ナースから教授へ!?大学で看護教員として働いたら給料も人間関係ももっと大変だった…

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看護師として転職を考えるとなると、ついつい病院、クリニック、診療科という選択肢で選びがちだと思います。

しかしたまには思考を変えて、看護学校の講師や看護大学の教員という職にスポットを当ててみてはいかがでしょう。

みなさんは、看護系大学教員(看護教員)とはどのような業務をしていると思いますか?

わたしは大学病院で働いていましたが、大学病院でも看護教員とかかわるのは臨床でも実習担当看護師くらいで、私は大学に就職するまで看護教員の実務を知りませんでした。

看護教育と看護研究が業務に含まれる仕事、大学という特殊な看護教員の実情を私の体験からご紹介します。

看護教員への就職のきっかけ、就職の条件とは

教授

なぜ大学教員になれたのか経過を追い、大学教員になるための条件を説明します。

私は大学卒業後、2年間病棟勤務を経て、派遣看護師で半年間、特養や入浴介助業務を行い、その後1年半の間を病棟勤務していました。

療養病棟を併設している病院でしたので、老年看護学については多少知識が身についていました。

そして【学士取得+臨床経験年数4年】という時点で看護教員への就職のお誘いがありました。

大学によって採用条件は異なりますが、私の務めた大学の場合、上記の経歴は看護教員なるための最低条件でした。

私の場合、大学のOBサークルでのつながりで、老年看護学領域の「助手」の欠員補充の折に、お話をいただきました。

それはたまたまのことでしたが、レポート提出後、看護学部長と他領域の教授との面接を経て正式に採用となりました。

内々に話を進めていたので、面接は形式的なもので、素行に明らかな問題がなければ採用といった対応でした。

退職した今となっては、大学教員を続ける人材確保に、大学側は必死になっていたことがわかります。

ちなみに通常は、

  • JREC-IN Portal/研究者人材データベース
  • 看護師転職サイト(看護師専用の転職斡旋会社)
  • ハローワーク当の公的機関

等を使って探すのが一般的です。人気の高い職種のため、随時チェックする必要があります。

看護教員の助手から教授まで昇格への道のり

業績

助手としての大学業務をこなしつつ大学院に通い、修士を取れ次第、助教へ昇格という方もいます。

その後の准教授までの昇格は、研究実績・教育実績をあげることが課せられます。

看護教員の職場の年齢層について、お話します。

20代後半で就職しましたが、周囲の先生方はほとんどの方が大学院を出ている30代以上でした。

そうなると私のような若手は珍しく、最初の頃は学生と間違われました。

最高職位の教授になるまでに必要な役職段階ですが、【助手→助教→講師→准教授→教授】となります。

助教より上になると修士は必須、つまり大学院への2~3年の通学が必要となります。

稀に、すでに臨床経験5年以上で、大学における教育経験もあり修士の学位を有していれば、助教を通り越して講師や准教授になれることあります。

しかし基本的に、各領域の教授の人数により准教授以下の人数が決まっているため、希望の職位に就職できるかは、欠員募集に左右されます。

そして、教授になるには大学院で博士をとり、さらに研究成果を出し、教授に欠員があるときに限り、教授だけの会議で昇格の決議がなされます。

タイトルに書きましたが、「ナースから教授になる」道のりは、長く険しくある程度の運(偶然)も必要ということがわかると思います。

結局、教授になれるのは50代~60代になるのが普通ですが、できたばかりの大学などでは、若手(40代)でも研究実績を積んでいる先生方が教授になっている場合があります。

つまり、他大学からの引き抜きや、実績があるのに昇格できない事情を抱えた講師や准教授が他大学へ流れる場合があるのです。

助手からみえた看護教員のお仕事とは

看護教員の具体的な仕事ですが、6つの項目にわけて説明します。

1)臨床での実習

これは学生を経験している看護師皆様が理解しやすいかと思いますが、裏方的な面も含め、以下にざっくりと業務内容を示します。

  • 実習先との打ち合わせ
  • 実習物品の準備、補充
  • 実習中は毎日、学生の手技の介助と記録提出物の評価
  • 実習最終日には学生の面接を行い最終レポートと総合して成績評価
  • 実習先の施設で学生が実習しやすいよう、スタッフと調整
  • 助手などの下の役職が実習先へ向かい、講師・准教授以上の役職は学内で待機、

研究や講義を行い、責任者として実習を担当

このように、助手などの下の役職は、実習前から学生への指導以外にやることが多くあります。

2)学内での講義や試験監督

助手では講義の主担当になることは滅多になく、修士を有する助教以上が専門的な学術を得ているので、講義を担当します。

助手がする仕事は以下の通りです。

  • 講義資料のコピー
  • 講義ができるようPC設置、パワーポイントの立ち上げ
  • 教室内の明かり、マイクの音量等の整備
  • 演習活動の準備、補助、片付け

試験監督では、基本的に上司の講義の試験に補助試験官として入りますが、人数が足りない、もしくは外部講師の試験に監督として入る場合もあります。

3)学生生活の厚生を守る活動

学生生活の厚生については、私の勤めた大学が専門大学から成長した県立大学だからなのか、手厚いと感じます。

国立大学に在学中はこれほど先生に学生厚生を守られた記憶はありません。

  • 委員会活動
  • 学校祭のサポート
  • 大学近隣の不審者対策
  • スモールクラス(1学年10人ずつ計40名のクラス)を教員全員で担当
  • 卒業論文の担当領域とスモールクラスのダブルで学生の生活指導

以上の活動を通して、義務教育のように、学生のプライベートにまで密にかかわろうとする先生が多い印象で、この良し悪しは個人の判断にお任せします。

4)大学全体でかかわる行事

大学全体で運営する行事はおおよそ以下の通りです。

  • 大学センター試験
  • オープンキャンパス
  • 教育技術向上のための研修会
  • 教授会という月一の全教員に出席が義務づけられる運営に係る会議

【大学センター試験】

大学センター試験は、国の管理のもと行うので、試験日の何か月も前から実行委員会は動き始め、試験監督を担当する全教員への資料配布は試験の1~2か月前からはじまります。

分厚い冊子のマニュアル通りに分刻みで動くので、試験監督時は緊張します。

※ちなみに、2020年度、大学入試改革により、センター試験はなくなります。

【オープンキャンパス】

オープンキャンパスは、各領域で企画し体験型や展示型を用意して当日、各領域全員で担当しますが、

企画などの最終決定権は教授にあり、意見を伺いながら進めていく必要があります。

【研修会】

研修会は、看護教員は全員が教育学を学んだわけではないので、定期的に講義や実習の教育学の研修を行います

【教授会】

教授会は、毎回出席して、自分の役職にもかかわる統一事項を確認し、長い時で3時間座って参加し続けます。

5)研究活動、地域貢献活動

領域が担当する看護学の専門性があり、その看護学を深める研究活動地域貢献活動が義務付けられています。

【研究活動】

研究活動は助手にも必要ですが、教員初年度で研究経験のない私は、講師や教授の研究のサポートに携わり、研究手法を学びました

上司に付き添ってインタビューに向かったり、データ整理をしたり、研究発表のために上司の原案を元にポスターデザインを検討し作って印刷したりします。

何も知らなかったエクセルやワードの技術は確実に上がります。

そして学会登録をし、学会発表に付き添って学会への参加をします。

【地域貢献活動】

地域貢献活動では、各領域の専門分野を生かし、大学周辺地域に大学が奉仕する形をとっています。

例えば、老年看護学に関しては、地域の高齢者が参加して地域間で交流できる活動の支援を行っていました。

6)上司の仕事サポートという名の雑務

前述した中でも上司の雑務はこまごまとありますが、ここで改めてまとめます。

  • 講義資料のコピー
  • 実習先、演習教室、講義教室の整備
  • 研究用のデータ一覧やポスター作製
  • オープンキャンパスに使える体験物品や説明資料づくり
  • 地域貢献活動のサポート
  • 領域内の事務物品や研究実績、学生のレポート保存と講義・研究費用管理

研究室内で黙々と(時々同室の助手とおしゃべりしながら)作業したり、大学もしくは実習施設内を動き回ったりします。

看護教員に向いている人・向いてない人

臨床経験5年と学士や修士さえ取れていれば、誰でもなれる大学教員ですが、誰しもが大学教員に向く、というわけではないです。

  • 大学で何を研究したいのか明確なテーマを持つ人
  • 高校を卒業したばかりの看護師の卵を育てたい人

この2つが少なくとも仕事のモチベーションを保ち、昇格を目指すには必要です。

教育学を学んでいくと、学生の学習に関するアプローチ方法がいろいろあることで難しさや楽しさは感じられました。

なにより、学生が悩んで泣いたり、学生との距離があったのに、実習が進んでいくと共に、学生のリラックスした表情がみえ、呼応するように学生のやわらかな表情が見えて、成長してくれたことが嬉しかったです。

学生に何か学ばせないと…と必死になるのではなく、自然に学べる力があるから、見守って環境を整えるだけでいいのだと、考えが変化する機会にもなりました。

教育への意欲と、仕事の多様性に柔軟に対応できる、思考の柔らかさがある方のほうが向いているでしょう。

看護教員の給料は?

高価過ぎる公務員なので、日勤だけですが、給料やボーナス、福利厚生や退職後の年金などのフォローは一般的な病院より優遇されていると思います。

国公立の大学の場合、給料規定に従うことになるので、平均月収は普通の公務員同様の18~20万円程度になります。

平均年収は、ボーナスを含めて約285~330万円程度でしょう。

初任給こそ低くても、公務員だと確実に昇給していくため、勤続年数が長く続けばそれ相応にアップしていきます。

なお、私立の大学であれば、もっと高い初任給での求人もあります。

初任給で23~30万円の求人もありますので、根気よく探すのが重要です。

大学という特殊な職場環境とは

看護教員も臨床現場と変わらず、上下関係は明確です。

そして、看護学部の中には「看護領域」が存在し、看護領域を越えても目には見えない上下関係があります。

大学でストレス少なく仕事ができるには、領域内外の先生と関係を良好にする必要があります。

看護教員が職場の人間関係が難しい理由

先生方と良好な関係の保持はハッキリ言って難しいです。

特殊な職場環境と感じた原因は、先生方の個性あふれる人間性にあります。

私の経験不足も相まって、教授の思考が読み切れず、どのような仕事の結果を求めているのか理解しづらかった経験があります。

そして、領域外の先生方への振る舞いも気を付けないと、巡り巡って上司からおしかりを受けます。

例えば、他領域の先生の講義を聴講したいときには、その旨を前もって伝えるとともに、聴講後はレポート提出をするなどのフォローが必要です。

また、実習以外は基本的に大学研究室内で過ごすので、個室をもつ上司とも、他領域の先生ともほぼ接しない隔絶された空間で、パソコンや本と向き合っていました。

コミュニケーションがあるんだかないんだか、たまにあると思えば個性の強い先生が多い、そんな特殊な職場環境で働くことが看護教員には求められます。

おわりに…

以上に挙げました経験から説明した内容には、私の主観が多く入っています。

明確に突き詰めたいテーマについて、

  • こつこつと研究をするのが好き
  • 日本の看護の質を高める向上心がある
  • 同僚の特殊な人間性に耐えられる
  • もしくは気にしない性格

であれば、よい環境に感じるかもしれません。

私は研究テーマが定まらず、上司の仕事の振り分け方に困惑し続け、仕事の継続を迷う時期もありました。

やはり、研究が好きでストイックな人でなければ続けるのは難しいんだなあと感じました。

そんなところに夫の転勤が遠方に決まり、その迷いも相まって、退職するに至りましたが、退職時には病院を辞める際の振舞より格段に気を付けなくてはいけません。

この経験談が、大学で働くとはどういうこと?教授になるにはどうしたらよいの?と疑問が浮かんだ看護師さん、看護学生さんにとって役立つものになれば幸いです。

もし、研究が好きでストイックな人がいれば、ぜひ看護教員になって、最終的には看護業界全体をより良く導いていってほしいと思います。

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