最近は訪問入浴介護のニーズが高まってきています。訪問入浴介護の看護師の求人が増えているので、よく目にすることがあるのではないでしょうか?
しかし、訪問入浴と聞くと「体力要りそうで大変」「介護士だけでできる仕事なのでは?」というイメージが一般的ですよね。
私もそう思っていました。
ですが、訪問入浴には看護師の同伴が必要で、看護師はとても重要なポジションとされているのです!そして、肉体労働の疲れよりもやりがいを感じられるお仕事です。
その理由を、経験談を交えてご紹介していきます。
訪問入浴介護の看護師の役割は何?介護士ではダメな理由は?
一見、”介護”とついているので看護師の仕事ではなさそうにも思えますが、そもそも訪問入浴介護とは何なのでしょうか?
訪問入浴介護とは?

出典:http://www.hamaoka.or.jp/tokaigiken.html
訪問入浴介護の利用者は、自分では入浴が困難なADLの低下している人や、家族の介助が難しく入浴ができない人が主です。特に高齢者が増えてきています。
オペレーターである介護士やヘルパーと一組になって、入浴車にて利用者の自宅に訪問します。そして簡易式の浴槽を使って、入浴サービスを行います。
1日あたり6件~8件程度(事業所や季節により差があります)を訪問します。
1件あたりの時間は30~40分ほどで区切られているため、限られた時間の中でバイタルチェックから準備、入浴、片付けまでを終わらせ、次の訪問先の予定時間に遅れないように移動しなくてはいけません。
なので、手際よく看護業務をこなすことや、介護士やヘルパーとのチームワークが求められます。
チームの中には必ず看護師の同伴が求められます。介護事業なら介護士だけでも良いのでは?と思いますよね。
なぜ看護師が必要なのでしょうか?それがよく分かるように、業務の流れから紹介していきましょう。
訪問入浴介護の業務の流れ
事業所にて
事業所に出勤し、ユニフォーム等に着替えます。
訪問予定の利用者の確認、看護記録の確認や申し送り、機材や備品の準備をして出発です
訪問先到着
利用者とその家族は大切なお客様なので、丁寧に挨拶し訪問させて頂きます。
その後、バイタルチェックをして、問題がなければ入浴準備にかかります。
オペレーターの介護士とヘルパーが協力して浴槽の手配、組み立てを行います。
脱衣介助
関節拘縮や筋力低下が進行している方や、呼吸器やカテーテル挿入中の方もいらっしゃるので、利用者に合わせた介助の仕方を工夫しながら行います。
移動と洗体洗髪
介護士、ヘルパーと一緒に利用者をベッドから簡易式の浴槽に移動します。この時、看護師は顔色の変化や表情を伺えるように、頭元を持つことが多いです。
浴槽の中で洗体洗髪をします。看護師は全身の皮膚状態の確認や、入浴中のバイタル変動がないかを確認しながら行います。
入浴後の処置
必要に応じて褥瘡への軟膏処置や、チューブ類の固定、保護などの処置をします。
着衣介助後、バイタルチェック
入浴後のバイタルチェックにて変化がないか確認をします。
問題がなければ終了です。
ご家族への報告とご挨拶をして訪問先を出ます。
看護記録
バイタルの値や、行った処置、利用者の言動などの記録を残して次回の訪問時に役立てられるようにします。
「看護師」がいないといけない理由は?
ここまであげた訪問入浴の流れの中で、看護師の役割としては、バイタルチェックをして利用者の健康状態を確認して、問題なければ入浴のための脱衣の介助や移動介助を行うこと。そして、医療行為としては褥瘡や皮膚トラブルがある場合には、入浴後に軟膏処置やガーゼ保護などのケアが必要なことが多いです。
また、利用者によっては、人工呼吸器の装着をしている方や、膀胱留置カテーテル、マーゲンチューブなどが挿入されている方もいます。
その場合は、看護師としての医療の知識やアセスメント力が求められます。
訪問入浴の現場では医師が不在のため、万が一のときは看護師にとっさの判断を求められます。
最近は高齢者の方が増えてきていて既往歴がたくさんあり、バイタルサインの変動がしやすい方も多いです。そのため、訪問入浴介護には「看護師」の同伴が必要なのです。
訪問入浴介護と訪問看護の違いは?
訪問入浴介護の中でも、医療的処置の多い利用者が増えている中で、訪問入浴介護では、しばしば訪問看護と同じような業務を求められることがあります。
しかし、訪問入浴介護の看護業務と、訪問看護は違います。
介護保険と医療保険といった保険適用の違いもありますが、何よりも看護師ができる医療行為の範疇が違います。
訪問入浴介護では、緊急時を除き、原則は入浴介助に付随しない医療処置はできません。
例えば、訪問入浴介護の看護師は、入浴時の膀胱留置カテーテルのバッグの保護やチューブの管理をすることはできますが、カテーテルチューブの交換はできないのです。
カテーテルの交換は医師の指示が必要であり、訪問の現場で行うためには「訪問看護指示書」が必要となるからです。
訪問入浴の場合は、ケアマネージャーの作成するケアプランをもとに、導入できるようになっています。
求められる看護師の能力は?
限られた時間内で、一連の流れをこなすことが必要なので、チームワークが重要となります。また、一緒に訪問する介護士やヘルパーとの協調性が求められます。
そして、ご自宅に訪問させて頂く上で、利用者やご家族とのコミュニケーション力も大切となります。
利用者とご家族からのクレームやキャンセルがないように、誠実に対応する必要があります。
病棟に比べると医療行為も少ないため、臨床経験が少ない看護師やブランクありの看護師でも入りやすいお仕事です。
そのため、第二新卒の看護師や、主婦を経験して訪問入浴看護師に復職された人も多くいます。
また、日勤のみのお仕事ですので、ママさんナースとして活躍している人もいます。
常勤の看護師だけではシフトが回せない場合は、ピンチヒッターとして派遣看護師を募集することもあるため、単発での求人も多くあります。
しかし、バイタルチェックなどで利用者の健康状態を把握して入浴できるかどうかを判断することが求められるので、看護の基本的な知識は必要です。
また、訪問入浴では肉体労働も多いため、件数や重症度の高い利用者ばかりだと疲れることもあります。
全身麻痺のある利用者や関節拘縮の強い人ですと、着脱位介助だけでも大変です。
特に、真夏の訪問入浴の現場では、エアコンのないお家への訪問時には汗だくになってしまうこともあります。
その点、ADL介助に慣れている看護師や、体を動かすことが好きな看護師は手早く入浴介助ができるので、訪問入浴の現場では重宝されます。
訪問入浴事業の看護師として働いてみてどうだった?
私自身の訪問入浴の看護師としての経験談をご紹介します。
私は訪問入浴の求人を見て、単純に時給が高め(1600円/時~)であり、日勤で残業のないお仕事と聞いていたので、ライフワークバランスも整えやすいと考えて応募しました。
初回の訪問時には、同伴する介護士とヘルパーから利用者の特徴や介助方法などの申し送りを受けて、訪問させて頂いていました。
そして、訪問の合間の車の中ではたわい無いトークも交えながら、業務の流れと利用者の特徴を掴めるように説明してくれていました。
また、着脱の介助も入浴介助も慣れない頃は手早く行うことができず、焦って介助していましたが、急かすことなく優しく手伝ってくれたのがありがたかったです。
ですが、事業所によっては一日の件数が多く人手が足りないので忙しいところもあり、介護士やヘルパーがイライラしがちで急かされたり、人間関係が悪いところもあると聞きます。
着脱介助、移動介助をたくさんこなすので、介助の手際は良くなりますし、続けているうちに慣れていきます。
また、利用者の特徴に合わせて介助できるようになるので、スムーズに利用者に入浴して頂けるようになったことで、喜んでもらえます。
それがやりがいにもなりました。利用者とご家族とも関係性が築けていくのが嬉しかったです。
そして、続けていくうちに介護士やヘルパーとのコミュニケーションも取りやすくなり、チームワークが良くなっていくことを実感できました。
しかし、体力の要る業務です。特に真夏は汗だくになって入浴介助をすることもあります。逆に真冬は、利用者からのキャンセルも増えるので、訪問件数が少なくなることもあります。その時は閑散期として、時給が安くなることもあるようです。
常勤看護師の人数は少ないので、常勤の看護師が不在の時は派遣看護師で単発募集をかけていました。
訪問入浴介護の看護師は未経験者でも大丈夫
訪問入浴介護の看護師の役割と、求められる看護師像などをご紹介してきました。
訪問入浴介護は介護事業ではありますが、介護士だけではなく「看護師」が必要とされているのは、訪問中の短時間でもバイタルサインの確認をして、入浴ができるかどうかの判断や、健康状態のアセスメントが必要であるからです。
そうなると、看護師の責任はとても重大で、プレッシャーに感じる人もいるかもしれません。
ですが、臨床経験の浅い看護師やブランクから復帰した看護師で、訪問入浴介護の看護師として仕事を始め、続けられている人も多いです。
それは、普段の利用者の様子を知っている介護士やヘルパーが上手く説明をしてくれたり、協力して介助してくれているからです。
つまりは、介護士やヘルパーとのチームワークや人間関係がとても重要になってくるのです。
そこで、コミュニケーション力や協調性が求められる現場です。
スムーズに業務が進み、チームワークが良くなり、結果的に利用者にも喜んでもらえることになるのでやりがいにつながります。
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