新人看護師の教育制度として広く普及しているプリセプターシップ(プリセプター制度)。
プリセプターシップとは、一人の先輩看護師(プリセプター)が、担当の新人看護師(プリセプティ)に対してマンツーマンで指導を行う制度です。
多くの医療機関がプリセプターシップの期間を1年間と定めています。
現在プリセプター真っ最中のみなさんや、これからプリセプターになるみなさんも、プリセプターの1年間ってどんなことをするのか気になりますよね?
プリセプティを迎えるための準備から、最後の振り返りまで、プリセプターの1年間の活動を簡単に説明していきたいと思います。
プリセプターの1年間
プリセプターになる看護師は、どの医療機関も大体の年数が決まっていると思います。
なかでも、経験年数2~4年目の看護師がプリセプターになるところが多いようです。
看護師としての経験を数年経て、そろそろプリセプターかな?と気になり始める頃、師長や教育担当看護師から、プリセプターに任命されます。
医療機関によっては、事前にプリセプター研修を受けるところもあります。
プリセプターの1~3ヶ月目
プリセプターをすることが決まったら、まず目標を立てます。
目標管理シートなどがある職場は、プリセプターとしての目標を自分の今年度の目標に組み込みます。
プリセプター経験を通じて、自分がどのように成長したいかなど、師長と面接したりするところもありますよね。
実際の目標としてはこんな例があります。
- 組織の新人教育におけるプリセプターシップの役割について理解し、新人教育計画に沿って、プリセプティの個別性をふまえた指導ができる。
- プリセプターとしての役割を通して、看護師として自己成長できる。
…などなど。
目標を立てたら、新人看護師が職場にやってくる前に、職場の新人教育マニュアルに目を通し、年間新人教育計画を把握します。
その際は、教育担当の先輩看護師や前年度のプリセプター経験者から引き継ぎで教えてもらうことが多いようです。
事前に、実際の指導をイメージし、シュミレーションしておくといいですね。
プリセプティと顔合わせ
中央研修を終え、新人看護師が職場にやってくるようになると、プリセプティと顔合わせを行います。
第一印象がお互い重要なので、緊張しているプリセプティにはこちらから優しく声をかけてあげましょう。
最初の頃は、職場の新人教育マニュアルに沿って、施設の説明や日常業務の流れ、物品の位置、電子カルテの使い方、対象となる患者さんの疾患や検査、治療について説明を行います。
新人看護師は、プリセプターや先輩看護師にシャドーイング(業務に同行して見学)を行いながら、業務を覚えていきます。
プリセプターは、プリセプティが一人で一日の業務の流れを組み立てることが出来るようになるよう指導します。
日々の振り返りを行い、採血や薬剤投与、移乗や保清など、看護技術が自立して行えるように指導を行います。
プリセプティの独り立ちと夜勤
2カ月が立つ頃には、入院施設のある医療機関は、新人看護師の夜勤も始まります。
初夜勤の前には、夜勤のオリエンテーションを行い、夜勤の業務の流れを指導します。
初夜勤はプリセプターがサポートにつくことが多いと思いますので、初夜勤後は振り返りを行い、プリセプティが夜勤をスムーズに行うことが出来るように支援します。
プリセプターは、プリセプティの成長の様子を、評価表やチェックリストなどの職場の評価ツールをなどを用いて評価します。
1カ月評価、3カ月評価などを行い、プリセプティが新人教育計画に沿って成長出来ているかを確認します。
プリセプター自身も教育担当看護師などと面接を行い、指導方法や関わり方に対しての助言をもらいます。
業務以外でも、プリセプティとの仲を深め、プリセプティが早く職場に馴染めるように、周りのスタッフと話す機会を作ってあげたり、食事などに連れていって相談に乗ってあげるプリセプターさんも多いと思います。
プリセプターの4~6ヶ月目
新人看護師も、働き始めて4~6ヵ月経つ頃には、プリセプティは一人で業務を行うことが増えていきます。
新人看護師の成長レベルに合わせて、軽症患者→重症患者や、担当する患者数も徐々に増えていきます。
最初の頃に比べ、先輩の目が離れることも多く、ミスやインシデントなどを起こしやすい時期なので、気を付けて見守りましょう。
プリセプティが書いたレポートの添削などの仕事も回ってくるかもしれませんので、看護理論などの復習をしておくといいかもしれません。
日々の指導の後には振り返りを行い、1カ月毎や節目のタイミングで評価を行います。
プリセプティが、出来ていない技術や理解が出来ていないことを把握し、指導を行います。
プリセプティが、間違って覚えていることなどは、早めに指摘して改善してあげましょう。
指導に行き詰まったり、プリセプティと思うような関係が作れず、悩むことも多い時期ですが、プリセプター研修などに参加し、他のプリセプターと悩みを共有したり、先輩看護師から指導方法などのアドバイスをもらって、自分の指導に活かしましょう。
新人看護師の業務負担も増え、インシデントなどで精神的に辛くなり、辞めたいと思いやすい時期ですので、精神的なサポートも忘れずに行っていきます。
プリセプターの7~9ヶ月目
7~9ヵ月目になると、新人看護師も出来ることがだいぶ増えてきますよね。
この時期も、ミスやインシデントが起こりやすいので、プリセプティと一緒に気を引き締めていきましょう。
出来ることが徐々に増え、せっかく自信が付き始めていたのに、ミスやインシデントが起きると、新人看護師のモチベーションがぐっと下がってしまいます。
そんな時は、しっかり相談に乗り、一緒に乗り越えられるような関わりをしていきます。
プリセプターは継続して、プリセプティの成長の様子を評価し不足部分を補う指導を行います。
プリセプターは、残りの数カ月で、どのくらいの成長を目指すのか、そのためには何が必要なのかを、プリセプティと一緒に考え、目標を設定していきましょう。
経験していない事や、自信のない技術などを経験できるよう、他のスタッフと情報共有を行い、プリセプティが技術を習得出来るような環境を作ってあげます。
プリセプターの10~12ヶ月目
1年目も終盤になってくると、新人看護師も、プリセプターを含めた教育担当看護師も焦りが出てきます。
次の新人が入ってくるのに、新人看護師がまだまだ頼りない…なんて思うプリセプターさんがほとんどだと思います。
実際に、看護師の仕事は、何年たっても学ぶことがたくさんあります。
焦って評価ツールの項目すべてを詰め込むのではなく、最低限1年目のうちに習得させておきたい部分を絞り込みそこを重点的に指導しましょう。
1年目終わるまでにプリセプティと1年間の振り返りを行います。
プリセプティが、1年間でどれくらい出来ることが増えたのかを振り返り、目標に対する評価を行い、次年度への課題を考えましょう。
プリセプター自身も、プリセプター研修などを通して、プリセプターとしての経験を通して、自分がどのように成長したかを振り返り、今後の課題を見出します。
プリセプターの振り返りレポート
プリセプター経験のまとめとして、プリセプター研修などで、プリセプターの振り返りのレポートを提出する医療機関が多いと思います。
1年間の振り返りをレポートにまとめるのって、なかなか大変ですよね。
ただでさえ忙しくて時間がない中で、どのようにレポートにまとめたらいいか考えるのは憂鬱だと思います。
プリセプター振り返りレポートの書き方
レポートを書く時は、起承転結を意識して書くとスムーズに書けます。
初めに、プリセプターになった時の気持ち(不安、期待…など)や最初の頃に立てた目標についてありのまま書きましょう。
次に、実際のエピソードを交えながら具体的に書いていきます。
- 指導してみて感じたこと
- 目標を達成するためにとった行動
- ぶつかった問題(上手く指導できなくて悩んだ、プリセプティと良い関係を築けずにいた…など)
そして、それらをどうやって乗り越えたか(先輩にアドバイスをもらった、同期と相談しあった、文献で学んだ…など)を書き、最後にその経験を自分の今後にどう活かしていくかで結びます。
すると、レポートが書きやすいと思いますし、文章はまとまり読む側もわかりやすいため、プリセプターとしての成果があったことが上司にもしっかり伝えることができるでしょう。
プリセプターが考えるべき反省点
プリセプターをしている間は、一生懸命になりすぎて、まわりが見えなくなることもあると思います。
上手くいかないことで、感情的になってしまい、後々反省することもありますよね。
プリセプティに指導をした後は、一度冷静になって自分の指導を反省してみましょう。
大切なのは、「指導したという事実」ではなく、「指導を受けて、相手が何かを得たか」ということです。
自分本位の指導にならないよう、プリセプティのことを考えた指導をするよう心がけましょう。
プリセプターの1年間のまとめ
プリセプターの1年間について、少しイメージ出来たでしょうか?
実際は、医療機関によって細かな部分は違ってくると思います。
終わってみると、プリセプターとしての1年間はあっという間です。
指導と評価に追われる毎日になりますが、プリセプティと一緒に成長していけたらいいですね。
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