褥瘡予防、褥瘡ケアは日々進化しています。褥瘡は、寝たきりのお年寄りだけの問題ではなく、すべての患者さんにリスクがあります。
看護師が知っておきたい褥瘡ケアの最前線をまとめました。日々の看護に活用して頂けたら幸いです。
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褥瘡はなぜ起こる?発生原因を解説
褥瘡は同一部位に、一定以上の力がかかり続けることによって、よって皮膚の血流が途絶することで発生します。要するに、虚血による皮膚障害です。
健常人では、睡眠、臥床状態でも、無意識に体を動かしているため、褥瘡発生することはありません。るい痩による病的骨突出(骨と皮の間に筋肉・脂肪組織が無く骨が土び出した状態)、栄養状態の悪化、感覚障害、運動麻痺、麻酔科で体動困難、検査治療による長期同一体位などが原因で褥瘡発生します。
200mmHg以上の持続的な圧迫が2時間以上局所的に加わると、皮膚の毛細血管圧がゼロとなり、皮膚、筋肉組織は内部から壊死してくると言われています。
褥瘡の原因は、局所への持続的な圧迫です。
褥瘡好発部位を知っておこう
褥瘡好発部位とは、褥瘡が発生しやすい場所のことです。褥瘡好発部位は、体位によって異なります。
- 仰臥位……後頭部、肩甲骨部、仙骨部、踵部など
- 側臥位……耳介部、肩部、頬部、大転子部、外顆部、腸骨部、肘頭外側部など
- 座位………仙骨部、坐骨結節部など
褥瘡は寝たきり状態だけで発生するわけではなく、局所の圧迫で起こりますので、酸素マスクや、バイパップマスクの圧迫による鼻や顔面の褥瘡も起こります。褥瘡は全身で起こり得ることを知っておきましょう。
褥瘡の原因は外部要因、内部要因に分けられる
褥瘡の原因は2つにわかれます。外部要因、内部要因です。それぞれについて解説していきます。
外部要因としては、外部からのかかる皮膚への圧迫です。ぐっと押し当てるような垂直方向の圧迫だけではなく、摩擦やズレによる水平方向の圧迫も含まれます。
内部要因としては、褥瘡の出来やすさを規定する体側の要因です。低栄養状態、浮腫、糖尿病、運動麻痺、感覚障害、加齢による皮膚の脆弱性等が挙げられます。
外部要因と内部要因の組み合わせにより、褥瘡発生のリスクが評価されます。
褥瘡予防の方法を一挙箇条書きで紹介
褥瘡予防の方法を箇条書きにしてみました。
- 自己体動出来ない場合、原則2時間毎定期的に体位変換を実施する
- 観察により発赤、水疱、掻痒感などの皮膚異常を早期発見する
- 皮膚が湿潤状態にならないようよう、清潔を保つ(特におむつ使用時)病床整備を施行し、皮膚の著しい乾燥が起こらないよう、保湿剤を塗布する
- シーツや、寝衣のしわを伸ばす。ただしピンと張りすぎない
- 検査データを把握し、低アルブミン血症がないか把握する
- 低栄養状態の場合は、栄養状態の改善を検討する
- 体圧分散用マットレスやクッションを活用し、局所の圧迫を分散する
- 車いす座位の場合は、坐骨結節部に強い圧迫がかかるため、20~30分おきに除圧を行う
- 褥瘡のリスクをアセスメントし、適切な処置を行う
次に、褥瘡発生のリスク評価の方法を紹介していきます。
褥瘡発生のリスク評価、OHスケールとは
OHスケール(オーエイチスケール)は、厚生労働省長寿学総合研究班が、1990年代後半から全国の病院・施設・在宅の褥瘡発生の状況、治療の実態を調査分析をし、作られました。
褥瘡発生の危険要因を統計学的手法により分析、「自力体位変換が可能か」「病的骨突出の有無」「浮腫の有無」「関節拘縮の有無」を点数化し褥瘡発生のしやすさを予測するツールです。
自力体位変換が可能か、は「できる0点」「どちらでもない1.5点」「できない3点」です。病的骨突出の有無、は「なし0点」「軽度・中等度1.5点」「高度3点」です。浮腫の有無、は「なし0点」「あり3点」です。関節拘縮の有無は「なし0点」「あり1点」です。
OHスコアの合計点数は0点~10点で、点数が高くなるほどハイリスクと考えます。点数によって4つのランクに分類し、褥瘡発生リスクを明確にします。
OHスコアの合計点数が0~3点の場合、特別な体圧分散マットレスは必要なし、とされています。体位変換や除圧で褥瘡予防します。合計点数が4~6点の場合、汎用タイプのマットレスを使用するべきとされています。合計点数が7~10点の場合、高機能エアーマットレスや自動体位変換マットレスが必要とされています。
褥瘡の状態を把握するDESIGN-R(デザインアール)を使いこなそう
褥瘡の状態を把握するツールは、DESIGN-R(デザインアール)です。
患者さんの仙骨部に発赤を発見した、軽い表皮剥離が発生している、こんな場合はその変化が褥瘡かどうかを判断することが第一歩です。軽度の発赤に見えても、DTI(深部損傷褥瘡)といって、深部組織が損傷されている場合があるため、十分に観察が必要です。
DTIは、圧迫とずれにより深部の筋や軟部組織が損傷したことによって発生した欠損していない限局した皮膚障害の事です。軽症にみえるため放置していると、時間の経過とともに治癒困難な深い褥瘡へと変化していきます。DTIは触診とエコー検査で診断します。触診は、疼痛、硬結、泥のようにぶにょぶにょした感じ、皮膚温変化を観察します。
まずは「ガラス板圧診法」と「指押し法」を使用し、皮膚損傷が褥瘡かどうかを判断しましょう。
DESIGN-R(デザインアール)のDとは?
褥瘡発生の初期は、発赤から始まります。
DESIGN-R(デザインアール)のDは褥瘡の深さを表しています。Dは大文字では深い褥瘡、dは小文字では浅い褥瘡を表します。深い褥瘡は皮下組織まで達する創と規定されています。
ガラス板圧診法は、発赤が褥瘡か一時的な発赤化を診断する方法です。はガラス板、または透明プラスチック板で、発赤部を軽く3秒ほど圧迫します。発赤部位が、白っぽく変化するかどうかを確認します。
白っぽくなる場合は、一時的な発赤で褥瘡ではないことを表しています。白っぽくならない場合は、「d1褥瘡」と判断します。
DESIGN-R(デザインアール)のEとは?
DESIGN-R(デザインアール)のEは滲出液の状態を表しています。
浸出液の状態は、ドレッシング材の交換回数で判定していきます。
1日2回以上のドレッシング材交換を要する場合、浸出液多量と判定します。
DESIGN-R(デザインアール)のSとは?
DESIGN-R(デザインアール)のSは褥瘡のサイズを表しています。サイズは、褥瘡創面の縦×横の最大径で判定します。
縦×横を平方センチメートルで表し、4㎠~100㎠でランク分けして評価します。
DESIGN-R(デザインアール)のIとは?
DESIGN-R(デザインアール)のIは感染と炎症の有無を表しています。
褥瘡を観察し、周囲の発赤、熱感、膿状排液、悪臭などがある場合は、有と判断します。
DESIGN-R(デザインアール)のG/Nとは?
DESIGN-R(デザインアール)のGは良性肉芽が創に占める割合を目視で判定したものです。良性肉芽が多いほど点数は低くなります。良性肉芽が50%未満をG、50%以上をgとして評価します。ただし、壊死組織が存在する場合はGではなくNと表記します。
そのほかに褥瘡のポケット形成を評価する項目もあります。
DESIGN-R(デザインアール)のRとは?
Rは評点(Rating)の頭文字です。
DESIGN-Rは、DESIGNという褥瘡評価ツールを改良し、褥瘡の状態をより詳細に観察、点数化し、現在の褥瘡の状態を把握するとともに、治療経過で「良くなっているのか」「悪化しているのか」を簡便に表す出来るようにしたものです。
各項目のアルファベットが大文字であるということは、状態がより悪いということ、小文字に変化すると治癒傾向とすぐにわかります。
各施設でDESIGNまたは DESIGN-Rの評価表があると思いますので、しっかり見て内容を把握しておきましょう。
創傷処置と褥瘡処置の医療点数の違いとは
ここでちょっとコストの話をしましょう。DESIGN-Rとも深い関係があります。
切り傷や擦過傷などの「創傷処置」と「褥瘡処置」の医療点数は異なります。ただし、DESIGN-Rでd1~D2までの褥瘡は創傷処置と同じ点数で、D3より重症の褥瘡(皮下組織、骨に達する褥瘡)が対象になります。
100平方センチメートル未満は90点(900円)、100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満は98点(980円)、といったように段階的に点数が上がり、6,000平方センチメートル以上は500点(5,000円)となっています。
医療点数の算定においても正確なDESIGN-Rの評価が求められます。手術後の患者(入院中)の褥瘡処置は手術日から14日間しか算定できないこともポイントです。医療点数は、褥瘡の大きさによって異なり、ガーゼ交換の多さは加味されません。
ドレッシング材の費用は、この医療点数に包括されていますので、高価なドレッシング材を無駄に使用すると、赤字になってしまう危険もあります。
褥瘡処置に使用するドレッシング材の進化
褥瘡処置に使用するドレッシング材は進化しています。
代表的なものを挙げてみましょう。これは商品名ではなく一般名です。
- フィルムドレッシング
- ハイドロコイドドレッシング
- ポリウレタンフォーム
- ハイドロジェル
- アルギン酸塩ドレッシング
- ポリウレタンフィルム
これらのドレッシング選択は、医師か専門看護師が行います。褥瘡の状態に応じてドレッシング材を変更していきます。
ここで全ての特徴を解説することは出来ませんが、使用頻度が高い、フィルムドレッシング、ハイドロコイドドレッシングについて特徴を解説していきます。
褥瘡処置におけるフィルムドレッシングの適応は
フィルムドレッシングは、浅い褥瘡(真皮までの損傷)の創保護、圧迫、ずれの予防、湿潤環境の保持を目的に使用します。適応は、感染が無い真皮内にとどまる褥瘡です。
仙骨部に発赤ができてしまった、褥瘡と判定するには早いが、病的骨突出部位でより注意が必要。と言ったケースにも使用できます。軽い表皮剥離(真皮内にとどまる)までの皮膚保護が可能です。
フィルムドレッシングは局所への除圧が目的ではありませんので、体圧分散や体位変換による除圧は継続します。
褥瘡処置におけるハイドロコイドドレッシングの適応は
ハイドロコロイドは、親水性ポリマーと疎水性ポリマーからできており、褥瘡の滲出液を吸収してゲル化して適度な湿潤環境を保持し、創治癒を促進します。
適応は、滲出液の少ない褥瘡、真皮~皮下組織までの皮膚欠損褥瘡となっています。浸出液が多すぎると、ゲル化の範囲を超えドレッシングが脱落してしまいます。褥瘡を閉鎖性環境に保つことで、局所の低酸素状態が起こり創の毛細血管新生が促進されることも期待されます。
通常、数日ドレッシングを貼付したまま経過観察します。
さいごに
褥瘡予防の概念、予防方法、リスク評価、褥瘡評価と治療は日々進化しています。この記事で解説したことも、直ぐに時代遅れになってしまいそうです。
看護師は褥瘡予防、褥瘡治療の最前線で働いています。常に新しい知識をGETできるよう頑張りましょう。
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