看護師は、患者さんの観察ポイントに「浮腫の有無」「浮腫の程度」「浮腫の場所」があります。

看護師が身体アセスメントを行う上で、浮腫は看護において絶対に見逃せない観察項目です。

この記事では、浮腫の成り立ち、浮腫の原因、浮腫のある患者さんのケアなど、看護師が知っておきたい知識をまとめました。

浮腫について自信や知識に不安がある人は、ぜひ最後まで読んで勉強になればと思います。

浮腫があるか、どこにあるか、見逃さない看護師になろう

浮腫は自覚症状が無い場合もあります。

看護師は、バイタルサイン測定や状態観察の機会に、浮腫を見逃さないことが大切です。

浮腫は様々な病気の兆候です。看護師は、浮腫があるか、どこにあるかを見逃さず、症状と関連付けてアセスメントできる能力が求められます。浮腫を早期発見することは、病気を早期発見することと同じです。すでに浮腫のある患者さんの場合、浮腫の程度を観察することは、投薬などの治療効果の判定に繋がります。

浮腫を正しく理解し、浮腫を見逃さない看護師になりましょう。

ズバリ、浮腫の成り立ちを解説

人体は約60%が水(体液)で構成されています。

体液は細胞内液と細胞外液の2種類に分類されます。

たとえば血液は細胞外液に分類されます。

細胞外液は、「血漿」と「組織間液」に分かれており、浮腫は血管内体液(血液)にも、細胞内にも属さない水分が、細胞間にあふれ出た状態と言えます。

一般の方は、浮腫を表現するとき「水が溜まる」と言います。

浮腫の成り立ちに大きく関与するのは、「膠質浸透圧」です。

つまり、蛋白・ナトリウムなどのミネラル成分などのバランスが崩れ、浮腫が発生することが多い様です。

若い元気な頃は、水をいくら飲んでも体に水が溜まりすぎることは無く、尿として排出されます。

しかし、心臓ポンプ機能低下、腎機能低下、低たんぱく血症等になると、体内に取り込まれた水を排出できず、浮腫が起こります

浮腫には全身性浮腫と限局性浮腫がある

浮腫は全身性浮腫限局性浮腫に分けられます。

全身性浮腫とは

全身性浮腫は「全身に起こる」という意味ではありません。

左右どちらかに偏らず、対側性にみられ、顔面、背部(基底部)、下腿~足背に発生しやすい浮腫です。

全身性浮腫の主な原因は以下の通りです。

  • 肝硬変によって起こる「肝性浮腫
  • 甲状腺機能低下症によって起こる「内分泌性浮腫
  • 心臓のポンプ機能が低下して起こる「心原性浮腫
  • 腎機能の悪化によって起こる「腎性浮腫
  • 血液中の蛋白質が低下して起こる「栄養障害性浮腫
  • その他、薬剤副作用によって起こる「薬剤性浮腫
  • 原因不明の「突発性浮腫

限局性浮腫とは

限局性浮腫は、左右差が観察されます。「右半身だけにみられる」「左下肢だけにみられる」といったケースです。

アレルギー性浮腫では、左右どちらかの眼瞼結膜だけに見られることもあります。

限局性浮腫の主な原因は以下の通りです。

  • がん手術でリンパ節郭清(切除)後に起こる「リンパ性浮腫
  • 筋力低下や、脳梗塞後遺症のマヒ等によって起こる「廃用性浮腫
  • 下肢静脈瘤や深部静脈血栓症など静脈の異常によって起こる「静脈性浮腫
  • その他、アレルギー、ストレスが原因で発症する浮腫

患者さんが訴える浮腫の症状について

浮腫を見逃なさいためには、患者さんが訴える浮腫の症状を知っておくと便利です。

上肢、指の浮腫は「手がギシギシする」「手が握りにくい」「手袋をはめているような変な感じ」「指輪がキツく感じる」というように表現されることが多く、顔面の浮腫は「瞼が重い」「目が開きにくい」、女性では「化粧が乗らない、スッキリしない」と言われることがあります。

下肢の浮腫はだるさを伴うことが多く「足が重い」「だるい」「靴が入りにくい、靴下がくい込む」という表現が代表的です。

心不全による浮腫は、下肢浮腫と共に「動くと息が切れる、疲れやすい、横になると息が詰まるような感じ」といった全身症状を伴うことがあります。

介助者が浮腫を発見することも

立位保持が難しい患者さんは、介助者が浮腫を発見することもあります。

身体の基底面(底に当たる部分)の浮腫は、座位であれば臀部、大腿部後面に浮腫が発生します。

臥位では、背部全面、後頭部などベッドに接する部分に浮腫が見られます。寝衣交換や排せつ介助時に、発見されることが多い様です。

明らかにパンパンに張った状態になる前に、患者さんの訴えによって発見できる浮腫もあります。注意深く観察していきましょう

検査データから見る浮腫の病態とは

浮腫に関連する検査データを確認しておきましょう。代表的なデータをピックアップしていきます。

血清アルブミン値

輸血アルブミン値が低下すると浮腫が起こります。

アルブミン値の低い状態を、低たんぱく血症と言います。血清内のアルブミンが減少することで、血管内に水分を引き入れる圧力が弱くなります(浸透圧低下)。そうなると、血管外の細胞間や皮下組織に水分が移動して溜まり、浮腫が起こります

低たんぱく血症の原因は2つです。アルブミンが体内で合成されにくくなることと、アルブミンが体外に出て行ってしまうことの2つです。

前者の代表的な疾患が、肝機能障害、肝硬変です。後者はネフローゼ症候群などの腎疾患です。

GOT・GPTなどの肝機能を反映する値

肝機能が低下してくると、体内でたんぱく質を合成する能力が弱まり、低たんぱく血症になります。

慢性肝炎の悪化、肝硬変の発症で腹水貯留や全身の浮腫が起こります

FT3・FT4などの甲状腺機能を反映する値

甲状腺機能が亢進したり低下したりすることによって、浮腫が生じることがあります。

甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモンが過剰分泌され、たんぱく質・脂質・炭水化物の消費が亢進します。

経口摂取と体内合成されたタンパク質量を消費が上回れば、低たんぱく血症を起こします。

浮腫と大きく関係があるのは、亢進症よりも低下症です。甲状腺機能低下症にみられる浮腫は、粘液水腫といい特徴があります。

水分でブヨブヨした柔らかい感じの浮腫ではなく、指で皮膚を押しても押し返してくるような硬い感じの浮腫です。

無気力、疲労感、便秘、食欲不振などの症状を伴うことが多い様です。

血清クレアチニン・尿素窒素・GFRなどの腎機能を反映する値

腎機能の低下は、浮腫を引き起こします。腎症などで低たんぱく血症が起こったり、腎臓での水の再吸収が阻害されると、体内の除水が出来ず浮腫が起こります。

へモグロビン・ヘマトクリットなどの血球値

貧血は浮腫の原因となります

浮腫を起こすほどの貧血は、顔色不良、眼瞼結膜色不良、労作時呼吸困難となります。

特に、ヘモグロビン値が著しく低下している時は、全身の浮腫が起こります。貧血は、肝機能・腎機能の悪化が原因で起こることもあり、他のデータと合わせてアセスメントする必要があります

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の値

心筋に負担がかかり続けると、心臓の心室からBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)というホルモンが分泌されます。

慢性心不全状態でより高値となります。心臓に負担がかかり続けている状態を、血液検査で測定できるのはBNPだけです。体重増加、症状、浮腫の状態と合わせてアセスメントすることで、心不全の重症化を予防できます

心臓超音波検査のEF(左室駆出率)・弁膜症の状態

左心室が全身に血液を有効に送り出せているかを評価する値がEFです。

うっ血性心不全、急性心筋梗塞、心筋炎、心タンポナーゼ、心筋症などで心臓のポンプ機能が弱まるとEF値は低下します。

また、弁閉鎖不全症・弁狭窄症があると心不全を引き起こし、浮腫や呼吸苦が出現します。弁の状態や血液の逆流量は心臓超音波検査で詳しく検査できます。

浮腫の薬物療法、治療中の看護ポイント

浮腫の薬物療法は、浮腫の原因疾患によって異なります。

心不全、肝硬変、筋力低下などによって起こる浮腫には、他の薬剤と合わせて利尿剤が使われることが多いです。

利尿剤は種類によって、薬理作用が異なりますが、腎臓での水の再吸収を抑制し、尿量を増やすものが一般的です。

利尿剤服用中は、電解質バランスが崩れやすくなると言われています。薬の過剰服用や経口摂取不十分、発汗多量などが起こると、血管内脱水が起こりやすくなります。

また、脱水により血中ナトリウム濃度が上昇しすぎる危険性があると言われています。脱水状態は、脳梗塞・心筋梗塞をはじめとする血栓症のリスクが高まります。

利尿剤服用中の患者さんには以下の点を説明しておくことが必要になってきます。

  • 薬の用法用量をしっかり守ること
  • 急激な体重減少に注意すること
  • 下痢嘔吐発熱などの症状があるときは利尿剤を服用する前に医師に相談すること
  • めまいや著しい口喝などの症状に気を付けること

などです。患者さんが医師や薬剤師の説明を、きちんと理解されているかを確認しましょう。

浮腫がある患者さんに起こりやすいスキントラブルとは

浮腫はスキントラブルの要因になります。

皮下組織に水分が溜まり、ピンと張った皮膚は薄くなり、皮下組織も脆弱になるため傷つきやすいのです。

浮腫でパンパンに張った皮膚は、ちょっと爪を引っかけただけで破れてしまうこともあります。

また、浮腫は褥瘡発生のリスク因子です。褥瘡好発部位(後頭部、脊柱部、仙骨部、大転子部、踵部など体圧がかかり褥瘡が出来やすい場所)に浮腫がある場合は要注意です。

沈下性浮腫といって、ベッドと接した部分に浮腫が起こる患者さんは、特に注意が必要と言われています。

浮腫のある患者さんのスキントラブル予防についてまとめていきます。

浮腫のある皮膚に刺激を与えない

浮腫が著明な患者さんの場合、体位変換や移乗時の介助、寝衣のボタンやファスナーの圧痕で皮膚損傷を起こすことがあります

浮腫のある皮膚に触れる時は、介助者の爪や腕時計が当たらないよう、細心の注意が必要です。

また、点滴ルート、膀胱内留置カテーテル、チューブ類が直接肌に接触したり、身体の下敷きになっていないかを観察し、環境整備を行います。

浮腫のある皮膚を保湿する

浮腫で薄くなった皮膚は乾燥しやすい状態になります。皮膚の乾燥は、痒みを引き起こしやすくなります。

患者さんが掻いてしまうことで、皮膚が破れ感染を起こす危険性があります。浮腫のある皮膚は、保湿薬剤や低刺激のクリームで保湿することを心がけましょう。

浮腫のある皮膚に粘着力の強いテープは禁止

処置や採血後に看護師が使用するテープにも注意が必要です。浮腫で薄くなった皮膚ははがれやすく、一旦剥がれると治癒に時間がかかります。

健康な皮膚では何も問題を起こさない紙テープでも、浮腫のある皮膚では真皮まで剥がれてしまうこともあり得ます。

浮腫のある皮膚は清潔に保つ

浮腫のある皮膚はバリア機能が弱まっており、感染しやすい状態にあります。体を清潔に保つことが大切です。

しかし、シャワーや入浴時に強くこすると、薄くなった皮膚を損傷する危険があるため、低刺激の石鹸を泡立て、強くこすらないようにケアしましょう。

浮腫によってQOLが低下することもある

「むくんでいる」という状態は、患者さんのQOLに影響を与えます。

  • 大きな病気は無いと言われたが、両足がむくんで靴下や靴がキツい、だるいと感じている高齢患者さんは「出かけるのが億劫になった」と言われる
  • 乳がん術後のリンパ性浮腫で、上肢が腫れている患者さんは「着られる服が少なくなった」とおしゃれを諦めてしまうことも
  • 慢性腎不全で顔面、眼瞼の浮腫がある患者さんは「化粧しても腫れぼったくて恥ずかしい」と外出を控えていることも
  • 肝硬変で腹水貯留と下肢の浮腫がある患者さんは「お腹や下半身が大きくなって、動きにくい、辛い」という訴えが多い

浮腫を起こす疾患は様々で、患者さんのADLは原因疾患の重症度によって異なります。浮腫は容貌変化、外観上の変化をきたし、患者さんの心理的ストレスとなります。

浮腫による外観上の変化は、患者さんの活動性や社交性を低下させてしまう恐れがあると言えます。

看護師は、患者さんの不安を受け止めながら、少しでも不安が軽くなるように、療養生活をサポートしていきましょう

まとめ

浮腫を起こす病態は複雑です。

検査データを含め、すべてを理解するにはかなり経験が必要になってくると思います。

しかし、全ての病態を理解できなくても「浮腫があるか、どこにあるか、見逃さない看護師になる」ことは新人看護師さんにも可能です。

患者さんの言動に注意し耳を傾け、しっかり観察することで、病気の兆候を早期発見できます。

そのために、この記事を参考にして頂ければ嬉しいです。

忙しい毎日ですが、看護師としてスキルアップできるよう一緒に頑張りましょう。