看護師になったからには自分の思い通りの働き方を選びたいものですよね。
しかし、看護師国家資格をもつ新卒者の就職先は9割が病院です。
「新卒でクリニックへ勤めたい」という考えの方が少なくなるのはなぜでしょうか。
実習で知る機会が少なかったり、看護師としてスキルを磨き看護研究の実績が“優秀”とされたり、病院への就職が常識化される学生時代が原因の可能性があります。
そのため、経験を積んでからでないと、クリニックでの患者対応や事務作業、医療補助はできないというイメージで不安感を感じるのでしょうね。
本当に、新卒者にはクリニック勤めはあり得ないのでしょうか。
今回は、色々な意見を参考にして、「新卒者のクリニックへの就職」について多角的に切り込んでみました。
新卒看護師にクリニックの仕事はできるのか?
新卒看護師がクリニックで働く上で気になるのは、仕事内容、安心できるサポートはあるものなのか、ですよね。
即戦力、コミュニケーション能力を必要とするクリニックもあれば、新卒者を採用し教育体制を作っているところもあります。
新卒者を採用しようというのであれば、サポート体制があるはずですので、最初から独り立ちということはほぼあり得ないでしょう。
そして、仕事内容は、医療的処置に関しては病院とクリニックはほぼ共通です。
- 問診
- バイタル測定
- 採血
- 点滴処置
- 検査説明
これに加えて、クリニックでは人が少ないからこそ、雑務、事務の仕事を行う必要があります。
- 医療器具の洗浄や消毒
- タオルや衣類の洗濯
- クリニック内の掃除
- 診療ベッドの準備
- 備品の発注
以上のようなことを日勤で分担する必要があるので、予想以上に忙しいのかもしれませんね。
新卒看護師は注意!給料や待遇・福利厚生は?
新卒でなくともなのですが、クリニックの規模によっては、福利厚生が心配な点があります。
厚生年金の適応ではなく、金額の高い国民年金に加入せざるを得なく、家計にダメージを与える可能性があります。
勤務時間のしばりとともに、年金の種類がどうなっているのか雇用条件を注意してみましょう。
退職金も同様で、規模が小さいクリニックでは、短期間の雇用では退職金が全くでないところや出ても少額という場合があります。
このように、給料がよくても、福利厚生が整っていなければ差し引かれる額が大きく、将来的な打撃が大きいので、クリニックを選ぶ際にはお気をつけください。
クリニックの仕事の魅力【メリット】【デメリット】まとめ
様々なクリニックで働く看護師の本音を項目に分けて以下にまとめてみました。
クリニックの仕事のメリット
- 夜勤、急変がないので、体力的・精神的に楽
- 暇なくらい仕事が楽
- 注射や点滴、採血がないので即戦力的なスキルは不要
クリニックの仕事のデメリット
- 掃除などの雑用が多い
- 院長の考え・方針により業務形態が急に変わる
- スタッフの人数が絶対的に少ないので時間帯によって忙しい時には医療業務だけでなく事務作業が並行する為、てんやわんやする
病院のような救急対応が少なく、基本的には落ち着いた環境のため、余裕をもって仕事を覚えられそうですが、臨機応変な対応ができる度胸は必要そうですね。
クリニックの業務形態【メリット】【デメリット】まとめ
業務形態メリット
- 残業が少ない
- 昼休みが長いので帰って昼寝できた
- 日勤のみで午前診・午後診だから家に1回帰れる余裕もある
- 子供の育児と並行して仕事ができた
業務形態デメリット
- 人が少ないのでいきなりは休みにくい
休憩がきちんと取れて、残業がないのは、残業の多い病院と比べると、ワークライフバランスを良好に保てる嬉しい点ですよね。
クリニックの人間関係【メリット】【デメリット】まとめ
人間関係メリット
- 人数が少ない分、チームワークよく働ける
- 患者さん自体が、軽傷であり、毎週受診されるので顔なじみになり覚えやすい
人間関係デメリット
- 苦手なスタッフができると気まずい
- 院長と院長家族への気遣いが必要
- 待ち時間が長いと怒る患者への対応が必要
やはり、コミュニティが小さいために、関係づくりを丁寧に行わないと、関係性を悪くして居心地を悪くするリスクは高いようですね。
そして、どこの職場でも同じように、同僚や患者に対しての気遣いは看護師としても社会人としても大事なのです。
クリニックの給料面【メリット】【デメリット】まとめ
給料面のメリット
- 仕事量のわりに給料がいい
- 給料が夜勤をしているより高い場合がある
給料面のデメリット
- 退職金制度がなかった
- 忌引で休んだらボーナスが減っていた
給料自体はよくても、賞与、退職金などのプラスαな収入は期待しない方がよさそうです。
そうなると、堅実に生活をしておかなければ、所得税や住民税などで2年目以降や、退職の翌年などに痛い目に合う可能性がありますね。
クリニックの休日休暇【メリット】【デメリット】まとめ
休日休暇のメリット
- 夏休み、年末年始の休みが長い 休みの融通がきく
- 週に1回は休診日があり日曜は必ず休み
休日休暇のデメリット
- 年休・忌引なし
クリニックですので、入院施設がなければ、平日営業が通常です。
年休などはない代わりに、カレンダー通りの休みにより、リフレッシュをしっかりできるのはうれしいですね。
新卒看護師がクリニック就職後につかめるものとは?

なにがあかんのん?
さて、はじめに述べましたが、新卒者がクリニック勤めをすることが好まれない傾向があります。
“ゆとり看護師”と言われるような、クリニック勤務が“甘え”と言われることもあります。
しかし、ワークライフバランスを大切にして、心身ともに健康な生活を得られる働き方をすることの何が甘えなのでしょうか?
そこで、病院とクリニックでの仕事で得られるであろう人生の糧を比較してみましょう。
新卒看護師が病院勤務で得られるもの

病院勤務の方がいいわよ!
病院で看護師を始めると、看護技術のほかに学術的な知識の取得が周囲の様々な人にサポートされながら行えます。
相談しやすい人と出会いやすく、丁寧な研修サポートの元、看護を深めることが可能ですね。
また、病棟特有の専門分野への知識の高まりとともに、やりがいを見つけやすくなります。
認定看護師や専門看護師を目指す志の高い人は病院の方が適していますね。
しかし、もしかしたらその知識や技術の代償として自分の精神や体力は削られるかもしれません。
残業が多かったり、休みなのにレポート作成をしたりと、持ち帰る仕事量が多いからです。
そうは言っても、削られた精神や体力が元に戻らないかというと、分厚く図太くなって元より強くなっている未来が待っていることもありますけどね。
厳しい環境下の方が、芯の強い人間になれるのかもしれません。
新卒看護師がクリニック勤務で得られるもの

こじんまりしてて良いよ!
仕事を覚える大変さは病院と変わりないかもしれませんが、落ち着いた環境下である可能性が高いです。
そして、地域住民とのかかわりが多く、それに伴うやりがいを感じ喜びを得られることが多いでしょう。
メリットでも紹介したように、時間的余裕と精神的余裕により、仕事への嫌な気持ちがなく健康的な生活を続けられそうですね。
しかし、もしかしたら技術・知識・経験不足で他の場所へ転職がしづらくなるかもしれません。
クリニック勤めが新卒者に薦められない理由のひとつですね。
そうは言っても、クリニックから転職したくなければ、問題にもならない未来が待っていることもあります。
新卒者でクリニック勤めが今後は多くなる!?

今、クリニックがアツイ!
これまで新卒者の1割以下だったクリニックへの就職が、もしかしたら今後は多くなるかもしれません。
近年、長生きする方が多くなり、将来的に重度な介護医療が必要な人が多くなることや、少子高齢化により、介護医療を担う世代が少ないことが問題視されています。
健康寿命を延ばすためにも、若い世代の負担を軽くするためにも、入院をするような事態を避ける取り組みが国ぐるみで行われています。
訪問看護が増加しているのもそのためと言えますね。(訪問看護は新卒には難しいですが)
それは、療養型の廃止や地域包括ケア病棟の増設を行うことと、地域医療の活性化です。
つまり、地域施設による健康への予防的な介入を行わないと、介護医療を要する高齢者の行き場がなくなる状況になっているのです。
その点から見ると、地域医療の活性化を担うクリニックでのケアを充足できる人材を増やすことが必要となるので斡旋する学校もあるかもしれませんね。
このように、社会の動きと連動して、今後は新卒でクリニック就職がもっと身近になるでしょう。
おわりに

看護師の価値観は多様化している!
どのような現場であっても、経験を積むことにより得られるものは一長一短です。
病院で、看護スキルや看護研究の思考を磨いて専門性をより高めて、活躍の場を広げることは大切なことです。
一方、クリニックなどの地域施設で、健康への予防的介入により人々の生活を守る人材を育成することも、活躍の場を広げる大切なことです。
社会の動きに応じて、地域施設での人材育成に力を入れる方向であれば、スキルを磨けないと思われがちなクリニックでも、看護師として成長できる機会は大いに期待できます。
そして、看護師という仕事に対する価値観は多様化しています。
「看護のスキルアップが最も大事」という考え方のみでは、ワークライフバランスをとれずに心身をこわす危険性があります。
今後は、心身に負担がかからない働きやすい職場の選択肢が広がり、看護師の仕事に対する価値観の多様化に、より合うようになるでしょう。
自分にとって働きやすい職場であるのか情報収集を行い、安心して就職できるクリニックに出会えるように活動してみましょう。
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