「もう辞めたい!」
看護師ならば、誰もが一度は考えたことがあるかも知れません。
特に新人看護師は、慣れない環境の中で常に緊張とプレッシャーを感じながら多くのことを習得して行かなくてはならないため、その辛さはなおさらでしょう。
辞めたいと思った時、あなたならどうしますか?
どうすることがベターなのでしょうか?
今回はその疑問にお答えすべく、新人看護師が辞めたいと思う原因やタイミング「辞めたいと思った時、どうすればよいのか?」について考えてみたいと思います。
辛い時のヒントになれば嬉しいです。
新人時代、辞めたいトラップ(罠)はいたる所に潜んでいる!

もういやや~
新人時代は学ぶこと・覚えることも多く、とにかく大変です。
新人看護師はどのような時に「辞めたい」と思うのでしょうか?
辞めたい原因を大きく3つに分類してみました。
カテゴリー | 特徴 |
---|---|
自身の能力や適性 |
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職場環境や人間関係 |
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肉体的・精神的負担 |
|
どれも「#あるある」かもしれません。
辞めたい原因もひとつではなく、複数が絡み合っていることも多いです。
看護師として求められるレベルと現状とのギャップ、【できること】よりも【できないこと】が圧倒的に多く、
【褒められる】よりも【注意や叱られることが多い】新人時代は、辞めたいトラップ(罠)が至る所に潜んでいると考えた方がよいでしょう。
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新人看護師が辞めたいと思うタイミングは?

「次のボーナスもらったらやめよ」
では1年目のどんなタイミングで「辞めたい」と思うのでしょうか?
新人看護師が辞めたくなるタイミングとしては6月、9月、12月、3月といった節目が多いようです。
- 6月…4月からの疲れが出始める時期。自分より出来のいい同期と比べたり、夜勤に入る時期が近付いていることで、焦りやプレッシャーが強くなる。
- 9月…夜勤が始まり、不規則な生活サイクルに疲労や体調を崩し、辛さを感じる。てか夜勤明け日勤ってアリなの!?とか思う。
- 12月…ここまで頑張ったけど、冬のボーナスもらって辞めようかな…
- 3月…1年間は何とか頑張ったけど限界。2年目も働き続ける自信はなく辞めたい。
実際に辞める新卒看護師はどのくらいいる?
新卒で離職(=辞める)する看護師はどのくらいいるか知っていますか?
2016年に日本看護協会が実施した病院看護実態調査によると、新卒看護師の離職率は「7.8%」だそうです。100人いたら7.8人が離職を経験しているということですね。
この数字、多いと感じますか?それとも、少ないと感じますか?
恐らく「辞めたい」と思った新人看護師は、本当はもっと沢山いたはずです。けれど、実際に「退職」という行動に移した看護師は7.8%と考えると、意外に少ないな…というのが私個人の感想です。
新卒で辞める看護師と辞めない看護師、何が違うの?
新卒で辞める看護師と「辞めたい!」と思いつつも辞めなかった看護師、両者の違いって何でしょうか…?
色々調べていて、ヒントになりそうな看護研究を見つけたのでご紹介します。
2008年の研究になりますが、新卒1年以内に【辞めた看護師】20名と【辞めなかった看護師(卒後1年以上3年未満)】20名にインタビューを行い、両者の仕事上の経験を比較して、どんな違いがあるかを調べた研究です。
すると、両者の間に次のような違いがあったことがわかったのです。
違い①:問題の捉え方の違い
仕事上で問題発生時、辞めた新人看護師は問題を抽象レベルで捉え、辞めなかった新人看護師は問題を具体的なレベルまで引き寄せ考える傾向があった、というのですが、これは例えると、こんな感じ…。
クラスで自分よりも成績優秀な人がいたとします。
その人を「親も有名大学を出ているって聞いたし、元々の素質が自分とは違うのよ。」と考えるのは抽象レベルでの考え方です。
それに対し「いつも成績がいいけれど、どういう勉強方法なのかな?」と考えるのは具体的レベルに引き寄せた考え方と言えます。
「優秀さ=素質」という曖昧な物で片づけてしまうと、自分には近づくのが困難だと感じますが、
「どういう勉強方法をすれば、あの人みたいになれるかな?」という具体的レベルで考えると、勉強法を知って方法を真似すれば、自分も成績アップするかも知れません。
なるほど?ん~?いろんな感想が聞こえてきます。
違い②:マイナス思考

私の価値なさすぎィ
辞めた新人看護師は他人の言動や評価に左右されやすく、自分の期待通りの反応が得られないとマイナスに捉える傾向があったのです。
人間は他者から承認されたい生き物です。ただこの承認欲求が強すぎると、相手から期待通りの承認が得られなかった時に失望したり、「自分には価値がない」とまで思いつめてしまうことも…。
辞めた新人看護師の特徴のひとつとして、「周囲の人の期待に応えようとする、真面目でいい子」とも言えます。
社会の中で生き抜くには、ある程度「人は人。自分は自分。」との割り切りや気にしない力も必要です。
他人からの評価に左右されない自分軸を築いていきたいものですね。
違い③:完璧主義すぎる?
【辞めた看護師】は自分に対し「あるべき姿」への期待が高く、現実とのギャップに否定的感情を持ち、退職するまでに至っている、そうです。
看護師として「こういう看護がしたい!」「こういうナースになりたい!」と理想を高く持つことは素晴らしいこと。
「千里の道も一歩から」と言うように、小さな努力を沢山重ねて、失敗と成功を重ねることで初めて、理想とする姿に少しずつ近づくことができます。それには時間も必要です。
新人時代は「なりたい姿」と現実の自分とのギャップに落胆する場面の連続。
理想はあくまでも理想として、現実の自分を受け入れ、今できることをコツコツと積み上げて行くスタンスが大切と言えます。
違い④:自分のために働く!

金のためさ・・・。
辞めなかった新人看護師には「収入のために働く」という意識が強かった、というものです。
違い②と③にもあったように、辞めた新人看護師は「他者からの承認」や「看護のやりがい」を仕事上のモチベーションの上位としているのに対し、【辞めなかった看護師】は「収入」をモチベーションの上位と感じている傾向が強かったことになります。
この結果から、辞めた新人看護師が理想を追い求めるロマンチストならば、【辞めなかった看護師】は現実をシビアに見つめるリアリストとも言えます。
「他人からの承認」などは形が見えず、変化しやすいものです。それに対し、労働の対価として得られる「お金」は、解雇されない限り収入は保障されます。裏切りません。
「お金のために働く」と聞くとあまりよい印象を持たない人もいるかもしれませんが、看護だって仕事の一つです。
辞めなかった新人看護師は看護の仕事の大変さや辛さも「仕事とはそういうもの。働いてお金を稼ぐとはそういうもの。」との受け止めがある程度できていると考えられます。
辞めたい!と思ったらどうしたらいい?
ここからは具体策です。辞めたい!と思ったら、次の心構えや行動を試してみてください。
1.「何が辛い・苦しいのか?」「なぜ辞めたいのか?」を自分にしっかり問いかけよう

人間関係つらすぎ・・・
辛い・苦しいと思うときには現実から目を背けて、逃げ出したくなるのが人のココロというものです。わかります、何もかもから現実逃避したくなるその気持ち…。
でも、これだけは言わせて下さい。
今が辛く苦しいからといって、勢い任せに辞めたら、きっと後で後悔します!!たぶん…。
だから、具体的何がどうして辛い・苦しいのか?辞めたいのか?…一度は自分自身に問いかけて、考えて欲しいのです。
辛いけれど自分の心を向き合うことで、隠れた本当の気持ちに気付くこともあるかも知れません。
辞めたい原因が見つかったら、それに対して自分ができることをやってみよう
あなたの辞めたい原因は何ですか?
以下では原因別の心構えや対策法をご紹介します。
まずは何か一つだって構いません、できそうなことから始めてみませんか。
適性や能力不足、理想と現実とのギャップが原因
- できないことは当たり前。できないことに必要以上に落ち込まない。
- 他者からの評価は全てではない!1週間前、1ヶ月前の自分と比べてできるようになったことは必ずあるはず!成長できた自分をちゃんと認めよう。
- 一つずつ実現可能な小さな目標を立てて、コツコツ積み重ねてみよう。
- 「看護師辞めたい」と思うのは自分だけじゃない。誰にでも一度はあること、特別じゃないことを知っておこう。
- 「看護も仕事のひとつ」「ある程度大変なのは当たり前」という割り切りも必要。
職場環境や人間関係が原因
- 一人で抱え込まず、誰か(職場で信頼できる人、家族、友人など)に相談してみよう。
- 自分の行動を振り返り、先輩が教えたいと思う新人を目指してみよう。
- 1年目は良くも悪くも先輩スタッフの厳しい視線が集中するもの。自身の成長と時間の経過によって状況が変化する(厳しい指導のターゲットから外れる)のを待つ姿勢も必要。
体力的・精神的負担が原因
- 疲れているから、面倒だからと食事を疎かにしない!体が資本です。しっかり食べましょう。
- 休める時にはとにかく休み、自分の身体をいたわりましょう。
- 大変な毎日の中でも、自分が少しでもリフレッシュできる何かを持ちましょう。身体を動かす、マンガを読む、おいしいものを食べる、買い物するなど何でも構いません。
3.それでも「やっぱり無理!」と思ったら、環境を変えてみるのも手

うん、私じゃない、環境が悪いわ
新卒1年目での離職について、私個人の意見を言えば、「正直、もったいない。」という思いが強いです。
経験1年目での転職は条件面で厳しくなりやすく、妥協しなくてはならない場面も出てくるかも知れません。
また辛い気持ちのまま離職してしまうことで、自分の中で「逃げ出してしまった」という後ろめたい感情を抱くことがあり、転職した後もその感情を引きずり、苦しめられるケースも少なからずあるからです。
しかし・・・
悩むあまり身体を壊してしまっては、元も子もありません。
またいじめなど、どんなに本人が悩んでもどうすることもできない問題があるのも事実です。
そんな時には上司に相談して、別の部署への異動を希望してみたり、転職を考えましょう。
「今辞めて、次に働けるところが見つかるのかな?」と不安に思う時は、在職中に転職支援サービスを利用しての情報収集や、コンサルタントの意見を聞いてみるのがおすすめです。
退職までに次の職場が決まり、今後の見通しが立つことで気持ちを切り替えて新たな一歩を踏み出すことができるでしょう。
おわりに
いかかでしたか。
看護師であれば、誰もが一度は「辞めたい」と思うもの。
続けるにしろ辞めるにしろ、それぞれの道に苦労や大変さがあります。どちらの選択が正解というのもありません。
辞めたいと思ったら、まずは自分自身としっかり向き合い、心の声を確かめてみて下さい。
みなさんにとって後悔の少ない選択ができますように。
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