現在、多くの医療機関で看護師の新人教育制度として、プリセプターシップ(プリセプター制度)が導入されています。
プリセプターシップ(プリセプター制度)とは、ある一定期間、一人の先輩看護師(プリセプター)が、担当の新人看護師(プリセプティ)に対してマンツーマンで指導を行う制度であり、看護師として働き始めて数年経つと、多くの看護師がプリセプターを経験します。
しかし、いきなり新人に指導する立場になっても、看護師として新人看護師に指導する自信がなく、なにをどのように指導していいか悩む人も多いようです。
またプリセプティとうまくコミュニケーションがとれなくて悩んでいるプリセプターさんも多いと思います。
そこで、今回はプリセプターのみなさんが抱える悩みとその解決策について一緒にみていきたいと思います。
プリセプターがよく抱える悩みとは?
プリセプターのみなさん、初めての人もいれば、2回目、3回目の人もいるかもしれませんね。
それぞれの医療機関の教育制度やプリセプター自身の経験年数や性格、プリセプティの性格など、置かれている環境は違います。
プリセプターの経験する悩みで共通してよく言われるのが以下の3つです。
- 自分のスキルで新人看護師に指導してよいのか不安
- プリセプターとしての指導方法がわからない
- 日常業務とプリセプター業務を両立する負担
それでは、1つずつ解説していきましょう。
自分のスキルで新人看護師に指導してよいのか不安
プリセプターとなる看護師は、経験年数2~4年目の若手看護師とする医療機関が多いです。
自分(ごとき)の看護師としての知識・技術が、新人看護師に指導できるレベルなのか、なかなか自信が持てず悩んでしまうプリセプターさんが多いようです。
プリセプティに質問されて、すぐ答えられなかったり、曖昧な返答しかできないこともよくありますよね。
解決策:そんな時はプリセプターもプリセプティと一緒に勉強すれば◎
プリセプティと一緒に勉強するつもりで、他の先輩看護師を巻き込んで一緒に指導してもらいましょう。
自分も復習するつもりで、一緒に教科書や医療書を読むのもいいと思います。
自分が理解していなかったことに気が付き、学習するきっかけにもなりますよ。
他のプリセプター・プリセプティペアと合同で、テーマを決めて勉強会などをするのも、みんなで楽しく学べてオススメです!
またプリセプターさんの多くが、自分たちと他のペアを比べてしまった経験がある思います。
「自分の指導下手のせいで自分のプリセプティだけ成長が遅れているんじゃないか?((ガクガク」
と悩んでしまうこともありますよね。
プリセプティにもそれぞれ個性があり、成長速度もバラバラなので、他と比べて落ち込む必要はありません。
プリセプターだけが、プリセプティの教育を担当しているわけではありませんので、一人で責任を抱え込まないことが大切です。
プリセプターとしての指導方法がわからない
プリセプターをしているすべての人が、プリセプティにどうやって指導していいかわからないと悩んでいるのではないでしょうか。
- 新人教育マニュアルはあるけど、どう説明していいかわからない
- 口でうまく説明できているのか不安
- 何度説明しても理解していない気がする
- 怒るタイミングがわからない
- 優しく指導しているが逆に重要性が伝わっていない
などなど、せっかく時間をかけて指導しても、うまく理解されていないとストレスが溜まりますよね。
プリセプターになる以前に、誰かにマンツーマンで指導した経験がある人はそう多くいないと思います。
家庭教師などの経験がある人を除いて、ほとんどの人にとって初めての指導経験になります。
まずは、自分にどういう指導ができるのか・向いているのかを考えてみましょう。
例えば、口頭で説明するのが得意な人もいれば、苦手な人もいます。
文章や絵で説明出来る人、冷静に評価ができる人やついつい感情的になってしまう人、各自得意なこと不得意なことがわかると思います。
プリセプティ側も、それぞれ性格や個性が違うので、どうやったら効率よく指導できるのか、最初からわかる人はいません。
プリセプティと接しながら、プリセプティにどのような学習スタイルがあっているのか、1つのことを理解するのにどのくらい時間がかかるのか、苦手なことや得意なことを観察してみましょう。
口頭で説明しても理解されなかったことが、レポート課題を与えたら理解出来たり、その逆もあるかもしれません。
1つ1つメモをとって覚えるタイプ、目で見て覚えるタイプ、身体で経験して覚えるタイプなど人間の記憶方法は人によって様々ですよね。
解決策:指導方法に答えはないので先輩にも相談して効率の良い指導方法を見つける
プリセプターは自分の指導能力や長所短所もまだ知りませんし、指導経験のないプリセプター1人ではなかなかプリセプティに合った指導方法を見つけることは難しいと思います。
そんな時は、教育担当の先輩看護師やプリセプター経験者などに相談し、プリセプティに合った指導方法をみんなで考えていくといいでしょう。
日常業務とプリセプター業務を両立する負担
プリセプターを担当する年代の看護師は、職場でも働き手の年代であり、リーダー業務や看護度の高い患者さんの担当であったりと、自分の業務だけでも大変だと思います。中には、各種委員会や研修会、看護研究に携わっている人もいるでしょう。
職場によっては、プリセプターに負担がかからないようサポート体制の整っているところもあると思いますが、看護師の人員不足も深刻であり、なかなか難しいですよね。
自分自身の業務に加え、慣れないプリセプター業務で、プリセプター自身にかかる負担は今まで以上に大きくなります。
業務後に残ってプリセプティの指導やチェックリスト、日々の振り返り、プリセプターの研修会などで連日残業続きのプリセプターさんも多いようです。
解決策:効率的な時間配分や優先度を決める、どうしても無理な時は上司に相談
自分自身の業務とプリセプター業務をうまく両立し、負担を軽減するためには、効率的な時間配分を考えて行動することが重要です。
やるべきことの優先順位を考え、自分の仕事量と指導の進行状況を把握することで、計画的に両方の業務を遂行されることができます。
しかし、イレギュラーなことが起こるのが、看護の現場です。
そんな時は、無理に一人で対応しようとせず、出来ないことは師長や先輩看護師に相談しましょう。
プリセプターが体力的・精神的に余裕がなくなってしまうと、プリセプティに指導することが難しくなる可能性がありますので、なにもかも一人で解決しようとせず、人に頼ることも時には必要です。
どうしようもない?プリセプティと性格が合わない!
プリセプターがよく抱えるもうひとつの悩みは「プリセプティとの人間関係」についてですよね。
いくらマンツーマンの指導役といっても、プリセプターになる前は赤の他人です。
人と人なので、性格にも合う・合わないがあります。
性格が合わず、うまくコミュニケーションがとれないと、いい関係が築けず、指導も上手くいきませんよね。
そんな「プリセプティとの人間関係」に関する悩みについてみていきましょう。
自分とプリセプティの性格が合わないと感じる
多くの医療機関で、プリセプターとプリセプティの組み合わせを決めるのは、師長や副師長などの管理職か教育担当の看護師だと思います。
新人看護師の採用面接や事前研修などで得た少しの情報で、プリセプターとの組み合わせを決めることになります。
それすらもなく、ただ名簿をみて決めているところもあると思います。
ですので、性格が合うもの同士を事前に把握してペアにすることはそもそも不可能です。
その中で、たまたま性格が合って上手くいくペアもありますが、多くのプリセプターさんがプリセプティと性格が合わないという思いを持つことは、ごく当然のことです。
引っ込み思案なプリセプティに、イライラしてしまうサバサバタイプのプリセプターさんがいたり、逆に積極的すぎるプリセプティに戸惑ってしまう、大人しいタイプのプリセプターさんがいたり。
また、指導が上手くいかずイライラしている時や、思ったようなプリセプティの成長がみられずもどかしい時など、プリセプティの些細な態度が鼻についてしまう時もありますよね。
- 些細な事で泣かれて困っている
- 態度が不真面目
- プリセプターに依存的すぎる
- 責任感がない
- 時間にルーズ
など、プリセプティの性格に対して悩みを抱いているプリセプターさんは結構います。
プリセプティと「性格が合わない」場合、どうしたらいい?
「性格が合わない」というのは、ある程度割り切るしかないのかもしれません。
「性格が合わない」ことに悩むのではなく、「性格が合わない」相手に効率的に指導をするためにどうしたらいいかを考えましょう。
指導する上で大切なのは、感情的にならず、ひと呼吸おいて客観的に対応することです。
一方的にこちらの考えを押し付けず、プリセプティの立場になって考えてあげてみることも必要です。
しかしそれでも悲しいことに、どうしても性格が合わない人というのは存在するのも事実です。
プリセプティと友達になる必要はありません。(相談役にはできればなれたらいいのですが)
その「性格が合わない」と感じるのが、指導や通常業務に支障をきたすレベルなのかどうか客観的に考え、指導継続が難しいレベルであれば、師長や教育担当看護師に相談してみましょう。
もしかして自分も…プリセプティに性格が合わないと思われてる?!
さきほどとは逆に、自分がプリセプティから性格が合わないと思われているのではと悩んでいるプリセプターさんも少なくありません。
指導の際にプリセプティがビクビクしていたり、話を真面目に聞いていなかったり、他の先輩看護師とは楽しそうに話しているのにプリセプターである自分との間には壁を感じたり、見下されているように感じたり…などなど。
「もしかして、プリセプティから嫌われている!?」
と悩んでしまうケースもあります。
そんな時は、一度自分の指導態度を振り返えろう
気づかないうちに、感情的になりすぎていたり、イライラしてないがしろにしたりしてしまっていたのかもしれません。
プリセプティはプリセプターの些細な言動でも気にしてしまうものです。
プリセプターだからこそ、失望されたくない、迷惑をかけたくないという気持ちで壁をつくっているのかもしれません。
プリセプティの事を気にかけているということを言動で伝え、こちらから歩み寄ってあげてみて下さい。
心労が増える?~プリセプティが年上なケース~
プリセプターの抱える悩みで、結構あがるのがこの「プリセプティーが年上」なケースです。
現在、多職種からの転職など社会人経験のある新人看護師が増えています。
年の差にもよりますが、わりと年齢差のあるプリセプティだった場合、様々な面で苦労しますよね。
指導も敬語で行わなければならず、年上なので気を使ってしまい、伝えたいことがうまく伝えられないこともあると思います。
そんな時は、師長や経験豊富な年長者の先輩看護師に相談し、代わりに伝えてもらうのもいいかもしれません。
年上であるプリセプティに敬意を示しつつ、指導しなければならないことは客観的に事実を伝えるように心がけましょう。
逆に社会人としての対応など、プリセプティから学べることもあると思います。
「私はプリセプターに向いてない」と感じるのはみんな同じ
プリセプターがよく抱える悩みについてみていきましたが、悩みの根本の部分は、「自分がプリセプターに向いていない」と感じていることだと思います。
そもそもプリセプターに向いている人とはどんな人なのでしょうか?
「教えるのがうまい」「看護師としての知識・技術が確立している」「余裕を持って新人看護師を見守ることができる」人でしょうか?
それならば、プリセプターには経験豊富な年長の看護師を任命するはずですが、実際はそうではないですよね。
初めから、プリセプターに向いている人はいません!
プリセプターをすることによって、新人看護師とプリセプターをする看護師の両方が成長していくのです。
悩むことで、プリセプターも成長できる!
プリセプターになった看護師は、誰でも一度は悩みます。
多くの人は、一度どころではなく、1年間ずっと悩んで試行錯誤し、他の先輩看護師からのアドバイスをもらいながら、看護師として成長していきます。
悩まなければ、新たな発見も学びもありません。
今は辛い悩みですが、みんなで一緒に乗り越えて、看護師としてスキルアップしていきましょう!
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