消毒液にはいくつかの種類があります。看護師の皆さんのギモンで多い内容は「ヒビテンとイソジンの使い分け」です。
それぞれの消毒液ごとの特徴、消毒液を適切に選択するためのポイントを解説していきます。ヒビテンはどんな時に使えば良いのか?この記事を読んでスッキリ解決してください。
ヒビテンの一般名を知っておこう
薬品には一般名と商品名があります。ヒビテンの一般名は「クロルヘキシジン」です。歴史は古く、1960年代前半に承認を得て発売されました。
代表的な商品名はヒビテンですが、各製薬会社からヘキザック、ベンクロジド、マスキン、ラポテック、ウエルアップ、ヘキシジンなど様々な商品が発売されています。すなわち、クロルヘキシジン=ヒビテンではないので注意しましょう。
イソジンの一般名を知っておこう

出典:amazon.co.jp
イソジンの一般名は「ポビドンヨード」です。ヒビテンより歴史が長く、1950年代に海外で使用が開始されました。
代表的な商品名はイソジンですが、各製薬会社からネグミン、ハイポピロン、ヒシヨード、ピロロチンヨード、ポピドン、ポピドンヨード、イオダイン、ポピヨードなど様々な商品が発売されています。同様に、ポピドンヨード=イソジンではないので注意しましょう。
ヒビテンの特徴をまとめてみました
ヒビテンは無色透明、無臭で水の様にサラサラしています。
ヒビテンは、菌の細胞膜を破壊する事で殺菌作用を発揮すると言われています。
ヒビテンの最大の特徴は、消毒効果に即効性がある事です。ヒビテンで消毒した箇所はすぐに殺菌効果が得られ、効果は長く続きます。後述するイソジンは持続性、アルコールは即効性が特徴なので、両方の長所を兼ね備えた消毒薬と言えます。
ヒビテンの特徴をまとめました。
- 消毒効果に即効性がある
- 消毒効果に持続性がある
- 濃度によっては粘膜面にも使用できる
- 食毒部位に色が付かないため顔面など目立つ部位でも消毒できる
- イソジンやアルコール消毒液に比べて値段が高め
- 芽胞は殺菌できない
- 環境面の消毒は出来ない

イソジンの特徴をまとめてみました
イソジンは、茶色い液体で少しネバネバした粘性のある液体です。乾燥するとベタベタします。独特の臭気があります。
うがい用のイソジンガーグルなどの商品はサラサラしていますが、これはポピドンヨードを皮膚消毒用の商品より希釈してあるためです。
イソジンを消毒部位に塗布すると、ヨウ素を遊離します。ヨウ素と水が反応し殺菌作用のある物質が作られ、細菌・ウイルス・真菌・芽胞表面の膜タンパクに作用し消毒効果を発揮します。
イソジンの最大の特徴は、消毒効果の範囲が広いということです。つまり殺菌作用が強力ということです。
イソジンの特徴をまとめました。
- 消毒効果が長時間持続する
- 色が付いているため、消毒した範囲がはっきりわかる
- 細菌・真菌・ウイルス・芽胞形成菌に殺菌効果を発揮する
- 消毒効果に即効性がない(イソジン塗布後、消毒効果を発揮するため2分くらいかかる)処
- ヨード製剤のため、ショックの危険性がある
- 胸腔内・腹腔内・粘膜に使用できない
- 大量に使用することで化学熱傷をおこす危険がある
- 環境面の消毒は出来ない
手術部位の消毒にイソジンが使われる理由とは
イソジンは消毒効果が長時間(6時間程度)持続します、このため手術や時間のかかる処置に使用されます。また厳密に消毒したい場合に使用します。
時間のかかる処置とは、例えば中心静脈ラインの留置、各種ドレーンの留置、動脈採血、血液培養採取などです。厳密に消毒したい場合とは、整形外科領域でよく行われる関節内注射(関節内液の除去、ヒアルロン酸注射)などです。
イソジンを塗布した場所は茶色く着色しますので、消毒した範囲が目視できっちり確認できるので手術部位の消毒に適しています。
ヒビテンが適している消毒部位とは
ヒビテンが適している消毒部位に特に決まりはありません。
むしろイソジンは粘膜面に使用できないなどの制約があるので、ヒビテンの方が用途が広いと言えます。粘膜に近い場所、イソジンの着色を避けたい場所などに積極的に使用します。
例えば、
- 気管切開部位の消毒
- 胃瘻増設術後、数日間の消毒
- 顔面の傷
- 広範囲の擦過傷
- 膀胱内留置カテーテル(バルーンカテーテル)挿入前の消毒
- 湿潤環境にあるドレーンチューブの挿入部位消毒(PTGBD、PTCD、膵管Tチューブなど)
ヒビテンは濃度の違う商品があると知っておこう
クロルヘキシジン製剤であるヒビテンは、全て粘膜面に使用できるわけではありません。同じ商品名であっても、濃度ごとに適応が変わります。
- 0.02%は外陰・外性器の皮膚、結膜嚢
- 0.05%は創傷部位
- 0.1~0.5%は手指・皮膚・医療器材
- 原液(4%)は医療従事者の手指消毒
使用する前に必ず薬剤濃度を確認しましょう。0.05%消毒液を使用すべき創傷部位に間違って、0.5%を用いると、ショックが生じる可能性があるのです。0.02%消毒液でも膀胱内、膣内などの体腔内には使用できません。
ヒビテンは商品名が同じでも、濃度が違う商品があると認識しておきましょう。
よく使われるアルコール消毒液の特徴は
看護師が日常的に使用する消毒剤は、消毒用アルコール綿です。アルコールの一般名はエタノールです。
アルコール消毒液の最大の長所は即効性です。消毒したい部位をアルコール消毒液で拭くと、消毒液が揮発する時に消毒効果を発揮します。しかし、アルコールはあっという間に揮発してしまい、消毒効果は持続しません。
このため、アルコール消毒剤は静脈注射、静脈採血、皮下注射、皮内注射、筋肉注射など数分以内で終了する処置で使用します。針を刺す時と、針を抜くときにアルコール消毒液の効果があれば良いのです。数分以上時間がかかる処置には使用できません。
アルコール消毒液の特徴をまとめました。長所・短所両方です。
- 消毒効果に即効性がある
- 消毒効果に持続性がない
- 粘膜面にも使用できない
- 値段が安い
- 芽胞は殺菌できない
- アルコールにアレルギーがある人は皮膚トラブルを起こす
- 揮発していると消毒効果が弱まる
アルコールの特徴を知ると、静脈注射、静脈採血、皮下注射、皮内注射、筋肉注射の消毒はヒビテンでも代用できることが分かりますね。
アルコール消毒液にアレルギーがある人はヒビテンを使用しましょう。
ヒビテンとイソジンを使い分けられるようになるには
回診車、包交車にヒビテンとイソジンの両方が搭載されている時、どちらを使用していいか迷うことがあります。縫合した創、術後創部などはどちらを使っても問題ないでしょう。
イソジンには、細胞毒性と言って細菌を殺す作用と同じくらい正常な人体細胞を障害する作用があります。そのため、近年では外傷などはイソジン消毒せず、水道水や生理食塩水で洗浄することが一般的になっています。褥瘡処置にも、イソジン消毒は行いません。
ヒビテンとイソジンの選択に迷った時は、使用する消毒剤と処置方法を医師に確認することが大事です。
同じ患者さんの処置で、看護師ごとに使う消毒液が違う、ということが無いようにしましょう。
まとめ
ヒビテンとイソジンの特徴、ヒビテンを使うべき状況について、イメージできましたか?
消毒部位が着色するためかも知れませんが、一般的にイソジンで消毒したほうが「消毒できている」と実感しやすいようです。実際には、ヒビテンもほぼ同様の消毒効果が期待でき、さらに即効性があります。
適切に消毒液の選択ができる看護師を目指しましょう。
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