看護師の新人教育の現場で、必ずと言っていいほどよく聞く「プリセプター」。
- プリセプターになる
- プリセプターについてもらう
- プリセプター研修
…などなど、耳にしたことがある人もいるのでは?
新人教育にプリセプターシップ(プリセプター制度)を導入している医療機関は多くあると思います。
では、プリセプターとはいったいどういうものなのでしょうか。
これからプリセプターとして働く看護師さんやプリセプターについてもらう新人看護師さん、改めてプリセプターの基本をおさらいしたい先輩看護師さんも、ここで一緒に再確認してみましょう。
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プリセプターシップ(プリセプター制度)とは?
現在、多くの医療機関で看護師の新人教育に、「プリセプターシップ(プリセプター制度)」が採用されています。
プリセプターシップは、1980年代に、新人看護師のリアリティーショック(学校で学んだことと、実際の職場の現実の差、理想の自分と現実の自分の差による精神的ショック)をやわらげ、新人看護師の離職率を低下させることを目的に、アメリカから導入された制度です。
プリセプターシップの定義は、ある一定期間、一人の先輩看護師が、担当の新人看護師に対してマンツーマンで指導を行う制度とされています。
実際のプリセプターシップの体制は、病院や病棟によって様々な方法がとられています。
プリセプターの期間や人数、経験年数も様々で、経験年数2~4年目の若手看護師がプリセプターとなる場合や、経験年数5年目以上の看護師が担当する場合もあります。
経験年数の少ない若手看護師がプリセプターとなる場合は、プリセプターの相談役として、「エルダー」や「シニアプリセプター」などと呼ばれる教育担当の先輩看護師がつくこともあります。
この「エルダー」や「シニアプリセプター」の役割も医療機関によって様々な体制がとられています。
プリセプター(Preceptor)ってどんな意味?
プリセプターという言葉の語源は、英語のPreceptor=「教師、指導者、(医学生の)指導教官」からきています。
プリセプターは、ある一定期間、プリセプティ(Preceptee)である新人看護師の教育を担当し、マンツーマンで指導を行います。
ちなみに、プリセプティは英語でPrecepteeと表します。
この語末のeeというのは「(ある行為を)受ける人」という意味を持ち、Preceptor=指導する人に対し、Preceptee=指導される人ということになります。
プリセプター、プリセプティを英語で使用することは、めったにありませんが、語源を質問された時に答えられたら、それだけで「できる先輩!」と思われるでしょう(笑)。
新人教育現場におけるプリセプターシップの役割とは?
それでは実際の新人教育におけるプリセプターシップの役割についてみていきましょう。
- 新人看護師(プリセプティ)の教育
- 新人看護師のリアリティーショックの緩和と離職率低下
- プリセプター自身の教育スキルアップ
大きく言うとこの3つです。1つずつ解説していきましょう。
新人看護師(プリセプティ)の教育
まず第一に、定義にもあるようにプリセプターシップの重要な役割は、新人看護師(プリセプティ)の教育です。
「教育」とだけ聞くと、漠然としていて、実際何を教えたらいいの?と思う人もたくさんいると思います。
プリセプターとなる看護師は、だいたいが経験年数2~4年目までの若手看護師です。
日々の業務に追われ、知識や看護技術もまだまだ自信のない頃でしょう。
そんなプリセプターが指導することは、看護師として、職場のメンバーとして仕事をする上での「基礎」の部分です。
基礎とは、「職場のマニュアルに沿って看護業務をこなせるようになること」です。
一日の業務の流れやカルテの書き方、検温や採血などの日々の看護技術、行われる検査や治療方法についてを職場の新人教育のマニュアルに沿って、プリセプティに指導します。
プリセプティが一人で一日の業務の流れを組み立て、担当する患者さんの状態をアセスメントし、日々の看護業務が出来るようになるよう指導することがプリセプターの役割です。
プリセプターだけが新人教育を行うのではありませんので、わからないことや自信のないことは、もっと上の先輩看護師に相談しましょう。
プリセプターは、新人看護師と他の先輩看護師の橋渡し役となって、みんなで新人教育を行っていきます。
新人看護師のリアリティーショックの緩和と離職率低下
新人の教育と同じくらい重要なプリセプターシップの役割は、新人のリアリティーショックの緩和と離職率の低下です。
新人看護師のほとんどが、学校で学んだことと、実際の職場で経験することのギャップや、思い描いていた看護師としての自分と現実の自分の違いなどにより、精神的ショックを受けます。
学校で学ぶことは、看護の基礎や理論的なことであり、実際に行われる看護は、その職場環境に合わせて、使いやすく応用されたものなので、違いがあるのは当たり前です。
新人看護師は覚えることも多く、わからないことや上手くできないこともたくさんあり、劣等感を感じることもあるでしょう。
また、人と関わる仕事なので、必ずしも正解が一つではなく、嫌な思いや悲しい思いを感じることも多くあります。
そんな中で、思い描いていた看護師の仕事と違うことによる失望感や劣等感、対人関係による精神的ストレスにより、1年目のうちに仕事を辞めてしまう看護師は、少なくありません。
そこで、新人看護師を精神的に支えるという役割をプリセプターが持っているのです。
実際、多くの医療機関でプリセプターとなる看護師は、経験年数2~4年目の若手看護師です。
数年前には共に同じような悩みを抱えていた、少し年上のお姉さん、お兄さんといった立ち位置で、新人看護師が気軽に相談出来る相手となることで、新人看護師のリアリティショックを緩和し、離職率の低下に役立っています。
プリセプター自身の教育スキルアップ
プリセプターシップは、単なる新人教育としての制度だけではありません。
プリセプターとなる看護師自身の教育スキルの向上にもつながります。
看護師として年数を重ねるごとに、後輩に指導する機会は増えていきます。
プリセプターとしての経験を通して、「教育」を学ぶことにより、自身のキャリアアップにも役立つことでしょう。
また、プリセプティに指導していく上で、正しい知識や、看護技術の正しい手順を再確認することで、プリセプター自身、看護師としてさらなるスキル向上にもつながります。
日々の忙しい業務の中で、曖昧になっていたことなど、一度立ち止まって確認するいい機会かもしれません。
プリセプターシップのメリット
プリセプターシップは新人教育にとって欠かせない制度ですが、どんな制度にも当然メリット・デメリットがあります。
ではどんなメリット・デメリットがあるのか、みていきましょう。まずはメリットから。
プリセプターサイドのメリット
①プリセプター自身の成長につながる
プリセプターシップの役割の項でも少し伝えましたが、プリセプターとなり、指導役となることで、プリセプター自身の成長につながります。
指導の方法を学び、試行錯誤することで教育に対する知識と技術を得られ、看護の知識と技術の再確認を行うことで看護師としての成長が期待できます。
②キャリアアップ
看護師として働く上で、キャリアアップを目指している人も多いと思います。キャリアアップをしていくためには、各研修に参加し、特定の経験が必要となってきますが、その中でもプリセプターを経験していることはプラスに働きます。
転職の際にも、プリセプター経験の有無は高確率で質問されますので、今後のキャリアプランを考える上でも、プリセプター経験はメリットになるでしょう。
プリセプティサイドのメリット
①マンツーマンで指導してもらえる
新人看護師は、初めての職場で初対面のスタッフだらけだと思います。人数の多い職場だと、最初は先輩の名前を覚えるのも大変ですよね。
その中で、わからないことを誰に質問していいのかもわからないと思います。忙しそうにしている先輩をつかまえて質問する勇気もなかなかないですよね。
プリセプターは、その新人看護師にマンツーマンでついてくれる指導役なので、気兼ねなく質問でき、時間を割いて指導してもらうことができます。
②なんでも相談できる先輩ができる
新人看護師にはたくさんの悩みがあります。
仕事のこと、職場の人間関係のこと、患者さんとの人間関係のこと、仕事とプライベートとの両立について…などなど。同期や友達、家族に相談できないことも、同じような経験をしてきた先輩看護師なら、よいアドバイスをもらえるかもしれませんよね。
仕事関係の悩みであれば、プリセプターに相談することで、悩みを生む環境自体を変えてもらうこともできるでしょう。
③職場の人間関係に馴染めるようにサポート役となってもらえる
初めから、他の先輩看護師や医師、コメディカルのスタッフとコミュニケーションをとるのは難しいと思います。
プリセプターはそんな新人看護師と他のスタッフとの間の橋渡し役となり、新人看護師が、早く職場に馴染めるようにサポートしてくれます。
プリセプターシップのデメリット
続いて、デメリットの説明です。
プリセプターサイドのデメリット
①責任の重圧
プリセプターになると、誰もが感じるのが、プリセプティに関する責任の重さだと思います。
プリセプティが成長しないのは自分の指導の仕方が悪いのではないかと悩んだり、プリセプティのミスを自分の責任のように感じたり…。
自分のプリセプティが、他の新人看護師達よりも成長していないように感じたり、あらゆる「責任」を重く感じてしまうかもしれません。
しかし、プリセプターがひとりで新人教育をしているわけではないので、あまり責任に思い悩む必要はありません。
②業務が増えることによる負担
看護師の毎日の業務、忙しいですよね。
業務以外にも、研修会や研究など、自分のことだけでもやることが山積みなのに、プリセプターとしての仕事も増えてくると、いっぱいいっぱいになってしまうプリセプ
ターさんも多いと思います。
自分に余裕がない時に、人のことまで気に掛けるのは難しいですよね。
まずは、やるべきことに優先順位をつけ、一人ですべてを抱え込まず、プリセプター自身がパンクしてしまわないようにすることが大切です。
③プリセプティと他のスタッフとの間で板挟みになる
私自身も経験がありますが、プリセプターは、同僚や先輩看護師からプリセプティの事に関して、たくさん意見を言われると思います。
「(プリセプティ)さん、○○が出来てなかったから指導しといてね。」や「○○についてちゃんと説明してるの?」などなど。
プリセプティのミスを代わりに謝ったり、とっても負担だと思います。
逆に、プリセプティから職場の人間関係について相談されることもありますよね。
プリセプターは、橋渡し役として、他のスタッフからもプリセプティに指導してもらえるような環境作りを行い、プリセプティがひとり立ちできるよう努めましょう。
プリセプティサイドのデメリット
①ミスをした時に、プリセプターに対して申し訳なく感じる
自分にマンツーマンでついてくれる先輩がいるのは、とても頼もしいことです。
しかし、自分がミスをしてしまった時や、なかなか思うようにできない時、ちょっとプリセプターの顔色を窺ってしまいますよね。
私自身も、自分のせいでプリセプターの負担を増やしているように感じ、素直に頼れなかった時期もありました。
でも、それがプリセプターの仕事なので、遠慮せず、わからなかったことや出来なかったことはしっかり指導してもらって、成長するようにしましょう。
②プリセプターと合わない
これはお互い人間同士なので、性格の合う・合わないがあるのは仕方ありません。
どうしても上手くいかない場合は、師長や教育担当の先輩看護師に相談し、第三者に間に入ってもらうのもひとつの手です。
プリセプターシップの今後
以上のように、プリセプターシップにはメリット・デメリットがあります。
たくさんの看護師が、日々試行錯誤しながら新人教育を行っています。
プリセプターシップのほかにも、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)の導入やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の活用など、看護の現場も多様化してきています。
プリセプターシップも、様々な制度と組み合わせられながら、柔軟に変化し、今後も多くの医療機関で新人看護師の教育に関わっていくでしょう。
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