは交感神経のα(アルファ)・β1(ベータワン)・β2(ベータツー)です。

  • α作用は末梢血管収縮作用
  • β1作用は心収縮力増大作用
  • β2作用は末梢血管拡張作用

ここではこれだけを覚えてください。

イノバンの特徴を解説

イノバン

出典:http://med.nipro.co.jp/ph_product_detail?id=a0A1000000tKmojEAC

イノバンは商品名です。一般名はドーパミン、略語はDOAです。

ドーパミン製剤は、イノバン、カタボン、カタボンHi、プレドパ、カコージン、イノバンシリンジなどたくさんの商品があります。ドーパミン=イノバンではありませんので注意しましょう。

イノバンはα(末梢血管収縮)作用が強く、β1(心収縮力増大)作用も持っています。

イノバンを使うときに、「この患者さんはたいしてしんどくなさそうだけど1.0ml/時間と少ない量で続けているのはなんでだろう」「重症の患者さんには10.0ml/時間とか大量に使うのになんでだろう」と感じたことはありませんか?

イノバンは少量投与では腎血流増加、利尿効果を狙っています。多量投与では末梢血管収縮作用、血圧上昇作用を狙っているのです。

イノバンは、用量(輸液流量)によって狙っている作用が異なる薬剤なのです。分からないことは医師に確認し、イノバンを投与する目的をしっかり把握しておきましょう。

イノバンは用量によって作用が変わる

イノバンの最大の特徴は、用量(輸液流量)によって狙っている作用が異なることです。

  • 少量投与(低用量)では、腎血管に作用し腎血管を拡張し腎血流量を増やします。軽度心不全患者の利尿目的で投与されることがあります。
  • 中程度量投与では、心筋収縮力の上昇、心拍出量を増やします。イノバンが心臓β1受容体に作用して脈拍増加、血圧上昇をもたらします。
  • 多量投与(高用量)では、強い血圧上昇作用を発揮します。イノバンがα1受容体に強く働くことで起こります。

例えば、左心不全で尿量を増やしたい患者さんに、利尿目的でイノバンを持続投与したとしましょう。心不全状態ですから、心臓の仕事量を増やして(脈拍数増加、収縮量増加)心臓を疲れさせたくありません。脈拍は早くならないように調節したいですね。患者さんにとってイノバンの量が多すぎれば、目的にしていた利尿作用より、脈拍増加作用が大きく出てしまい、逆に心臓を疲れさせて心不全を悪化させてしまうことになります。

患者さんの自覚症状、尿量、バイタルサインなどを厳密に観察して記録、医師へ報告しましょう。イノバンの投与量を適切に調節する助けになります。

 

イノバンの副作用を知って観察に役立てよう

イノバンの主な副作用は心拍数の上昇、不整脈の出現です。

イノバンは、多量投与になれば発揮される強い血管収縮作用により、副作用が出てくる可能性があります。消化管への血流が悪くなることによって、悪心、嘔吐、消化管運動障害(麻痺性イレウス)が起こります。稀ではありますが、上下肢や末梢の血流が悪くなり虚血性肢壊死を起こす可能性もあります。

臨床現場で「末梢が締まっている」という言葉を聞いたことはありませんか?これは、カテコラミンの作用で血管収縮が起こっていることを表します。

イノバン投与中の患者さんは、循環器系の観察だけではなく、消化器症状や腸管蠕動音の聴取、末梢循環不全兆候の観察をしっかりできるようにしましょう。

イノバンの副作用はなぜ起こるのか

カテコラミンの副作用を考える時、先に解説した「生命体のピンチ」を思い出して下さい。

動物が崖から滑り落ちたり、敵と争った末に重傷を負ったとしましょう。これは生命体のピンチであり強烈なストレスです。直ちに出血を止め、必要酸素量を確保しなければ死んでしまいます。

まず交感神経優位となり副交感神経が制御されます。消化管の動きを抑制し、無駄なカロリー消費をカットします。腸の動きは止まります。全身の血管を収縮させ、末梢血管を締めることで大切な臓器に血液を確保します。脳への血流が途絶えると死んでしまいます。

カテコラミンの作用、副作用を考える時に「カテコラミンは何のためにあるのか」を思い出してみて下さい。

イノバンの投与量、γ(ガンマ)計算を知ろう

ドーパミン製剤の形状は、3つに分かれます。

  • 輸液パックになったもの
  • プレフィルドシリンジ(使い捨てシリンジ)
  • アンプル製剤

電卓

普段使用している薬剤の形状を思いだして下さい。どの形状のもの輸液ポンプ、シリンジポンプを使用して投与します。イノバンの投与量はγ(ガンマ)計算で割り出します。

体重50㎏の患者さんと体重100㎏の患者さん、イノバン10.0ml/時間で投与したとしても同じ作用は得られません。100㎏の患者さんには50㎏の患者さんの半分の投与量です。カテコラミンは、患者さんの体重から投与量を割り出します。

医師の指示が「イノバン10γで投与開始」という指示だと、イノバンを10.0ml/時間で投与することとは全く異なりますので気を付けましょう。γは薬剤の投与スピードの単位です。γ計算の方法だけで1つ記事ができてしまうくらい複雑なので、計算方法については省きます。

重要なことは、指示を受ける時必ず「〇γ、〇ml/時間」を確認して実行することです。アンプル製剤は希釈が必須です、希釈率「イノバン〇A+生食30ml、総量〇ml」を確認しましょう。

イノバン投与中のインシデントを防ぐには

イノバン投与中、最も気を付けなければならないことは「投与量間違い」です。

輸液ポンプ、シリンジポンプの投与量は看護師2人以上でダブルチェックしましょう。0.3ml/時間を誤って3.0ml/時間とセットして過剰投与してしまうといって事例はたくさん報告されています。希釈するタイプの薬剤は希釈率もダブルチェックが必須です。

末梢静脈路から投与する場合、点滴ルートの血管外漏出が起こらないように頻回に観察が必要です。カテコラミンには血管収縮作用がありますので、血管外漏出によって局所壊死が起こる危険性があります。

イノバン等のカテコラミン点滴ルートに三方活栓を付けて、側管から薬剤投与することも危険です。誤って抗生物質などの薬剤を側管から投与すると、ルート内に満ちているイノバンを体内に急速投与することになり、頻脈・不整脈。急激な血圧上昇が起こり、血行動態に悪影響を及ぼす危険性があります。

まとめ

いかがでしたか?

分かりにくいイノバンについて少しでもイメージして頂けましたか?

血圧を上げたいのか、脈拍を上げたいのか、心臓の収縮力をアップさせたいのか、尿量を増やしたいのか、患者さんにイノバンを使う目的をしっかり把握すれば、理解しやすいと思います。

イノバンなどのカテコラミンを扱う看護業務は、大変緊張とストレスが強いと思います。忙しい看護師の皆さんを応援しています。