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看護師と採血業務は切っても切れない関係です。採血の失敗は、患者さんに痛い思いや不安な気持ちにさせてしまうことがあります。

看護師の能力は注射技術で決まるものではありません。しかし、患者さんから「採血、注射の上手な看護師さん」は信頼されやすい傾向があります。逆に、採血、注射が下手とレッテルを貼られてしまうと信頼関係を築きにくいといえます。

この記事では、採血が上手になるコツを丁寧に解説していきます。ぜひ最後まで読んでみて下さい。

まずは正中皮静脈を狙おう

採血部位の選択は、まず肘の正中皮静脈を選びます。正中皮静脈から採血する利点は以下の通りです。

  • 穿刺による神経損傷を起こしにくい
  • 止血しやすい、肘を曲げることで止血が出来る
  • 血管の走行が分かりやすい
  • 血管の太さがある

採血が苦手気味な看護師さんは、まず正中皮静脈からトライしてください。上肢の肘付近には尺側皮静脈・正中皮静脈・橈側皮静脈が走っています。動脈と神経に触れにくいのは正中皮静脈です。

駆血帯は強く締めすぎないこと

血液中

駆血帯を使用する目的は、駆血することによって静脈を怒張させて穿刺しやすくすることです。

駆血帯を強く巻き過ぎると、末梢方向に向かう動脈血が減って、静脈の怒張が少なくなってしまい、逆に採血しにくくなります。駆血帯を締める強さは、動脈血の流れを止めず静脈を怒張させる強さでなければいけません。

駆血帯は強く締めれば締めるほど良い、ということはありません。

駆血帯を締める時間は2分以内が適当です。長時間締めることで、静脈うっ血で血液が濃縮し、検査結果に変動が起こる可能性があります。カリウムなどの電解質値に狂いが生じることが多いため気を付けましょう。

血管が出ない!パンパン叩き過ぎは厳禁

血管が出ない時、まず試してみることといえば、パンパンと穿刺したいところを叩いてみることでしょう。このとき「血管よ!出てきて!」と願いもこもっていますね。

叩き過ぎは禁物です。叩きすぎると逆に血管が収縮し、穿刺しにくくなってしまいます。バシバシと叩かれて嫌な気分になる患者さんも少なくありません。

皮膚が赤くなるほどパンパン叩かれた上、採血に失敗されたら患者さんの憤りは増すばかりです。採血穿刺部位への刺激は、さするか、軽く数回叩く程度にとどめておきましょう。

 

採血穿刺部位を温めてみよう

湯たんぽ

採血する場所を探してみても、全然血管が見つけられない!そんな時は穿刺したい部位を中心に温めてみましょう。

じわっと暖かくなるくらいの温度で、10分弱位温めるのが良いでしょう。お湯で絞ったタオルをビニールでくるんで、さらに乾いたタオルでくるんでホットパックを作るのが良いでしょう。

ホットパックが熱すぎるのは絶対いけません。低温でも長時間皮膚に当てていると低温熱傷を起こします。患者さん自身にホットパックを当てておくように依頼すると、「温めた方が血管が良く出るらしい」と信じて、熱さを我慢してホットパックを当てすぎ、熱傷をおこす危険性があります。

ホットパックを当てている間は、看護師がしっかり観察しましょう。ホットパックをしたまま患者さんから離れるのは危険です。

翼状針+シリンジを使ってみよう

採血の器具は、真空管採血ホルダーが主流になっています。真空管採血ホルダーに専用針を付けるか、翼状針を付けて証するケースがほとんどです。

真空管採血ホルダーの利点は、採血時の血液暴露が少なくて済むこと、検体必要量が過不足なく採れることです。大変メリットがある手技と言えます。

真空管採血ホルダーで採血しにくい患者さんもいます

穿刺する血管がとても細い場合、真空管生活ホルダーを使用し採血容器内の陰圧で血液を回収しようとしても上手くいかないことがあります。その場合、小さめのシリンジ(注射器)に翼状針を付けて、ゆっくり採血すれば上手くいく場合があります。

真空管採血ホルダーが苦手な看護師さんは、翼状針+シリンジを使ってみるのも良いでしょう。

焦って針刺し事故を起こさないための心得とは

採血が苦手採血できそうな血管が見当たらない、時間がかかって患者さんも不安そうにしている、時には「まだ出来ないの?」「もっと上手な人連れてきなさいよ」といった苦言を受けることもあるでしょう。

採血がスムーズに行かない時、看護師は焦ってしまいます。

針を操作している時に焦ってしまう。針刺し事故の危険が一気に高まる状況です。

例えば、1回穿刺して、十分な血液量が採れなかったため、もう一度穿刺するため翼状針を取り換える作業です。針廃棄物BOXを持参していない状態で、穿刺した針をトレイに置いたままにすると針刺しが起こりやすくなります。

採血が上手くいかない上に、針刺し事故を起こしてしまうと看護師にとっては相当不幸です。採血が上手くいかない時も焦らないこと、必要物品(廃棄物BOX、ディスポ手袋、必要な数のトレイ、手指消毒剤など)が揃った状態で実施することが大切です。

 

血管がない人はいない、血管の走行を理解しよう

採血できそうな血管が見当たらず、難渋する患者さんの事を「血管が無い」と言いますね。

「あの患者さん全然血管ないんだよね」「血管無い人困るよね」という会話は日常茶飯事だと思います。看護師あるあるです。

しかし、人間が生きて活動している以上、血管が無い筈はありません。血管が見つけられないだけ、なのです。「血管が無い人」「採血しにくい人」という先入観を捨てて、人体の動脈・静脈の走行をしっかり思い出しながら、採血できそうな血管を探してみて下さい。意外な場所に採血できる血管が見つかることがありますよ。

看護師は血管走行・解剖学をしっかり理解しておく必要があります

朝の採血が苦手で困る事とは

採血が不得意な病棟看護師が困る事を考えてみましょう。

看護師2年目、採血が不得意な看護師伊藤さんの朝の様子です。伊藤さんの勤務する内分泌代謝内科病棟は、糖尿病の患者さんが多く採血が多い病棟です。夜勤は先輩看護師との2人夜勤です。

「今日の採血患者さんは10人か・・・この前失敗しちゃった患者さんもいるし緊張するなあ。今日の夜勤ペアの先輩はちょっと怖いから、採血に失敗しても、替わってくださいって言いにくいし嫌だな。採血に時間がかかりそうだからなるべく早い時間から回りたいけど、早く回りすぎると患者さんから苦情が出るし、焦るわ」

朝の採血業務がスムーズに進まないと、夜勤で一番忙しい、朝の流れが滞ってしまいます。病棟看護師にとって、朝の採血がスムーズに出来るようになることは大切な課題です。

2回穿刺しても採血できない時は選手交代しよう

「朝の採血が苦手で困る事とは」で取り上げた、看護師伊藤さんも言っているように、採血できそうにない時や採血に失敗してしまった時、一緒に働く看護師に「替わって」と言いにくいですね。

怖い先輩看護師、声をかけ辛い看護師に交替を頼みにくいのはもちろんですが、後輩看護師にも頼みにくいものです。しかし、採血の交替を頼みにくいからと言って、同じ患者さんに何度も針を刺すことは止めましょう。2回穿刺しても無理な時は交替するのがベストです。

本当に採血しにくい患者さんであっても、同じ看護師に4回穿刺されるのと、看護師が3人交替で穿刺してやっと採血できるのでは、心象が異なります。同じ看護師が何度も穿刺すると「この看護師が採血下手なのかも」と不信感を持たれ、信頼関係が成り立たなくなる恐れがあります。

採血で選手交代することは、2つの効果があります。患者さんになるべく痛い思いをさせないこ事、看護師が自分を守る事の2つです。

採血項目ごとの注意点を勉強しよう

採血は皮膚に針を刺して血液を回収するだけの単純な作業ではありません。

採血は、検査項目ごとに臨床的意義があります。検査項目ごとに採血上の注意

点があります。検査目的と注意点をしっかり把握しておきましょう。

例えば、カテコラミン三分画という検査項目について解説しましょう。

カテコラミンは褐色細胞腫、神経芽細胞腫、心不全など心疾患などの診断治療のため測定されます。採血時の注意点としては、採血前の安静が必要ということです。カテコラミンは体動、排せつ、精神的緊張などの活動により上昇します。そのため、朝に採血する場合は、起き上がる前に採血します。日中採血する場合は、採血30分くらい前より静かな部屋で安静臥床して待機する必要があります。

採血後は、よく混和させ速やかに低温で血漿分離(遠心分離機を使用)する必要があります。この作業は検査室が行いますが、検査室が不在の時間に採血を行い、長時間検体を放置すると検査値に狂いが生じる可能性があります。

ちょっと難しく感じるかもしれません。看護師は、採血上の注意点をかみ砕いて患者さんに説明しなければいけません。この検査の注意点を要約してみましょう。

  • 「朝、目が覚めたら起き上がらずにナースコールを押してください。採血に来ます。ただしあまり早い時間の場合はできません。その時は改めて説明します。」
  • 「8時半に採血に来ます。早朝トイレに行ってもらってもOKですが、7時半からは必ずベットに横になっていてください。採血が終わったら朝食をお持ちします」
  • 「朝の絶食は必要ありません。10時半から処置室で安静にして頂き、11時過ぎに採血をします。お手洗い済ませてお待ちください」

各施設にマニュアルがあると思いますので、しっかり頭に入れた上で患者さんに合った説明ができるようにしましょう。

カテコラミン三分画は一例です。他にも検査容器ごとの取り扱い方法の違いや、採血後の保管方法の違いなどたくさん覚えることがあります。少しずつ勉強していきましょう。

採血が得意になるにはそれなりの経験が必要

看護学生の時は、原則として「人体に針を刺す練習」はしません。看護師免許が無い状態で、患者さんに針を刺すことはできません。

せいぜい教官の監視下で同級生同士採血し合ったり、採血練習用の人体模型で練習するくらいです。

看護師国家試験に合格し、看護師として働き始めたとたん採血が上手にできる人はいません。採血が得意になるには、経験の積み重ねが必要です。神経損傷や動脈穿刺、採血の失敗、止血不十分による血種形成などの合併症を起こさないよう、焦らず1件1件慎重に採血と向き合っていきましょう。

止血まで完璧に出来てこそ採血上手と言える

蚊

採血業務は、穿刺する血管を決める、消毒する、針を刺す、血液を採取する、という行程をシュミレーションしますね。

針を抜いた後の止血はどうでしょうか。

22ゲージの穿刺針で採血した後、圧迫止血2~3分要すると言われています。これは正常な止血機能を持った患者さんが対象ですから、抗凝固剤服用中や血小板減少のある患者さんではもっと長くなります。

止血が不十分だと、患者さんから「採血してもらったけど、血液が流れて病衣やシーツが汚れてしまった」「内出血跡がひどく残ってしまった」「内出血で腫れてしまった」といった苦痛や心配をかけてしまうことになります。

採血後の止血まで完璧にこなしてこそ、採血上手な看護師と言えます。

さいごに

採血上手な看護師になるには、経験と知識が必要です。新人看護師さんは、採血が苦手だからと落ち込む必要はありませんよ!

採血が上手になるコツを少しずつマスターして、患者さんから信頼される看護師を目指しましょう。

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