点滴に空気が!看護師が点滴に空気が入って困ることと対策

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点滴に空気が入ったらどうなるのか、なにが危険なのか、患者さんが抱える不安とは?
この記事では、点滴と空気について解説していきます。

特に点滴に空気が入って起こる合併症について詳しく解説していますので、新人看護師さんはぜひ参考にして頂きたいです。最後までお付き合いください。

点滴に空気が入って困ることを考えてみよう

最初に考えていきたいことは、点滴に空気が入って困ることです。ベテラン看護師さんなら「ちょっとの空気なら何の問題もない、困ることはない」と思われるかもしれません。この場合は、点滴を受ける患者さん目線も含んで考えてみました。

  • 一定以上の空気が入ってしまうと、空気塞栓症が起こる危険がある
  • 輸液ポンプ使用中の場合、気泡アラームが頻発する
  • 点滴ルート内の空気を抜く看護業務が発生する
  • 点滴ルート内に空気が入っているのを見て、怖いと感じさせてしまう

重篤な合併症を起こす危険があること、看護業務の煩雑化、患者さんに不安・緊張・恐怖を感じさせてしまうこと、この3つに集約されると思います。

ひとつずつ掘り下げていきましょう。

点滴ルート内の空気が引き起こす空気塞栓症とは

点滴

静脈内注射、点滴で、静脈内に微量の空気が入ってしまった場合、その空気はどうなるのでしょうか。微量の場合は、静脈内を流れるうちに徐々に吸収され、人体に影響ないと言われています。

「塞栓」とは「詰まる、塞ぐ」という意味です。心筋梗塞は心臓の筋肉を栄養する動脈が、血栓という血の塊や空気でふさがれて起こります。脳梗塞は脳の動脈が血栓という血の塊や空気でふさがれて起こります。ふさがれた血管の先に新鮮な血液が循環しなくなり、細胞が壊死してしまいます。

「塞栓」の原因が空気である場合を「空気塞栓症」、血栓という血の塊が原因である場合を「血栓塞栓症」、脂肪細胞が原因の場合を「脂肪塞栓症」と言います。

通常、上下肢静脈からの点滴で大量の空気が入ってしまった場合、空気塞栓症で肺塞栓症を起こす可能性が高くなります。各静脈から入った血液は心臓に帰り、心臓から肺動脈へと流れていきます。肺胞で酸素・二酸化炭素ガス交換を終え、肺静脈から再度心臓に帰り、左心室から大動脈弁を経て全身に送り出されるからです。この辺りは、人体の解剖をしっかり振り返ってみて下さい。

肺に入った空気が少量の場合は、自然吸収されて人体に影響ありませんが、処理能力を超える空気が入ってしまった場合は肺梗塞を起こしてしまいます。

動脈内への空気注入は大変危険

動脈内への空気混入は大変危険です。この場合はほんの少量でも問題になります。動脈内に空気が入ってしまうという状況を想像できない看護師さんもいると思います。

  • 橈骨動脈、上腕動脈、鼠経動脈からシースや動脈ラインが留置されている場合
  • 特殊な治療で動脈内薬剤投与が行われる場合
  • 静脈注射、点滴しようとして誤って動脈を刺してしまった場合

このような場合、動脈内に空気が入ってしまうリスクがあります。

動脈内に空気が入ると、肺静脈を通らずに、直接全身に送られてしまいます。このため、空気が吸収される間なく、空気が各臓器に達してしまう危険があるのです。特に脳梗塞を起こしやすいので大変危険です。

中心静脈ライン内の空気や小児乳幼児は要注意

小児乳幼児

上下肢の末梢静脈点滴ルートから空気が入るのと、中心静脈ラインから空気が入るのではリスクは異なるのでしょうか。

中心静脈ラインからの方が重篤な合併症を起こすというエビデンス(科学的根拠)はありません。しかし、中心静脈ラインの先端は、末梢静脈点滴ラインより心臓(左心室)に近いことを考えると、同じ空気の量でもリスクは高いと思われます。

小児、乳幼児は成人と体の大きさが異なります、点滴ルートはほんの微量の空気混入も重篤な合併症を起こす可能性があるため、より慎重さが求められると言えるでしょう。

心室中隔欠損症、心房中隔欠損症の患者さんは要注意

心臓の左心室と右心室の間にある壁を「心室中隔」、左心房と右心房の間にある壁を「心室中隔欠損」と言います。

生まれつき、この壁に穴が開いている患者さんがいます。人間はお母さんのおなかの中では、壁に穴が開いており、胎生の過程で穴が塞がれていくのですが、完全に塞がらずに生まれてくることがあります。穴が開いている状態を心室中隔欠損症、心房中隔欠損症といいます。

穴が大きいと、静脈血と動脈血が入り混じる状態となり、息切れ、チアノーゼなどの症状がでて分かりますが、穴が小さい場合知らずに過ごしている患者さんもおられます。穴が開いているかどうかは、心臓超音波エコーで分かります。

点滴ルート内から静脈に入った空気が、右心房に帰り通常は肺に行くところ、この穴をすり抜けてしまうと、脳などの全身に送られてしまいます。つまり、動脈に空気が入ったことになり、重篤な合併症を起こす危険があります。

点滴ルート内の空気はどのくらいまでなら大丈夫か

点滴

ゆっくりと空気が入る場合、1~2ml/kgが危険な量と考えられています。「ゆっくり」がどの程度の速度なのかがはっきりしないため、体重が50kgの患者さんで50~100mlの空気まで大丈夫、と言い切れませんが、文献上はそのように言われています。

急速に空気が入る場合、10mlで合併症が起こると言われてます。

点滴輸液ルート内に空気がどのくらい入るのかを計算してみましょう。輸液ルートの太さは通常の内径が2.28mmです。内径2.28mmのチューブ断面積は、チューブの半径×半径×円周率となりますね。

すなわちチューブ半径0.114cm×0.114cm×3.14(円周率)=体積0.04ml

点滴輸液ルート1cm分の空気は0.04mlということになりますね。

看護師さんの心の声「え、そんなにちょっとなの!?」ではないでしょうか。点滴ルートに5㎝空気が入っていると、かなり目立ちますし慌てます。点滴ルート5㎝分の空気は約0.2mlです。人体には影響無さそうですね。

点滴ルート内に空気が入りやすいのはどんな時か

点滴

点滴ルート内に空気が入りやすい操作を意識しておけば、空気の混入を防げそうです。

  • 輸液の本体交換
  • ドリップチャンバーに輸液を満たす操作
  • 輸液本体に薬剤を混入する時、特に溶けにくい抗生剤を溶かす時
  • 泡立ちやすい薬剤を混入する時

泡立ちやすい薬剤代表としては、一般名グリチルリチン製剤(商品名:協力ネオミノファーゲンC、アミファーゲン等)、一般名ガベキサートメシル酸塩注射用(商品名:エフオーワイ、ガベキサート等)などが挙げられます。どの薬剤も、箱や添付文書に「点滴作るとき泡立ちやすいから気を付けてね!」と看護師さんに優しいアドバスをしてくれません。ある程度経験が必要になってきます。

点滴作成する時に、慌てて輸液ルートに薬液を満たすと空気がたくさん入ってしまい、空気を抜くために余計時間がかかってイライラする、というのは経験があると思います。
点滴を操作する時は、慌てず作業することが空気混入を防ぐ近道と言えるでしょう。

輸液ポンプの気泡アラームに上手に対応するためには

点滴ルート内に空気が入って困ること、看護師にとっての代表格は輸液ポンプの気泡アラームです。

全ての輸液ポンプは、静脈内への気泡混入を完治する安全センサーが付いています。ルート閉塞、気泡混入、滴下異常等を監視しつつ、厳密に輸液量管理をしてくれる輸液ポンプは優れものです。機種によって異なりますが、気泡アラームはかなり敏感です。ルート内の微細な気泡に反応してアラームで知らせてくれます。

ルート内の空気を抜いて、輸液ポンプを再稼働させ、病室からナースステーションに戻ると「また鳴ってる!」と何往復もする羽目になったり、患者さんから「機械が鳴り過ぎてウルサい、何とかしろ」と苦情を受けるとかいった出来事は看護師の日常ですね。#あるある

私は、重症管理中の患者さんを何人も看ていた日は、夢で輸液ポンプ、シリンジポンプ、モニターアラームの音が出てきてうなされそうな時があります。輸液ポンプの気泡アラームをなるべく鳴らさないようにするには、きっちりとルート内の空気を抜く、最初の手順が重要です。

点滴ルート内の空気を見て患者さんが感じることは

注射で空気が入ると死ぬ。血管に空気が入るとヤバい。

空気塞栓症のメカニズムを知らない一般の方でも、このようなイメージを持っていることが多いです。点滴中に、ジーっと点滴ルートを見つめている患者さんに遭遇したことはありませんか?私は何度もあります。

点滴ルート内にちょっとした気泡が入っていたとしましょう。点滴を刺して看護師がナースステーションに帰ってしまいました。「空気が入っている、これは看護師を呼ぶべきだろうか、でもなんでもなかったら怒られるかも。だんだん空気の粒が体に近づいてきたよ。怖い、ドキドキしてきた。あー体に入る!」とギリギリまで我慢してナースコールを押してくる患者さん、出会ったことはありませんか?

患者さんは、点滴に空気が入ると怖い、大丈夫だろうかという不安を抱えているのです。

患者さんを不安にさせない、怒らせない説明とは

点滴中の患者さんのナースコールが鳴りました。看護師は点滴が漏れているのか(血管外漏出)と思い、急いで患者さんの元に向かいます。

患者さん 「点滴に空気入ってますけど大丈夫でしょうか・・・」
看護師 「全然、大丈夫ですヨ」

患者さん心の声 (え、それだけ?大丈夫って何が?)
看護師心の声 (忙しいのにちょっとしたことで呼ばないでよ)

患者さんはこれで安心して点滴を受けられるでしょうか?疑問は解決されないままモヤモヤしてしまうかもしれません。例えば「心配おかけしてすいません。静脈にはこれくらいの空気が入っても自然に吸収されますから絶対に大丈夫です。安心してください」ときちん対応すれば「良かった、ありがとう」とほっとしてもらえることでしょう。

入っている空気の量が微量であっても、患者さんが不安を感じている時はきちんと説明するべきです。看護師の誠意説明で、頻回なナースコールや苦情をブロックすることが出来ると思います。

まとめ

いかがでしたか?

静脈点滴ルートに多少空気が混入しても、重篤な合併症は起こらないこと分かっていれば、患者さんから指摘されても落ち着いて対応できると思います。逆に、空気混入に注意が必要なケースも把握しておけばより安心です。

忙しい毎日ですが、患者さんに安心して点滴を受けてもらえるよう頑張りましょう。

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