結核は過去の病気ではない!
カテゴリー:看護師ニュース
北朝鮮乗組員が結核「対応指針ない」地元困惑

北海道松前町の無人島・松前小島に漂着した北朝鮮木造船の乗組員1人の結核感染が確認された問題で、船が漂着した松前町や道では「今後同様のケースが起きた場合の対応について、国の指針がない」として困惑が広がっている。

引用:https://mainichi.jp/articles/20180126/k00/00m/040/100000c

看護師の皆さん、こんなニュースがあったことをご存知でしょうか?

朝鮮半島情勢が慌ただしくなる中、日本海にも多くの北朝鮮国籍の木造船(難破船)が漂着するようになりました。そのうちの一人から結核感染が確認され、看護師としては他人事ではすまされません。

結核は断じて過去の病気ではないのです。

この記事では、看護師が知っておくべき結核の基礎知識を紹介していきます。結核の現状、検査方法など興味を持って欲しいと思っています。

最後までお付き合いください。

日本は欧米先進国の約2倍、結核感染の実態

結核は過去の病気ではない!看護師が知っておきたい基礎知識

世界の3大感染症を知っていますか?エイズ、マラリア、そして結核と言われています。

繰り返しますが、結核は過去の病気ではありません。

  • 「結核は昔の病気」
  • 「ほとんど撲滅されている」
  • 「日本ではかかることが無い」

と思い込んでいる人が多く、結核疑いがあると診断されると戸惑う患者さんが多いのが実情です。

厚生労働省のデータでは、1日約70名の新規結核患者が発生、1日数名が結核で命を落としていると言われているのです。病院や施設での集団感染も報告されています。医療従事者への感染も報告されています。

日本では1955年以後、結核での死亡者数は激減しています。しかし、日本政府は1999年に「結核緊急事態宣言」を発令しています。日本の結核罹患率は欧米先進国の約2倍となっています。日本の結核感染の特徴は「高齢者の発病が多いこと」と言われています。若いころに結核感染し、発病せず経過していたり、自然治癒したものが、高齢となり抵抗力が弱まって発症する、というパターンです。

結核はで適切に治療を受ければ、ほとんど確実に治る病気になっています。早期発見が大変重要になっています。

結核は過去の感染か、現在の感染かを見極める

抗結核薬

結核感染の有無を調べる検査はいくつかあります。

検査の意義として重要なことは「過去に結核感染したことがあるが、現在発症していないのか」「過去に感染したことがあるかに関わらず現在結核感染しているのか」、この2つのどちらかを見極めることです。

一番良いのは「過去の感染も、現在の感染も両方ない」という状態です。

ここからは看護師が知っておきたい結核検査について解説していきましょう。

長引く咳など症状がある場合、速やかに胸部レントゲンを

X-ray

胸部レントゲン写真、胸部CT検査を実施しましょう。

肺結核では独特の陰影として現れてきますので、結核疑いの所見は容易に診断できます。ただし、胸部レントゲン写真、胸部CT検査は、結核菌を検出できませんから、確定診断にはなりません。また、過去の感染か、現在進行形の感染かを判定することは困難です。

長引く咳、労作時(活動した時)の息切れ感などの症状と、胸部レントゲン写真・胸部CT検査の所見を合わせて、次の確定診断検査に進んでいきます。

実際に経験した事例を紹介します。

急性呼吸不全で3次救急に搬送されてきた初診の患者さん。酸素飽和度、血中酸素濃度の著しい低下のため、救命のため直ぐに気管内挿管し人工呼吸器装着となりました。気管内挿管後に撮影した胸部レントゲン写真(ポータブル撮影)で、結核様陰影があり、直ぐに採取した喀痰で結核菌が検出されました。結核菌の排菌状態とは知らずに、救急外来で気管内挿管した医師、介助した看護師、救急隊は結核感染の経過観察となりました。

症状がある患者さんには、まず胸部レントゲン写真!結核診断において胸部レントゲン写真の重要性を知っておきましょう。

結核診断には信頼できる喀痰検査を

結核感染の確定診断で、もっとも信頼できる検査は、痰の検査です。喀痰検査(かくたんけんさ)といいます。

喀痰検査は3種類あります。

1つ目はガフキー検査

採取した痰をスライドグラスに塗って、結核菌が染色される薬剤で染色し、検査技師さんが顕微鏡を目視で観察する検査です。一視野に見える結核菌の数で1~11号の段階分けします。11号に近づくほど結核菌が多く検出されたことを表しています。

2つ目は核酸増幅法検査

現場では「PCR法」と呼ばれていますので耳にしたことがあると思います。痰の中に含まれる結核の遺伝子を増幅させて、結核菌が存在しているかどうかを調べる検査です。次に述べる喀痰培養検査に比べ、非常に短時間で結果が出ることが大きなメリットです。

看護師が痰を採取する時に知っておいて欲しいことは、他の検査に比べて検体量を多く必要とすることです。また、普通の病院では院内で実施できず、外注検査となることがほとんどです。

3つ目は喀痰培養検査

痰に含まれる菌を培養培地で育て、肉眼で菌を確認する方法です。この検査がもっとも確実に結核診断ができます。本当結核治療が必要な患者さんか、排菌状態にあるかを診断できる方法です。採取する痰は、少ない量でも可能です。ただし、金そのものを培養するのに2週間ぐらいかかります。

痰を採取する時に、核酸増幅法検査と喀痰培養検査を同時に実施すると、核酸増幅法検査で結核の疑い濃厚、最終的に結核と診断、という流れになります。

結核診断のために胃液を採取することも

結核感染の患者さんの全員に症状があるとは限りません。中には無症状、痰も出ない、健康診断の胸部レントゲン写真で結核疑いになる患者さんもいます。

結核の確定診断は、喀痰培養検査で結核菌が検出されること、というのは前項で解説しました。痰が出ない、出せない患者さんはどうすればいいのでしょうか。

痰の代わりに胃液を採取し、採取した胃液を遠心分離機にかけて、濃縮した状態で培養検査を行います。胃管カテーテルを挿入する手技は医師が実施することがほとんどです。

看護師は、鼻腔、口腔から胃管カテーテルを挿入する介助、胃液検体採取の介助を行います。

鼻腔、口腔から胃管カテーテルを入れられることは大変な苦痛です。看護師は、短時間でスムーズに検査が行えるように準備を行います。また、胃液採取前の絶食を説明し、協力を得る必要があります。

ツベルクリン反応検査とは

結核感染の診断で、一番有名なのがツベルクリン反応検査(通称「ツ反」)です。

ツベルクリン反応検査は、結核菌培養液から精製した抗原液を皮内注射し、注射部位の発赤や硬結の大きさを測定し、結核菌に対する免疫状態を観察し、結核感染の有無を診断する方法です。注射後48時間で判定します。

ツベルクリン反応検査で、発赤、硬結が現れるのは、結核菌やBCGワクチン接種によってできた細胞性免疫Tリンパ球と注射した薬液の特異的結合によって、免疫反応が起こるためです。

ツベルクリン反応検査陽性になる要因は以下の通りです。

  • 結核菌に感染したことがあり、結核菌に対する免疫が確立している
  • BCGワクチン接種で結核菌に対する免疫が確立している
  • ヒト型結核菌とよく似た非結核性抗酸菌に感染したことがある

つまり、ツベルクリン反応陽性=結核感染とは言えないということです。

ツベルクリン反応検査は、結核感染していない成人が陽性の反応を示します。では、ツベルクリン反応検査は、結核診断の確定診断に繋がりませんから、必要なの?と疑問がわいてきます。

次はツベルクリン反応検査の意義を解説していきます。

医療現場におけるツベルクリン反応検査の意義とは

点滴

医師、看護師、コメディカルスタッフ、看護助手、病院ボランティア、介護士など、患者さんと接する機会が多く、結核感染の危険性が高い現場では、ツベルクリン反応検査を2週間あけて2回行うことがあります。これは、ツベルクリン反応検査二段階法と言います。

ツベルクリン反応検査で、結核を疑う所見があれば胸部レントゲン検査や喀痰検査を行います。

ツベルクリン反応は、年月が経つほど反応が弱待ってくると言われています。そのため1回の検査では、精度が低いということになります。

1回目のツベルクリン反応検査から、1~2週間後にもう一度ツベルクリン反応検査を行うと、免疫反応が増強され本来の反応が起こります。2回目の測定結果が本来の結核菌に対する免疫力を表していると考えられています。この現象をブースター効果と言います。

2回目のツベルクリン反応検査で陽性の場合は、結核感染の疑いありということになります。しかし、陽性反応が出たからと言って「結核にかかっている」という訳ではありません。大切なのは、前回検査との比較です。前回検査では陰性だったのに、今回は強陽性、という結果であれば、前回検査時から今回までの間に結核菌感染が起こった可能性を表しています。

看護師はツベルクリン反応検査の試薬注射を担当する機会が多いと思います。正しくツベルクリン反応検査ができるよう、注射方法や試薬の取り扱い方法、判定方法を知っておくと良いしょう。

結核診断の採血検査、クオンティフェロンとは

ツベルクリン反応検査だけでは、結核菌感染なのかBCGワクチン接種の影響で陽性反応が出ているのかが分からないことは前項で解説しました。

採血検査、クォンティフェロンという検査があります。クオンティフェロン検査は、結核菌に特異的な蛋白を検出し、結核感染の有無を調べる検査です。

ツベルクリン反応検査では、検査試薬注射後、48時間に判定が必要で、しかも2週間程度の期間を経て2回目の検査が必要なこと、判定は医師や看護師の測定手技が関わってくることなど、手技がやや煩雑です。その点、クオンティフェロンは採血1回で、検査結果が数値で現れますので簡便です。

BCGワクチン接種の影響は受けませんが、過去の結核感染でも陽性反応となることがあると言われています。30~40代の成人には精度が高く、小児と高齢者では精度が劣ると言われています。働き盛りの看護師、医療従事者の検診としては有意義な検査です。

ツベルクリン反応検査よりも検査費用が高額であること、採血後概ね12時間以内に採血検体を処理しないと検査できないという制約があります。

看護師が結核感染リスクを最小限にするためには

看護師は呼吸苦がある患者さん、咳や痰が多い患者さんと接する機会が多い職種です。結核感染の機会も一般人に比べて多いと言えます。

結核菌の感染経路を把握し、スタンダードプリコーションをしっかり守ることが最大の予防です。

手洗い、マスク着用は必須です。長引く咳など、疑わしい症状がある患者さんは、医師に報告し、胸部レントゲン写真撮影、喀痰検査を依頼しましょう。

ストレスや過労で免疫力低下した状態では、結核感染を起こしやすくなります。自分自身の体力、免疫力維持に努めましょう。

まとめ

いかがでしたか?

結核は過去の病気ではありません。看護師は常に、患者さんに結核の感染の兆候が無いか観察する必要があります。

結核感染の診断に必要な検査をしっかり理解しておきましょう。

結核で命を落とす患者さんを一人でも減らせるよう、看護師も理解を深めていきましょう。