2交替、3交替での夜勤ありの病棟看護師を続けていると、激務に追われて、ストレスや疲労が蓄積しがちですよね。
過酷な毎日で身体症状が出てきて、健康が阻害されてしまうことがあります。
そのため、「看護師の仕事を続けられないかもしれない」「夜勤がない職場に就きたい」と悩みながら働く看護師も多くいます。
実際に、看護師が夜勤を続けることにより、健康上のリスクはあるのでしょうか?
ひいては、寿命に関係することがあるのでしょうか。
この記事では、そんな疑問を解消し、健康的に長く看護師を続けるための職場探しの方法についてもご紹介します!
病棟看護師は早死職業ランキングで堂々の5位
病棟で毎日患者さんの命のために働いている看護師の皆さん。
実は皆さんの寿命は患者さんの命とは引き換えに、思ったよりも早く尽きるかもしれないということを知っていましたか?
早死にする職業ベスト10
1位 | 大手広告代理店の営業 |
---|---|
2位 | IT企業の下請けSE |
3位 | チェーン飲食店店長 |
4位 | 若手官僚 |
5位 | 病棟勤務の看護師 |
6位 | タクシー運転手 |
7位 | LCCの客室乗務員 |
8位 | 自衛官 |
9位 | 公立学校の教員 |
10位 | トラック運転手 |
(日刊SPA!より抜粋)
病棟看護師は、6位のタクシー運転手、7位のCA、10位のトラック運転手と同様で、数回の1回の割合で夜勤のある職業ですね。
夜勤のある職業は、生活リズムが不規則になり身体に大きなストレスを生じさせます。
ここから下では、夜勤がもたらす寿命リスクについて考えていきましょう。
看護師の夜勤による健康上のリスクは?
夜勤では、日勤の半分のスタッフしかいないために、業務量もそれなりに多くなります。
そのため、夜勤はとても体力を消耗する仕事です。
またストレスのかかる業務でもあります。
夜勤中はスタッフの半分以上が1~2年目の新人さんということもよくあります。
必然的に、一番経験年数の上の者がリーダーをせざるを得なくなります。
夜勤中は、何が起こるかわからない不安と闘いながら過ごすこととなります。
経験不足の夜勤者にとって、「これから夜勤」というプレッシャーに追われて夜勤前は緊張してゆっくり休めなかったり、かと思えば、夜勤明けは疲れすぎていて逆に眠れない、という看護師は多いです。
そんなストレスフルな夜勤ありの生活を続けていると、健康上のリスクがあるのではないかと心配になりますよね。
様々な病気を誘発する過酷な夜勤業務
実際に、名古屋大学が労働者1万人に対して行った調査によると、夜勤労働者はストレスや緊張感が高い状態が続くため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃腸病になるリスクが一般労働者に比べて2倍高いことが分かっています。
これは、厚生労働省が平成13年に行った労働環境調査でも同じ傾向のデータがとれていて、『夜勤を始めてから体調の変化を感じた』と言う人が、最も多く訴えたのが胃腸病でした。
そして、胃腸病の他にもさまざまな疾病に繋がっていくようです…
その次に挙げられているものとしては、糖尿病です。
夜勤労働者は、2型糖尿病になる確率が高いと言われています。
実際に、厚生労働省の調べによると、日本の糖尿病患者数と夜勤労働者数は年々増加しています。(夜勤労働者の寿命が短くなるのは嘘?より抜粋)
糖尿病の原因も、不規則な生活や睡眠不足、ストレスが原因となると言われていますので、これら全てが夜勤労働に関係があるとわかります。
夜勤従事者の寿命は普通の人のマイナス10年以上!?
また、フランスで行われた研究によると、夜勤従事者の寿命はそうでない人に比べて10年以上も短くなってしまうと言われています。
フランス人の平均寿命は日本人とほぼ同じ85歳ぐらいなので、それが10年以上も短くなるとは、夜勤がいかに身体に悪いかがわかりますね。
そして看護師は女性が多い職場です。
女性ならではの悩みとして、夜勤のストレスにより女性ホルモンバランスが崩れて生理周期が乱れることもあります。
また、「すぐにほてる」「疲れやすい」何らかの更年期障害のような症状を感じる人も多いようです。
看護師の乳がんリスクをデータで見てみよう
デンマーク看護協会の看護師会員(女性)を対象とした研究結果では、以下の表のように、看護師の勤務による乳がん罹患のリスクがあることを示しています。
以下の表の見方ですが、こちらは看護師が深夜勤をするにあたり期間・累積回数・交替勤務別に乳がんリスクを示すもので、オッズ比は深夜勤をしなかった看護師との比較になります。
この表では、「日勤+準夜勤」しかしなかった日勤専従の看護師は乳がんリスク(オッズ比)が1としています。
また、オッズ比は年齢、体重、ホルモン補充療法、初潮年齢、月経の規則性、母親・姉妹の乳がんの有無、授乳期間で調整が入っているとのことです。
それでは見ていきましょう。
午前0時以降を含む深夜勤を1年以上(19~9時の間の8時間労働)
オッズ比 | 95%信頼区間 | ||
---|---|---|---|
期間 | 1~5年 | 1.5 | 0.99-2.5 |
5~10年 | 2.3 | 1.4-3.5 | |
10~20年 | 1.9 | 1.1-2.8 | |
20年以上 | 2.1 | 1.3-2.2 | |
累積回数 | 468回未満 | 1.6 | 1.0-2.6 |
468~1,095回 | 2.0 | 1.3-3.0 | |
1,096回以上 | 2.2 | 1.5-3.2 |
交代性勤務
オッズ比 | 95%信頼区間 | ||
---|---|---|---|
日勤+準夜勤 | 732回未満 | 1.4 | 0.9-2.2 |
732回以上 | 1.0 | 1.4-2.4 | |
二交代制 | 732回未満 | 1.5 | 0.9-2.4 |
732回以上 | 2.6 | 1.8-3.8 | |
三交代制 | 732回未満 | 1.8 | 1.2-3.1 |
732回以上 | 1.9 | 0.7-2.3 |
(看護協会より抜粋)
ちなみに95%信頼区間というのは、「同じ調査を100回やったら95回はこの区間のオッズ比に結果なるよ~!」という統計学的に信頼できるとされる数値です。(この表でいうと、日勤+準夜勤が深夜勤業務732回以上行ったがオッズ比1.0というのは5%=たまたまで、殆どの場合は1.4-2.4になるはずだっということです。そもそも日勤+準夜勤の勤務形態なのに深夜勤業務が732回も発生するの?という話ですがそれはさておき。)
例えば、日勤と比較すると、午前0時以降を含む深夜勤の経験期間が長いほど乳がんリスクが高くなる傾向にあり、5~10 年でも2.3 倍のリスクであることを示しています。
これらの記事から、看護師の深夜勤は経験期間が長いほど、健康上のリスクがある業務だと言えます。
過酷で寿命が縮む夜勤業務・・・それでも減らせない理由は?
これは、日本看護協会が調べた、看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ – 看護師長への教育・研修、スタッフの疾病リスクに関する知識について表したグラフです。
夜勤・交代制勤務に関する看護師長への教育・研修
管理職 | 夜勤・交代制勤務のリスクに関する教育・研修を受けたことがない | 61.4% |
---|---|---|
労働基準法・労働安全衛生法に関する教育・研修を受けたことがない | 41.6% | |
看護師長 | 夜勤・交代制勤務の禁忌・減免内容についての説明を受けていない | 41.8% |
夜勤・交代制勤務に関する個別指導を受けていない | 40.1% | |
相談相手となる担当者の明示を受けていない | 28.4% | |
勤務表作成マニュアルの配布を受けていない | 27.1% |
夜勤・交代制勤務の疾病リスクに関するスタッフの知識
疾病リスクに関する知識 | 知っている | 知らない |
---|---|---|
睡眠障害 | 80.7% | 13.8% |
慢性疲労 | 79.4% | 15.2% |
月経異常 | 67.4% | 27.0% |
循環器障害 | 39.5% | 54.3% |
悪性腫瘍 | 22.1% | 71.8% |
夜勤・交代制勤務に関する疾病リスクの知識を得た情報源
疾病リスクに関する知識 | 基礎教育で知識を得た | 現任教育で知識を得た |
---|---|---|
睡眠障害 | 42.1% | 4.9% |
慢性疲労 | 41.2% | 4.7% |
月経異常 | 41.7% | 4.3% |
循環器障害 | 38.1% | 4.7% |
悪性腫瘍 | 35.1% | 5.8% |
(看護協会より抜粋)
このグラフでは、看護師長が管理職となってから、夜勤・交代制勤務のリスクに関する教育・研修を「受けたことがない」割合が 61.4%に上っています。
つまり、管理者やそれに準ずる役割の者が、スタッフに夜勤に関する疾病リスクについての教育が十分に行えていないわけですね。
実際に夜勤をするスタッフが、夜勤に関する疾病リスクを「現任教育から得た」割合も、およそ5%と低くなっています。
夜勤に関する疾病リスクを「知っている」と回答した割合は「睡眠障害」では80%を超えていますが、実際に夜勤をしてみてから、睡眠障害や慢性疲労に悩まされてしまうスタッフが多いようです。
このことから、看護師の多くは夜勤がもたらす寿命や健康への悪影響を正しく認識しておらず、また教育も十分ではないことが伺えます。
知識が不十分だと、先輩や上司の言う指示や命令に対して黙って従うしかなく、これが当たり前だと思って自分の後輩や部下にもそのまま過酷な夜勤を押し付けるようになってしまいます。
しかし、夜勤のストレスは確実に寿命を蝕んでいきます。
すべての人が体力や根性があるわけではないため、どうしても頑張れない人から脱落するような構造になります。
それでも無理をして頑張り続けると、うつ病や身体を壊したり、乳がんを患ったりすることもあり、最終的には命に関わる話になりかねません。
夜勤で看護師が寿命を縮めないためには
夜勤をできるだけ負担を少なく行う上で大切なのは、適切な時間数、回数、そして業務内容と休憩時間の確保です。
夜勤の適性回数は、3交替制で8回未満、2交替制で4回未満と言われています。
しかし、多くの病院は看護師不足が深刻で、それぞれの病棟には必要最低限かそれ以下の人数しかいません。
日勤常勤者やパート勤務の看護師が多いところでは、夜勤をできるスタッフにしわ寄せがいき、必然的に夜勤回数が多くなってしまいがちです。
すると、「夜勤業務がキツいから辞める」、「人が辞めるからさらに夜勤業務がキツくなる」という悪循環に陥ってしまいます。
看護師は夜勤は嫌とはいえなくなるのも困る
「夜勤を減らすと夜勤手当てがなくなって生活に困る」という給料面での事情もあります。
看護師の給料は高いと言われていたり、求人広告では一見すると高収入に見えます。
しかし、その横についている「諸手当込」の文字。
それはほとんどの場合が、「夜勤手当」込の月収なのです。
夜勤手当は2交替なら約1万円~、3交替であれば準夜勤約4000円~、深夜勤約5000円~となっています。
夜勤手当の割合が大きい分、実は基本給が少ないという病院もあります。
たとえば急性期で働く正看護師の平均年収を見ると、夜勤ありの場合は520万円、夜勤なしの日勤のみの場合は400万円と、100万円以上の差があります。
夜勤ありの平均年収 | 520万円 |
---|---|
夜勤なし(日勤のみ)の平均年収 | 400万円 |
そのため、夜勤が健康上のリスクがあるとは分かっていても、病棟で勤務する限りはシフト上の都合や、給料面を鑑みた時に、夜勤業務がどうしても外せなくなってしまいます。
夜勤で寿命が縮むようなストレスを感じないための対処方法
夜勤が外せないなら、夜勤につきものの「ストレス」と「睡眠不足」と上手く付き合っていきましょう。
上手に眠るコツ①オンオフをハッキリさせる
そこで、オススメなのはオンとオフをハッキリさせることです。たとえば、
- 夜勤明けは張り詰めていた神経を解放して、プライベートに専念する
- オフの時は仕事のことを忘れる
など、気分をリフレッシュすることは大切です。
また、夜勤で睡眠リズムが乱れたり、睡眠不足に陥りがちな方には以下の方法をオススメします。
上手に眠るコツ②寝室の環境整備を行なうことで、入眠しやすい状態を作り出す
まずは寝室のカーテンを遮光カーテンに変えてみてください。極力光が部屋に入り込まないようにすることが大切です。
上手に眠るコツ③部屋の明かりも、夜勤明けの日は暗めに設定しておくこと
特に、スマートフォンやテレビ、パソコンなどの画面の光は直接目に当たり刺激となるため、眠りたくても眠れなくなってしまいます。
そのため、なるべく光から遠ざかるようにしてください。
上記の方法で、十分に睡眠をとって、疲労回復を目指しましょう。
上手に眠るコツ④自分オリジナルのストレス発散方法を見つける
ストレスが溜まると体調不良に陥りがちです。
発散する方法は人それぞれなので、自分流の方法を見つけましょう。
例えば
- 旅行に行く
- 趣味に没頭する
- スポーツに挑戦してみる
- 同僚や友人と出かける
- お気に入りの癒しスポットを見つける
など、自分にあった方法を探してみるのも効果的です。
その他に、ストレス解消法として、アロマサロンやリラクゼーションに通う看護師は多いです。
健康と美容を両立させるため、ジムに通ったり、ヨガに挑戦する人も増えてきました。
しかし、ストレス解消として、アルコールや暴飲暴食、荒い金遣いになるなど、健康や経済面を脅かすことになっては元も子もないので、健康的な方法でストレス解消することが大切ですね。
夜勤回数が負担とならないよう、日勤のみで働ける病院や施設に転職!
夜勤が必須の病院では夜勤ができる看護師を優先して採用することが多いです。
しかし、何らかの事情があり、夜勤ができないとしても経験年数の高い看護師や能力が高いと見込まれる看護師を確保するために採用することもあります。
それは、診療報酬の基準として、常勤の正看護師比率が重要視されているからです。
診療報酬加算の基準を守るために、夜勤ができなくても正職員として雇用して正看護師を確保しようとする病院が増えています。
また、給料面だけで考えると夜勤はなくてはならないかもしれませんが、夜勤手当がなくなることは必ずしもデメリットではありません。
夜勤によって精神面や健康面で支障が出てくるのであれば、相当の夜勤手当があっても、夜勤そのものの辛さはなくなりません。
それならむしろ、夜勤手当の分が減ってしまうとしても、ストレスが少なく、無理なく働ける「夜勤なしの仕事」を選ぶことで、長く健康的に働けると言えます。
夜勤がない職場としては、入院施設のない病院やクリニック、外来勤務が挙げられます。
その他、訪問介護の仕事やデイケアサービス、検診センターなども、基本的には日中のみサービスとなるため、夜勤はありません。
また、一般企業の医務室勤務、健康相談のコールセンター勤務、治験コーディネーター、臨床モニターなどにも看護師の採用を行っているところはあります。
こうしてみると、病院やクリニック以外にも、夜勤のない看護師の仕事はたくさんあることがわかります。
転職サイトに登録して求人をチェックしてみると、上記のような「日勤のみ」の条件で働ける求人を簡単に探すことができます。
まずは転職サイトに登録して求人をチェックしてみましょう。
また、夜勤オンリーという働き方も視野に考えたい方は、専従夜勤経験者の体験談の記事を参考にしてみてくださいね。
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