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転倒を起こさない、これは病院や施設にとって重大な課題です。

転倒は患者さんに苦痛を与え、ADLを低下させる恐れがあることはもちろんですが、入院期間の延長、医療費の増大などの弊害があります。

転倒予防の看護計画立案には個別性が大切です。

つい画一的になってしまう看護計画に、個別性と具体性を盛り込むためのコツを解説していきます。

転倒予防の看護計画を立てるまでの一般的な流れ

コロコロ

転倒予防の看護計画を立てるまでの流れは、だいたい決まっています。

入院患者・病棟移動患者さんを受け入れた時、転倒転落リスクについてアセスメントします。

転倒予防の看護計画を立てる必要性を評価

まずは、転倒予防の看護計画を立てる必要があるのか?を評価します。

評価ツールは、各病棟で決まった書式の「転倒転落アセスメントスコアシート」を使用することが一般的です。

患者さんのバイタルサイン、一般状態観察、身体可動状態、意識レベル、認知力、服薬内容などを確認し、点数で表します。

合計点数によって、転倒転落の危険度を判定できるようになっています。

看護計画を立案し転倒転落予防策を講じる

病院ごとに、転倒転落アセスメントスコアの運用基準は決まっています。

たとえば「3点以上、危険度Ⅱ以上で転倒防止の看護計画を立案し、1週間以内に再評価する」という感じです。

看護診断を導入している部署では、看護診断名は「身体可動性障害」に該当します。

転倒予防の看護計画を立案するまでの流れをまとめますと、

  • 転倒転落アセスメントスコアシートで転倒の危険度を判定し、アセスメントして身体可動性障害に当たると診断した
  • 転倒リスクが高いため、看護計画を立案し、転倒転落予防策を講じる

ということになります。

転倒転落アセスメントスコアシートを使いこなそう

転倒転落アセスメントスコアシートに記された項目は、いずれも「転倒転落のリスク要因」です。

転倒転落アセスメントスコアシートの内容をしっかり理解することは、アセスメント力向上につながります。

なんでこんな項目が入っているの?と疑問に感じることを解決しておくと良いでしょう。

年齢

70 歳以上の高齢者と、9 歳以下の小児はその他の年代に比べて、転倒転落の危険度が高いことが分かっています。

年齢そのものが転倒リスクになり得ます。

転倒転落の既往

 

  • 転倒転落を起こしたことがある
  • 意識消失発作を起こしたことがある

この両方を確認します。

意識消失発作は、低血糖発作、致死性不整脈による脳貧血、てんかん発作、起立性低血圧、原因不明の失神などを含みます。

転倒による外傷・骨折の既往がある患者さんは要注意です。

感覚器障害

難聴や視力低下の有無を確認します。

感覚器障害のある患者さんは、環境の変化に対応しにくいと言われています。

住み慣れた自宅では、スムーズにつたい歩きで動くことができても、入院すると足元に注意が及ばなくなってしまう事もあります。

めまい、耳鳴り、眩暈(めまい)の有無も確認します。

麻痺や変形

麻痺、疼痛、しびれ感、関節拘縮、変形の有無と程度を確認します。

脳血管疾患による後天的な麻痺、糖尿病合併症による末梢神経障害、術後創痛などもこの項目に含まれます。

介助を要する状態

足腰の筋力の低下、自力歩行できない(車椅子・杖・押し車等使用している)、ふらつきがあり安定感が乏しい、移動介助が必要、臥床状態、等を評価します。

日常生活動作に介助を必要とする患者さんは、転倒転落を起こしやすい状態にあります。

術後のドレーン留置中、カテーテル検査後の安静時間等もこの項目に含まれます。

認知力

  • 見当識障害や認知症がある
  • せん妄や混乱状態である
  • 不穏行動がある
  • 昼夜逆転状態である
  • 記憶力が低下し再学習が難しい状態である

こういった状況判断が的確に行えない状態で転倒転落が起こりやすいと言われています。

認知症患者さんは、空間認識能力が低下しており、段差や障害物が認識にしづらくなっています。

使用薬剤

向精神薬・麻薬製剤・睡眠導入剤・抗パーキンソン剤・血糖降下剤・降圧利尿剤・鎮痛剤・緩下剤・化学療法薬剤、等の使用状況を確認します。

鎮痛剤の中には、眠気やふらつきを催す薬剤があり、注意が必要で、これらの薬剤は導入時に特に注意が必要です。

成人の入院患者さんで、これらの薬剤を1つも服用していない方は、少数派かもしれません。

排泄の状態

  • オムツを使用している
  • 尿・便失禁がある
  • 膀胱内留置カテーテルを挿入している
  • 頻尿がある
  • トイレ介助を要す(ポータブルトイレも含む)
  • 夜間中途覚醒しトイレに行く
  • トイレまで距離がある

これらは転倒転落の要因になります。

術後安静の為、一時的に膀胱内留置カテーテルを留置した高齢患者さんが、管の不快から自己抜去やせん妄を起こしてしまうこともあります。

転倒転落アセスメントスコアシートのチェック項目を取り上げてみました。

これらの項目に1つも当てはまらない入院患者さんは、かなりの少数派だと言えます。

ただし、0点以外は全て看護計画を立案し、介入するわけではないようです。

例えば、5点以上で計画立案する、といった様に各施設で取り決めがあることが普通です。

所属する施設の運用基準を確認してきましょう。

転倒転落アセスメントシートで評価を行う時期は

カルテへの記入間違いってよくある入院・病棟移動の受け入れ時は、当然転倒転落アセスメントスコアシートでの評価を行います。

それ以外に、再評価を行う時期について考えてみましょう。

患者さんの状態は、日々変化していきます。

入院から何日目で再評価する」という取り決めをしておくことが望ましいでしょう。

以下の場合は、再評価が望ましいと考えられます。

  1. 侵襲的な検査、手術後
  2. 転倒転落を起こした時
  3. 新たな薬剤が始まった時
  4. 急変、状態悪化した時

患者さんの変化に応じて看護計画を修正できるようにしましょう。

看護診断の身体可動性障害、その定義とは

  • 転倒転落アセスメントスコアシートで、計画立案が必要な点数に達している
  • 自動的に、看護診断名は、身体可動性障害にして、看護計画はすでにあるひな形を使用して作成する
  • 一連の流れはルーチンになっている

よくあるケースだと思います。

看護診断名を、転倒転落のハイリスク状態=身体可動性障害、と安易に雰囲気で選んではいないでしょうか。

身体可動性障害の定義は「自力での意図的な身体運動や、四肢運動に限界のある状態」とのことです。

活動することに関して、身体の機能が障害され、自由にスムーズに動くことが出来ない、ということですね。

「機能的には何の問題もないけれど、認知症があり、睡眠導入剤服用後に夜間中途覚醒し、病棟内を徘徊してしまう高齢者」を例に考えてみましょう。

この事例では、転倒転落アセスメントスコア上、ハイリスク群となり転倒転落予防の看護計画立案が必要です。

しかし、動けないわけではなので、身体可動性障害の診断はつけにくいと言えるでしょう。

看護診断名に当てはまらない場合、共同問題「転倒転落ハイリスク状態」等の名称で、看護計画を立案できるように取り決めておくとスムーズだと思います。

転倒転落アセスメントスコアシートの重要性とは

転倒転落アセスメントスコアシートを用いて、すべての患者さんを評価するのは大変です。

入院・病棟移動の受け入れ時には、転倒転落アセスメントスコアシートでのアセスメント以外にも様々な書類作成があるからです。

  • 褥瘡危険度OHスケールでの評価
  • アナムネの聴取とフェイスシート作成
  • クリティカルパス用紙作成と説明
  • 病棟オリエンテーションの実施
  • 持参薬確認、薬局への連絡

等、病棟看護師は記録や説明に追われ、かなり忙しいです。

転倒転落アセスメントシートの重要性を考えてみましょう。

ベテラン看護師は、患者さんの病状や動きを観察し、経験知で「この人、転棟しそう。危ないわ」と察知し、具体的な対策を取ることが程度可能です。

しかし、評価や対策が看護師によってバラバラではいけません。

本当は転倒転落のハイリスク状態なのに、何も対策を取っていなかった、ということは安全管理上、許されないからです。

看護師は、転倒転落の危険度を客観的に評価し、危険がある患者さんに適切な対策を取っていることを文書に残す必要があります。

転倒転落予防の看護計画は個別性が命

転倒転落アセスメントスコアシートで点数を付ける、身体可動性障害の看護診断名を付ける、決まったひな形の看護計画を張り付ける。

こんな画一的で、個別性のない看護になっていないでしょうか?

転倒転落予防の看護計画は個別性が大切です。

難しく考える必要はありません。

より具体的で、現実的な方法を盛り込んでいけば良いだけです。

ここからは、看護計画に盛り込める具体的な内容を解説していきます。

看護計画のOP(観察項目)・TP(ケア計画)・EP(教育)別に解説していきましょう。

転倒予防の看護計画、OP(観察項目)の具体例

転倒転落のOP(観察項目)は、転倒転落アセスメントスコアシートの項目に重複しています。

ただし、患者さんごとに重点的に観察する項目が異なってきます。

糖尿病でインスリン投与中、低血糖発作の既往がある患者さんの場合を見てみましょう。

この場合は、血糖値の変動、低血糖発作時の症状の有無、インスリン自己注射が確実に実施できているか、といった血糖コントロールに関する観察項目を追加していきます。

整形外科疾患手術後で、回復期リハビリテーション実施中の患者さんはどうでしょうか。

この場合では、疼痛の有無と程度、リハビリテーションの状態などが観察項目に挙げられます。

患者さんの疾患に関連した観察項目をピックアップしていきます。

転倒予防の看護計画、TP(ケア計画)の具体例

看護師として出来るケアを盛り込んでいきます。

看護計画の中で、中核になる項目です。

  • 疼痛のある患者さんには「適切な鎮痛剤の使用」
  • 排泄による中途覚醒がある患者さんには「消灯前に排せつ介助し、尿意による夜間中途覚醒を予防する」「夜間は吸収性の高いおむつに変更し、排泄による不快感を軽減する」
  • 術後ドレーンチューブ中の患者さんには「輸液ルート、ドレーンチューブの適切な管理を行う」
  • 車椅子移乗に介助が必要な患者さんには「車いすはベッドサイドに置かず、看護師で移乗会場を行う」
  • 認知症で、ベッドから離れてしまう患者さんには「離床センサーマットの設置」「4点ベッド柵の設置」

離床センサーマットや、ベッド柵の追加は、身体拘束に該当します。もちろん患者さんやご家族に、身体拘束に同意して頂くことが前提になります。

排せつや移乗に関する項目は、より具体的にケアの方法を示し、看護師間で共有することが求められます。

転倒転落予防の看護計画、EP(教育)の具体例

転倒転落を起こしそうな患者さんに、どんな教育プランを立てるべきでしょうか?

自力で動いてしまう事で、転倒転落を起こす危険がある患者さん、下肢筋力低下により立位が不安定な患者さんに必要なプランを考えてみましょう。

それは「動く前に援助を求めてもらうこと、ナースコールを押すように教育すること」です。

低血糖発作、めまいなどの症状がある患者さんは「異常を感じたらすぐにナースコールを押すように教育すること」が必要になってきます。

まとめ

転倒転落の危険度を正しく評価し、個別性のある看護計画を立案するための情報をまとめてみました。

入院中の、転倒転落を予防するのは看護師の役割です。

この記事を少しでも参考にして頂ければ幸いです。