現在プリセプターのみなさん、これからプリセプターをするみなさん。
自分がプリセプターとして新人の指導方法を上手く行える自信がありますか?
ほとんどのプリセプターさんが、初めての経験で、どうやって新人看護師に指導をしていいのかわからず、不安を感じていると思います。
ここでは、誰でも簡単に「できるプリセプター」になれちゃう新人の指導方法のポイントを解説していきたいと思います。
できるプリセプターは指導できる環境を整えている!
まず第一に、大切なのはプリセプターとして指導を始めるための準備です。
プリセプティに指導する前に、プリセプターとしての自分の役割を確認しておきましょう。
プリセプターシップ(プリセプター制度)におけるプリセプターの役割とはなんでしょうか?
ひとつは、新人教育として職場のマニュアルに沿って看護業務をおこなえるよう基礎的なことを指導することです。
もうひとつは、新人看護師のリアリティーショックを和らげ、離職率の低下につなげることです。
役割がわかっていないと、プリセプターとしてプリセプティとどういう関わりをしていけばいいのか方向性を見失ってしまいますので、「プリセプターって何をすればいいんだっけ?」と思ったら、まずその役割から再確認しましょう。
指導の準備①新人看護師教育マニュアルを理解し1年間の教育の流れを把握しよう
プリセプターとしての役割を確認したら、次は職場の新人看護師教育マニュアルの内容を理解し、1年間の教育の流れをざっと把握しておきましょう。
マニュアルの中で、指導するのが心配な項目があれば、事前に復習しておくと、いざというときに困りませんよね。
復習しながら、実際に説明する時を想像して、声に出して読んでみたり、大事なポイントにチェックをしたりしておくといいかもしれません。
マニュアルと同時に、多くの医療機関が新人看護師の目標到達度の評価ツールとして評価表やチェックリストを導入していると思います。
各自の評価ツールに目を通し、1年間で、新人看護師がどのような教育段階を経ていくのか、1年間で最終的な目標とされる成長のゴールがどこに設定されているのか確認しておきます。
成長速度には個人差があるので、チェックリストの到達目標がすべてではありませんが、平均的な成長速度を知っておくのも指導の参考になると思います。
指導の準備②プリセプティと信頼関係を築こう
プリセプターの役割として、プリセプティの精神的なサポートをすることも重要です。
新人看護師は、初めての仕事や慣れない職場の環境でとても緊張しています。
精神的にも身体的にも負担が大きく、心を病んでしまったり、体調を崩してしまい仕事を続けるのが難しい状態になってしまう新人看護師は、毎年少なくありません。
プリセプターは、そんなプリセプティの精神的な支えとなれるよう、信頼関係を築いていきましょう。
プリセプターが話しかけにくい雰囲気を作っていては、プリセプティはいつまで経っても心を開いてくれません。
いつも気にかけていることを伝え、些細なことでもこちらから声をかけてあげるようにしましょう。
信頼関係を築くには、精神的なサポートも大切ですが、きちんと指導することも忘れてはいけません。
一緒に仕事をしていて正しいことを教えてくれる、間違ったことを指摘してくれる先輩は信頼出来ますよね。
質問の答えがわからなければ、プリセプティと一緒に学びましょう。
一緒に教科書を見直したり、先輩看護師や看護師長に答えを確認にいくなどです。
曖昧なままにしていては、信頼される先輩にはなれません。
できるプリセプターの指導方法とは?
では実際に「できるプリセプター」はどのような指導方法をとっているのでしょうか?
指導する上で重要な5つのポイントあげてみました。
- プリセプティの緊張をほぐす
- 客観的な評価を行う
- 少しでも出来ていることは褒める
- 叱るときは感情的にならない
- 口で説明するだけでなく、具体的に手本をみせる
プリセプターが明日から実践したい指導方法①プリセプティの緊張をほぐす
まず、プリセプティが効果的に指導を受けられるように、プリセプティの緊張をほぐす声かけを行いましょう。
緊張していては本来の力を発揮できません。
失敗したくない、怒られたくないという気持ちが優先になると、本当に重要なことを理解しないまま、表面的なことしかできなくなります。
それが進むと、ミスをごまかしたり、隠してしまうようになる可能性があり、危険です。
プリセプティがリラックスして指導を受けられるように環境を整えてあげましょう。
プリセプターが明日から実践したい指導方法②客観的な評価に基づき褒める&叱る
次に、評価をする時は客観的に明確に行うことが重要です。
出来ていること、出来ていなかったことをリストアップし、出来ていることは褒め、出来ていなかったことは、出来るようになるよう指導しましょう。
なんとなく「○○が出来てなかった」ではなく、「○○の△△が出来ていなかったから、次は~したほうがいい」など具体的に出来ていなかったポイントを教えてあげましょう。
プリセプターをしていて、「自分の新人の時って、こんなに出来てなかったっけ?」と思う人は多いと思います。逆に「なんでこんなことも出来ないんだろう」「何回も同じこと言ってるのに…」と思うこともありますよね。
指導したことが出来ていないとイライラしたりすると思います。
しかし、イライラして感情的になっては逆効果です。
注意するときは一歩引いて、感情的にならず、何が悪かったかを説明しましょう。
感情的に怒りをぶつけると、プリセプティは何が悪くて怒られているのか明確にわからなくなる可能性があります。
注意するだけでなく、出来ていることは些細な事でも褒め、プリセプティに自信をつけてあげましょう。
否定され続けると、人はどんどん成長できなくなります。
成功体験が人を成長させる鍵となるので、積極的に褒めてあげましょう。
プリセプターが明日から実践したい指導方法③具体的に手本をみせる
そして、一番重要な指導のポイントは、具体的に手本を見せることです。
新しい手技を教える際には、マニュアルに沿って手順を確認した後、出来る限り実際に物品を準備し、手本を見せましょう。
その後、プリセプティに実際に物品に触って練習させましょう。
知識は文字で読むだけよりも目で見ること、実際に体験することで身に付きます。
手間はかかりますが、確実に身につく方法を選びましょう。
評価表がすべてではない~プリセプティに合わせた成長速度で育てる~
実際に指導し、プリセプティがある程度出来るようになってくると、プリセプターは現状の評価を行い、成長の様子をアセスメントしていきます。
評価表やチェックリストなどの評価ツールはプリセプティの成長を客観的に評価する上で便利ですが、それがすべてではありません。
評価ツールにある項目は、一般的・平均的な成長見込みであり、プリセプティの状況によって、出来ること・出来ないことには必ず差がでます。
たとえ自分のプリセプティが評価ツールの設定する成長レベルより遅れているとしても、そんなに気にしなくてもよいと思いますよ。
早く出来るようになる人もいれば、時間がかかる人もいます。
しかし、最終的に伸びるのが、早く出来るようになった人であるとは限りません。
早く目が離れた分、我流になってしまうこともあり得ます。
むしろ、出来ているからといって目を離さず、定期的に評価を行いましょう。
プリセプティと一緒に考えてみよう~プリセプティにあたえる課題~
プリセプティにあたえる課題に悩むプリセプターさんも多いと思います。
職場によっては、教育担当者から新人看護師にレポートなどの課題を与えられ、それをプリセプターが添削するところもありますし、プリセプターからも課題をあたえることもありますよね。
例えば、新人看護師が手術後の看護を担当する前に、術後の看護についてレポートにしたり、学生時代のように担当患者さんの病態の関連図や看護分類を使ったアセスメントなどを課題にしたりすると思います。
プリセプティに課題を出すときの注意点は、なんのための課題かを事前に明確に伝えておくことです。
その課題をすることで、プリセプティに何を得て欲しいのか、本人が理解していないまま課題だけ出すと、時間の無駄になってしまいます。
プリセプティに足りない知識はなんなのか、一緒に振り返り、その知識が得られるような課題を与えましょう。
指導でぶつかってしまう、プリセプター側の問題点とは?
実際にプリセプターをしてみると、様々な問題点にぶつかります。
プリセプターだからとプリセプティに対する責任を一人で抱え込み、精神的に疲れてしまう人も多いんじゃないでしょうか。
また一生懸命指導しても、プリセプティの反応が薄かったり、プリセプティのミスにイライラしてしまったり、周りからなかなか評価されずどうやって指導したらいいかわからなくなって途方に暮れてしまったりと上手くいかないことが多いと、プリセプターを続けていく自信がなくなってしまいますよね。
やる気と責任感が強すぎて、一人で問題を抱え込んでしまうタイプの人は、そういった問題にぶつかってしまいがちです。
一生懸命になることはいいことですが、プリセプターには心の余裕が必要です。
プリセプターが一人でプリセプティの責任を負う必要はありません。
新人教育は、職場のみんなで協力して行っていくものです。
問題にぶつかってしまった時は、すぐに上司や師長に相談しましょう。
一人では見つけられなかった解決策が、きっと出てくると思います。
プリセプターが立てるべき目標とは?
プリセプターが立てる目標は2種類あり、日々の指導で必要となる「プリセプティの個別の成長目標」と、「プリセプターとしての自分の目標」です。
プリセプティの個別の成長目標は、評価表やチェックリストとは別に日々の細かな目標のことです。
大事なのは目標を立てたら期間を決め必ず評価することです。
が、これに関してはプリセプターとプリセプティそれぞれの裁量で決めていきましょう。プリセプターとして、プリセプティに合わせた目標を考えることも重要です。
それよりも難しいのが「プリセプターとして」の自分の目標ではないでしょうか。
医療機関によっては、目標管理シートなどで定期的に目標を設定し、評価する機会がありますよね。
プリセプターの1年間の目標の根本的な部分は以下の2つです。
- 組織の一員として、プリセプターとしての役割を理解し、新人看護師の教育を支援することができる
- プリセプターがその役割を通して自己成長できる
プリセプターが立てるべき目標例
これをふまえて、プリセプターが立てるべき目標例としては、
- 新人看護師の受け入れ準備を行うことができる
- 個人の指導計画を立てることができる
から始まり、中盤は、
- プリセプティの進行状況を把握することができる
- プリセプティに不足している知識や技術の向上を支援することができる
などになります。終盤には
- プリセプターとしての振り返りを行い、評価し、次年度につなげることができる
などといったものがあげられます。
プリセプター制度をうまく利用して指導方法を学ぼう
現在、プリセプターシップ(プリセプター制度)は、国内でもっとも親しまれている新人看護師の教育制度だといえます。
関連する書籍やネットの記事もたくさんありますよね。
様々なツールでプリセプターとしての指導方法について学ぶことが出来ますが、忘れてはいけないのが各医療機関の看護組織や自治体の看護協会、日本看護協会で開かれているプリセプターに関する研修会などです。
それらにも積極的に参加し、指導方法について学びましょう。
同じプリセプターの立場の看護師が集まって、意見交換やグループワークを行うことで、悩みを共有できたり、新たな指導方法が見えてくるかもしれません。
プリセプター制度は、プリセプティだけでなくプリセプターが指導方法を学ぶ制度でもあるのです。
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