今、訪問看護は人材を求めています。
国は、在宅復帰推進・病診連携・地域医療拡充を掲げて、医療機関の増床を抑制しています。
訪問看護の対象者は増える一方、訪問看護師の需要も増える一方です。
- 訪問看護にチャレンジしたいけど、病院勤務から転向できるのか
- 自分が訪問看護に向いているか調べておきたい
- 訪問看護に向いていない人はいるのか
こんな看護師さんの疑問、心配にお答えしたいと思います。
私が、病院勤務から訪問看護へ転職した経験を元に、訪問看護に向いている人、向いていない人について解説していきたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください。
ちなみに、訪問看護のお仕事内容については、こちらの記事を御覧ください。
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訪問看護に向いている人、について解説
皆さんの訪問看護師に対するイメージはどんな感じですか。
私は自分が訪問看護に転職する前は「ジャージ」「自転車」「年配の看護師さん」というイメージでした。
実際に訪問看護で働き始めて、病院勤務時代に抱いていたイメージとは大きく違うことを感じました。
「訪問看護に向いている人」の特徴は、「訪問看護に求められている事」とほとんど同じ事だと思っています。
訪問看護に向いている人、について真剣に考えてみました。
訪問看護に向いている「社会常識のある人」
訪問看護師は、利用者さんのお宅にお邪魔する仕事です。注射や処置などの看護技術より優先されるのは、社会常識と礼儀正しさです。
清潔感のある身だしなみ、正しい敬語、時間厳守は当然です。玄関での靴のそろえ方、部屋での立ち居振る舞いに自信はありますか?
訪問看護師は、利用者様以外にケアマネージャー、主治医、訪問リハビリテーションなどの他業種とのコンタクトも重要な業務です。
アポイントの取り方を含め、失礼のない態度で関われるかが課題です。病院の常識、世間の非常識、という言葉を忘れないようにしましょう。
看護師としてテキパキ働けるか、業務を効率化できるかということばかりに目を奪われないようにしたいものです。
訪問看護に向いている「誰とでも気さくに話せる人」
訪問看護は、誰とでも気さくに話せる明るい人に向いています。
利用者さんやご家族に信頼してもらうためには、気さくで何でも話せる人、親しみの持てる人と感じてもらえる様な努力が必要です。明るさはとても大切です。
- 利用者さんのお話を聞くのが好き
- 興味を持ってお話を聞ける
- 明るい話題を引き出せる
- 一緒に笑い合うのが好き
こんな訪問看護師はとても信頼されます。訪問看護師と話すのが楽しい、と感じてもらえたら、介護や病気に関する相談や悩みも話して頂けるようになるでしょう。
訪問看護師は、利用者さんに関わる介護ヘルパーさんから報告や相談を受けることも多いです。訪問看護師が気付かなかった利用者さんの異変を教えてもらえることもあります。
医療の事が分からない介護ヘルパーさんの報告を、指導的態度で聴くと「話しづらい、怖い」感じさせ、必要な報告が受けられないことに繋がってしまうことがあります。
他業種の方と、円滑なチームワークで利用者さんを支えるために、気さくさと明るさは大切になってきます。
訪問看護に向いている「長く看護師を続けたい人」
長く看護師を続けたい、と思っている人に訪問看護はマッチしています。訪問看護は長く続けられる仕事です。そして、現場は気長に仕事続けてくれる看護師を求めています。
利用者さんとの契約は、長期わたることも少なくありません。事情を知っている人に来て欲しい、と担当看護師の固定を希望する利用者さんもいます。
在宅療養から最期まで、信頼できる看護師に来て欲しいと思っているご家族もいます。
訪問看護師としてのスタートに年齢は関係ありませんし、また自分が健康である限り終わりもありません。
もしフルタイムで働けなくなっても、パートタイムで特定の利用者さんを担当するなど、信頼関係を生かして働けるのが魅力だと思います。
訪問看護師に向いている「優しく利用者さんを見守れる人」
訪問看護は、優しく利用者さんを見守る忍耐強さも必要です。
病院勤務では、看護計画の中に「患者教育」というキーワードが含まれています。
教育とは患者さんや家族の理解不足を修正し、生活習慣や予防行動を是正させるための看護指導です。
例えば
- 「水分は1日〇〇mlまで、計量して飲むこと、守らないと心不全になる危険がある」
- 「チェックリストに沿ってインスリン自己注射を覚えること、間食は絶対禁止」
といったことです。
訪問看護でも、利用者さんに危険が及ぶことや病状を悪化させるようなことは、避ける必要があります。しかし、病院看護師の指導的態度を持ち込んでは上手くいきません。看護師がキツい、上から目線の物言い、と感じさせてしまうことがあるからです。
訪問看護を行う場所は、は利用者さんのお宅です。
一見危険に見える行為も、利用者さんなりの思いや考えがあり、自宅内でどのように過ごすかは自由です。
「これダメ」「危ないから禁止」と性急な指導をせず、優しく利用者さんを見守り、根気強く解決策を見いだせる人が訪問看護に向いています。
訪問看護に向いている「点滴や注射が苦手な人」
看護師として、点滴や注射などの看護技術が得意に越したことはありません。訪問看護で点滴や注射が全く無いわけでもありません。
- 看護観察力、アセスメント力に自信はある、でも点滴と注射が苦手
- コミュニケーション、保清は得意だけど点滴と注射が苦手
- 点滴と注射に自信がないので、病院で働くのが不安
- 以前の点滴失敗がトラウマになっている
看護師を続けたいけど、点滴や注射はちょっと、と感じている人は、訪問看護に向いていると思います。点滴や注射が苦手だから看護師としての能力が低い、ということはありません。他に必要な能力は数えきれないほどあります。
訪問看護では、突発的に点滴や注射を実施することはありませんし、点滴や注射がある利用者さんは一部です。
点滴や注射がある場合は、看護師二人で訪問する、指導看護師が付き添う、他の看護師と交代する、等の対応が可能になります。
訪問看護に向いていない人、について解説
訪問看護に向いていない人、について解説していきたいと思います、がその前に。訪問看護に向いていない人、が看護師に向いていない人、という意味ではありません。
病院勤務から訪問看護に転向した私が働き始めて、苦労したこと、困ったことなどの経験を元に記事を書いていますので、誤解の無いようお願いいたします。
私は、潔癖症、方向音痴、若干体力も弱い方ですが、訪問看護を続けているうちに徐々に克服できました。
訪問看護に向いていない「極端に潔癖症の人」
訪問看護は、利用者様のお宅や入居施設のお部屋でのお仕事です。病院の様に、清潔でないこともしょっちゅうあります。すぐに手を洗える環境にないこともあります。
私は、六畳のお部屋で10匹の猫を飼っておられるお宅や、一度も掃除機をかけたことが無いお宅、足の踏み場が無く荷物をかき分けて進むお宅などいろんな現場を経験していきました。
中には、靴のまま入るしかないお宅もありました。
どちらかと言うと潔癖症気味の私は、履いていた靴下を洗濯するのが嫌でその都度捨てていました。
また、ユニフォームもその都度着替え、持ち物に医療用の殺菌消臭剤をふりかけていたため、移動中の荷物が多すぎて苦労しました。
同僚看護師は「マスクをしていれば大丈夫、あまり気にならない」という人がほとんどで、いちいち着替えている私に苦笑していました。訪問看護は、様々な事情があるお宅にお邪魔するお仕事です。
極端に潔癖症の人は向いていないかもしれません。
訪問看護に向いていない「成果主義の人」
訪問看護は自宅療養中の高齢者さまだけを対象にしている訳ではありません。小児、若年難病や精神疾患の利用者様も対象です。
しかし、圧倒的に高齢者様とターミナルケアの利用者様の「自分らしく最期を迎えるためのお手伝い」というケースが多いのです。
病状の改善、社会復帰といった分かりやすい看護目標を立てることが出来ない利用者様が多いと思います。
循環器内科病棟勤務なら「狭窄血管の閉塞を解除し、心筋ダメージを最小限にする、心血管事故の再発を防ぐ」、消化器内科病棟では「抗がん剤治療を安全に実施する、合併症を早期発見する」といった看護目標があり、それらが達成できた患者さんは転院、退院していきます。
治療的で明確な目標設定、病状回復という成果にやりがいを感じる看護師さんにとって、訪問看護は退屈に感じてしまうことがあるようです。
自宅でその人らしく生活していくにはどうすればいいか、をチームで考え支えていくことは、地味で平坦な道に感じるかもしれません。しかし、それこそが訪問看護のやりがいでもあります。
訪問看護に向いていない「上下関係に厳しい人」
- 看護師として何年目か
- どんな病院で経験を積んできたか
- 認定看護師などの保有資格があるのか
同僚看護師のキャリアに敏感で上下関係に厳しい看護師さんは少なくありません。
特に大学病院、国公立系病院、規模の大きい総合病院は、経験年数に応じた教育や役割が明確な所が多く、上下関係を気にする方が多い印象です。
しかし、新卒で訪問看護になる看護師はまだ少ない現状です。訪問看護に転職する看護師さんは、経験年数やキャリアは多様です。
- 看護師三年目で急性期病棟から訪問看護に転職する人
- 50代のベテランでクリニック管理者から訪問看護師に転職する人
- 10年以上のブランクがあって訪問看護に再就職する人
など多種多様です。
訪問看護ステーションの所長が20代看護師、ということもあります。上下関係に厳しすぎる看護師はストレスが溜まってしまうかもしれません。
どんな年代の看護師同士でも、困りごとを話し合えるオープンさが大切だと思います。
訪問看護に向いていない「体力に自信が無い人」
訪問看護は移動する仕事です。移動手段は自転車、車、徒歩、バイクなど様々です。
訪問看護は、荷物が重いです。複数の訪問先を続けて回るときは特に荷物が多くなります。
記録用紙、患者さん情報、バインダー類、バイタルサイン測定グッズ、ガーゼや消毒剤などの処置道具一式、場合により点滴薬剤などでバックはかなりの重量です。
移動手段は都会であればあるほど、自転車の確率が高くなります。車やバイクでは小回りが利かず、駐車スペースが確保できないことがあるからです。
雪でも、雨でも、真夏日でも、台風でも、重い荷物を持って自転車で仕事に向かうのは、かなり体力が要ります。
あまり体力に自信が無い人は訪問看護に向いていないかもしれません。ただし、訪問看護ステーションによって、移動の範囲や移動方法が違いますので、よく確認してください。
訪問看護に向いていない「方向音痴な人」
初めての訪問は、ケアマネージャーと現地集合、訪問看護指示書の住所を見ながら向かうことがあります。方向音痴な人はかなり緊張しますね。
訪問看護師として働く場所が地元であれば迷うことは無いでしょう。しかし、土地勘が無い場所での訪問看護は、迷ってしまうことがあります。
スマートフォンの地図アプリで確認しながら行けば良いのに、と思われるかもしれませんが、自転車やバイクでスマホ画面を見ながら進むのは、かなり危なく分かりにくいです。
私は、訪問看護を始めて3カ月ぐらいは、近道しようとして道に迷ったり、目的地まで2倍以上時間がかかったりしていました。
同僚看護師から「道に迷ってステーションに帰れない」と電話がかかって来て、迎えに行った事もありました。
方向音痴な人は、訪問看護の移動に慣れるまで時間がかかるかもしれません。
誰でも訪問看護師になれる、と言い切る理由
病院勤務、クリニック勤務、ブランクのある看護師でも、チャレンジしたい人は誰でも訪問看護師になれます。
透析室、内視鏡室、血管造影検査室、手術室、特殊外来など特殊分野で働く看護師も、訪問看護師になれます。
訪問看護に転職した私の病院勤務の最終職歴は、手術室です。
看護師としての技術習熟度やアセスメント力は個人差があります。
しかし、訪問看護に求められるものについてしっかり把握しておくこと、利用者さんのお宅にお邪魔させて頂くという謙虚さを忘れないこと、病院の常識は世間の非常識と認識しておくこと、最初はそれだけで大丈夫だと思っています。
訪問看護にチャレンジしたい気持ちがあれば、誰でも訪問看護師になれます。
さいごに
訪問看護に向いている人、向いていない人 の解説いかがでしたか?
少しでも、訪問看護に興味がわいた、チャレンジしてみたい、と感じて頂けたら嬉しいです。
自分は訪問看護に向いているのか?と疑問に思っている看護師さんに、なるほどと思ってもらえたら光栄です。
自分らしく生活したい、最後まで家で過ごしたい、そんな利用者さんを支えながら一緒に笑顔になれる、訪問看護にぜひチャレンジしてください。応援しています!
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