新人看護師として働きはじめたフレッシュさんも、経験を重ねたベテラン看護師も、必ず悩むのが「パワハラ問題」です。
看護師の仕事は、患者さん相手、正確な技術力、観察力が要求される緊張度の高い仕事と言えます。仕事自体の緊張、身体的な疲労だけでも大変なのに、パワハラ問題の悩みが加わるととんでもないことになります。
パワハラに負けて、本来の能力を発揮できずに委縮してしまったり、憂鬱な気持ちを抱えてプライベートも楽しめなくなったり、頭痛や胃痛などの症状に悩まされていませんか?
パワハラを受けていると感じている看護師さん、パワハラ問題で悩んでいる看護師さん、パワハラで心身の不調を感じている看護師さん達を助けたい!そんな思いを込めてこの記事を書いています。
ぜひ最後まで読んで下さい。
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看護師免許を取った後が修行、指導とパワハラは紙一重
看護師国家試験をパスした瞬間「看護師」と名乗れます。
しかし、現実的な看護技術、アセスメント能力、観察力、文書作成力など実務に必要な知識・技術を習得するにはそれなりの時間がかかります。学校では教えてくれなかったことは、OJTという現場教育で働きながら習得していきます。
看護師の現場教育はまるで修行です。指導者は、同じような厳しい修行を経験済のベテラン看護師達です。熱意ある指導は、一歩間違えればパワハラです。指導とパワハラは紙一重と言えます。
業務外に与えられるレポート作成の課題、終業後に行われる長時間の反省会、できなかったことに対する叱責や冷たい態度、時には無視されたり、挨拶を返してもらえなかったり。
当事者は、どこまでが指導でどこからがパワハラか。分からなくなってしまいます。
一つ確実に言えることがあります。
気持ちが辛く感じたり、胸がギュッとなるようなしんどさ、モヤモヤする感じ、なにかオカシイと思ったら、パワハラを疑って間違いない、ということです。
良く看護師になれたね、という言葉の暴力
私自身の経験をお話ししましょう。
私は、看護師国家試験に合格し、とある総合病院の外科病棟に就職しました。同期看護師は3人、その中で最も落ちこぼれでした。
看護学校の実習病院でもあったため、学生時代の成績や実習態度も知っている訳です。髪は茶髪、外してはいましたがピアス穴も開けていました、お世辞にも真面目な学生とは思われていなかったでしょう。
就職して看護師として働き始めてから、師長、先輩看護師に何回も何回も言われたこと。
- 「よく看護師になれたね」
- 「国家試験まぐれじゃないの」
言葉を投げつける方は、悪気などないというでしょう。しかし、この言葉は「あんたが看護師になれるなんておかしい」「看護師に向いてない、辞めろ」と言われている事と一緒です。
教育、指導名目の長いお説教の最後に、ため息交じりに投げつけられるこの言葉は、看護師として頑張りたいという私の熱意にグサリと杭を打ち込むような、言葉の暴力でした。
看護師歴20年を経て振り返ると、それはまさに「パワハラを受けている状態」でした。リアルタイムでは、傷つき、悩んでもどうすることも出来なかったのです。同期に相談してもバカにされるかもと、怖くて言えず一人で悩んでいました。
今なら、その時の自分を「看護師国家試験に合格したのは立派だよ、頑張って!」と思い切り励ましたいです。
早くパワハラに気づいて欲しい、相談の重要性とは
パワハラ問題の厄介な所は、パワハラを受けている時は気が付きにくい。ということです。
先の、私の事例でも「看護師辞めろ」「それでも看護師か」という言葉の暴力を受けている時は、私の出来が悪いから怒られてもしょうがないのかな、看護師になって間違いだったのかな、と悩んでいました。
上司、先輩、同僚看護師、医師など自分を取り巻く人間関係に悩みがあれば、絶対に第三者に相談して欲しいと思います。相談することによって「それはパワハラだよ」と指摘され、解決策が見えることがあるでしょう。
人間関係の悩みを抱え込むことはパワハラ問題の発覚を遅らせ、事態をこじらせることに繋がります。
人事考課の評価、ボーナスの査定を振りかざすパワハラ病院
事あるごとに「人事考課に響くよ」「ボーナスから引く」と看護師を脅している病院もあるようです。看護師の仕事は、販売や営業と違い、自ら患者を呼び込んで病院収益をアップさせるものではありません。そのため、看護師の仕事はいくら努力しても、ハッキリとした収益性に結びつかないという難しさがあります。
とある病院事務長は、看護師は人件費の金食い虫!無能な看護師にボーナスなど不要!と公言し憚らないそうです。看護師や事務員はエレベーターを使うことすら禁止、休憩室はなく昼休憩はロッカールームで過ごすとのことです。
人事考課の評価、ボーナスの査定を盾にして理不尽な要求を押し付けることは、パワハラ以外の何物でもありません。
看護師に仕事をさせないことも立派なパワハラ
仕事をさせない、仕事を与えない系のパワハラは、看護師業界に多い事を知っていますか?忙しい看護業務で、仕事をせずにいられるはずないでしょ?とギモンに思われた方もいるでしょう。
事例としては、前述した私の体験談からです。
私は、なかなか指導担当先輩看護師の納得いく成果が出せず、何度も課題をやり直しさせられていました。数か月経過したころには、同期看護師は受け持ち患者さんを持たせてもらい、末梢静脈路確保などの看護技術を習得していきました。私は「あの子は出来ないだろうから、看護助手業務をやらせながら基本的なことを勉強してもらおう」ということになっていました。
看護師として就職し、勉強したい気持ちがあるのに、看護師としての仕事が与えられない。こんなに辛いことがあるでしょうか。受け持ち患者さんを持たせてもらえず、看護助手業務をやらされるもどかしさは計り知れないストレスです。
これは上司からの間接的な退職勧告、立派なパワハラです。実際私はその病院を退職し、新人教育を継続してくれる別の病院に再就職しました。
新人看護師に限ったことではなく、看護師らしい仕事を割り当てなかったり、排せつ介助やお風呂介助などの重労働を特定の看護師だけに割り当てることもパワハラです。
非常勤だから、パートだからという差別はパワハラ
働き方は多様化しています。これは医療、看護業界に限ったことではなく全国的な傾向です。むしろ医療、看護業界は遅れていると言って過言ありません。
- 正社員かパート職員か
- 正社員か扶養控除内の非常勤職員か
- 直接雇用社員か派遣社員か
他にもいろいろありますね。
医療、看護業界は正社員至上主義です。極端に言うと、正社員の方が偉い、パート・非常勤・派遣社員は正社員の言うことを聞くべき、と思い込んでいる人が多いのです。おかしな話ですね。雇用(雇い主)は病院やクリニックなのですから、働き方が違っても同じ社員です。
パート、非常勤、派遣社員は正社員より能力が低い、という思い込みは間違いです。
正社員看護師がパート看護師に「パートは正社員の指示通りにしろ」「パートのくせに意見するな」「パートのくせに偉そうに」「パートは正社員が出したゴミを片づけろ」といった言葉や態度を投げつけることは、パワハラです。正社員同士なら笑って済ませるようなミスを、パートだからと厳しく叱責したり、解雇させると脅すのは言語道断です。
あなたは、多様な働き方を歓迎しない、共に尊重しあわない職場に魅力を感じますか?
上司や先輩看護師にミスを押し付けられるのはパワハラ
看護師が最も恐れているものは、ミスです。
指示の聞き間違いや、間違った方法などのミスは、医療事故・医療過誤に繋がっていきます。患者さんへの実害があれば責任問題は免れません。看護師は誰しも、業務の中でミスを犯さないよう細心の注意を払っていると思います。
上司や先輩にミスを押し付けられた、という経験はありませんか?
または、指示されたことを実行したにも関わらず「指示していない」と嘘をつかれたことはありませんか?
看護師のベテランだからミスを犯さないということは絶対ありません。誰しもミスを犯さないように気を付けています。そして万が一ミスを犯しても、認めたくないという弱い心を持っています。
私が経験したパワハラ事例を紹介しましょう。
ミスを押し付けられるパワハラ事例を紹介
勤務表が出されたので、自分の勤務をメモして帰宅しました。公休になっている日、自宅でくつろいでいると病院からの電話です。休みの日に病院から電話がかかってくるというだけでも、心臓が飛び出しそうですね。
先輩からで「あんた日勤なのに、なんで家にいるの!早く出勤しなさい」と怒っています。オカシイなあ、と思いながらも出勤すると勤務表が書き換えられて公休日が変更になっているではありませんか。
確かに自分が確認した時は公休になっており、変更を知らされなかった、と説明しました。
しかし、勤務変更を伝達する係の看護主任は「私は、口頭で伝えたけどね、あんたがぼーっとしてたんじゃないの?」とみんなの前で言うではありませんか!勤務変更を伝え忘れた主任看護師のミスを押し付けられ、他のメンバーからは白い目で見られるし、休みは無くなるし、最悪です。
この様なミスの押し付けは、本当に許せないですね。
点滴ミス、誤薬など重大な医療事故に関連したミスの押し付けは本当に恐ろしいです。
例えば、先輩看護師に「この薬、315号室の佐藤さんに今飲ませて」と口頭で指示されて実行したところ、その薬は「320号室の佐藤さん」に飲ませるべきものだったため誤薬が起こってしまいました。
事実確認の際、先輩看護師から「私は320号の佐藤さんと確かに指示しました」と言われてしまったらどうでしょうか。指示された後輩看護師は、いくら言い訳をしても「カルテで確認しなかったのか」「佐藤さんが2人いることを知らなかったのか」「何の薬か分かっていたのか」など厳しい追及は免れないでしょう。
部下や後輩看護師にミスを押し付けること、嘘をついて自分のミスをごまかすことはパワハラです。
パワハラを受けているかもと感じたらやるべきこと
パワハラを受けているかどうか、はかなり主観的な判断となります。
「よく看護師になれたね」という言葉も、信頼し合っている先輩、後輩看護師の間柄であれば、ほんの冗談でありコミュニケーションの言葉、誰も傷つくことはありません。仕事の遅さを皆の前で激しく叱責されたあと、ため息交じりに同じ言葉を言われたとしたら、侮蔑の言葉となりますね。
起こっていることがパワハラかどうか、第三者による客観的な判断のために必要なことについて解説します。
事実を記録する
パワハラを受けている、パワハラを受けているかもと感じたら、事実を記録してください。会話を録音することだけが、事実の記録ではありません。〇月〇日、上司の○○氏に30分にわたる叱責を受けて「よく看護師になれたな」と冷たく言われた。という日記形式で構いません。その時の自分の感情も書き足しておきましょう。
相談する
勤務先にハラスメント相談窓口がある場合、相談しましょう。相談したという事実を残しておくことが大切です。
受診する
体調不良、不眠、手の震え、頭痛、生理不順、食欲不振や痩せ、などの症状がある場合は医療機関を受診しましょう。
パワハラに関連する症状と思うときは、そのことを医師に伝えましょう。
労働基準監督局に申し出る
これは、かなり最終的な手段ですが、仕事に通うのが辛すぎたり、理不尽な退職勧告されている場合は仕方ないでしょう。この場合、事実の記録や、診断書が必要になる場合があります。まずは、管轄の労働基準監督局に相談してください。
パワハラに耐えすぎないことも大事、転職も視野にいれて
パワハラはする方が悪い。これは絶対です。しかし、一番最初に述べたように看護師の指導は度を越した熱心さがパワハラ的になってしまうこともあります。自分が悪い、パワハラをしているという自覚がないことが多いです。
人は、自分の考えと行動を変えることは出来ても、人を変えることは出来ません。パワハラをしている側の意識を変えることは、ほとんど不可能です。
理不尽な要求、叱責、無視、仕事を与えない、ミスを押し付ける、などの酷いパワハラ行為に耐え続けると、看護師としての自信や人としての魅力が半減してしまいます。
パワハラをされている環境から抜け出すことは賢明な判断です。つまり、今より条件の良い職場への転職です。パワハラに耐えて、心身の健康を害する前に、あなたを必要とする職場にはばたく方が有意義でしょう。看護師はそれが可能です。
さいごに
ただでさえ過酷な現場で働く看護師が、パワハラを受けて疲れ切ってしまうのは残念すぎます。
病院、施設、在宅どこでも、看護師を必要としています。看護師は社会に必要とされているのです。パワハラ問題で看護の世界から離れてしまわないでください。訴えることは訴えた上で、環境をリフレッシュし、一緒に看護師として働いてください。
看護師歴20年以上、そして数々のパワハラを受けて来た筆者からのお願いです。一緒に頑張りましょう。パワハラに負けないで!
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