大学病院ってどうなの?
大学病院は勉強会や看護研究が大変?
看護師の皆さん、大学病院で働くことについてどんなイメージを持っていますでしょうか。
看護学生で卒業後の進路考え中の方、現在看護師として働きながら転職を考えている方、ブランクがあり再就職を考えている方、大学病院、国立病院、民間病院で勤務したことのある筆者が、看護師が大学病院で働くメリット、デメリットについてリアルに解説していきます。
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最初の就職先は大学病院が良いと言われる理由とは
看護師として働き始めてからの数年はとても大切な時期です。
看護師国家試験に合格してから数年間は、学生の時同様に勉強しながら知識を身に着けていきます。臨床のアセスメント能力を高め、看護技術を身に着けることと同じくらい大切なことがあります。
それは、看護師としての思考回路・問題解決過程の形成です。
ちょっと難しい言葉になってしまいました。かみ砕いていうと、リスクに対する対応力、患者さんが抱える問題解決を看護師として解決する力、理論に基づいた倫理観です。これは、座学だけでは絶対に身に着けることができません。
クリニカルラダー方式などの段階的な経年別研修、専任の教育担当者による評価、各種勉強会を受けられる大学病院は卒後教育の場として最適だと感じます。
看護師としての土台をしっかり形成するために、大学病院で卒後教育を受けることは大変意義があります。民間病院で「大学病院で教育を受けた看護師は考え方がしっかりしている」と言われている理由です。
大学病院では点滴の看護技術が身に付きにくい
戦中、戦後の昔から「点滴や注射は看護師がするもの」と思われていると思います。
実は、平成14年に厚生労働省が法解釈を発表する前までは、静脈注射は医師が行うものとされていました。一般病院で看護師が点滴、注射を行っていた事実は「医師の監視下において」を過大解釈したものでした。大学病院、国公立病院の多くは、医師・研修医が点滴や注射を行ってきました。
現在、多くの大学病院では一定の研修を受けた看護師が点滴や注射を担当しているようです。とはいえ、大学病院は医師教育機関でもあるため、採血、点滴、注射、末梢静脈路確保などは研修医も実施しています。このため、民間病院、民間クリニックと比較すると、看護師が注射・点滴を実施する機会はかなり少ないと思います。
大学病院の看護師は注射が下手、というイメージが定着していることは事実です。
大学病院では専門性の高い看護を実践できる
大学病院では対象となる患者さんが限定されます。
大学病院で病棟に配属されたとしましょう。循環器内科病棟に配属されれば、循環器内科疾患の患者さんを看護します。代謝内科病棟に配属されれば、内分泌疾患の患者さんを看護します。循環器内科病棟で、癌や胃潰瘍の患者さんを看ることはありません。
また、ごく軽症な患者さんは大学病院入院の対象にはならないため、ある程度重症、特定疾患、難病の患者さんを看ることになります。大学病院では専門性の高い看護を実践できると言えるでしょう。
大学病院は給料、待遇が良いことが多い
民間病院にもいろいろな規模がありますが、一般的に大学病院は給与が高めです。
採用初年度から年休20日あり、時間外勤務手当が確実に支払われる、育児休暇や介護休暇が取りやすい、院内保育園が整備されているなど福利厚生面も優遇されていることが多いと言えます。大学病院は、公務員に近い福利厚生が受けられることが特徴です。
大学病院の看護師は使えない、と思われていることも
残念ながら、大学病院で勉強しながら働いてきた看護師は、民間病院では「使えない」と思われていることがあります。
大学病院出身の看護師は「頭でっかちで技術が無い」と言われてしまうことがあるのです。
民間病院、民間クリニックは医療設備が不十分、人的体制が整備されていないこともあります。科学的根拠に基づいたことばかりではないのが実情です。
大学病院から民間病院、民間クリニックに転職した看護師の中には、「こんなことは間違っている」と先輩看護師に指摘、関係性が悪化し、現場になじめず直ぐに辞めてしまう人がいるのも事実です。
現状の問題点を指摘し、反発する反面、点滴や採血の技術不足で患者さんからクレームが出てしまうと「大学病院から転職する看護師は使えない」という印象を抱かれてしまう危険性があります。
大学病院では研修や勉強会が無料で受けられる
大学病院では医師、研修医を交えた研修や勉強会が盛んに開催されます。
医療安全に関すること、薬剤情報、最新の感染対策、医療に関する法律改正について、など様々です。大学の図書館で医学系雑誌や資料が閲覧できるのも魅力です。
大学病院で働いている頃は「また勉強会か、今日は早く帰りたい」とか思った時もありますが、民間病院に就職して、無料で勉強できる環境がいかに貴重かを痛感しました。
民間病院では院内勉強会の充実度は施設によってかなり差があります。任意の院外研修は、1回1万円~3万円程かかりますし、休み希望を取得して参加する必要があります。民間病院でも、院外研修に助成金を出してくれるところもありますが、限界があります。
豊富な教育、しかも無料。これは大学病院の大きな強みだと思います。
大学病院が向いている看護師のタイプは
大学病院で働くことに向いているのはどんな看護師でしょうか。
大学病院の機能、教育体制を考えると、特定の分野に興味があり専門性を高めたい看護師、看護研究に力を入れたい看護師、認定看護師を目指したい看護師など、看護師として目指す目標があるタイプだと思います。
大学病院の看護師は民間病院の看護師に比べて、真面目で頭が良いという訳ではありません。
大学病院は、特定の分野について継続して学びやすい環境であり、エキスパートナースを目指したい看護師に向いている、という意味です。
看護師が大学病院で働くメリットのまとめ
大学病院で働く最大のメリットは、充実した教育体制だと思います。他にもメリットはたくさんあります。
- 教育体制が確立している
- 経年別研修が充実しているため基礎をしっかり学べる
- 医療機器や医療器材が充実している
- 福利厚生が充実している
- 特定の分野のエキスパートナースを目指せる
看護師が大学病院で働くデメリットのまとめ
大学病院で働き続けるデメリットも知っておくべきでしょう。これらは言い換えれば民間病院で働くメリットでもあります。
- 看護技術、特に点滴、静脈注射の技術が身に付きにくい
- 勤務している診療科以外の患者さんを看ることができない
- 看護研究、研修参加が苦手だと辛い
- 民間病院への転職は慣れるまでが大変
民間病院から大学病院への転職は可能か
大学病院は新卒看護師か、国公立系病院からの転職しか受け入れないと思っていませんか?
民間病院から大学病院への転職は可能です。
大学病院も医療機関であることには変わりがなく、看護師不足の現場もあります。大学病院は、急性期加算を算定している病床がほとんどで、7対1以上の看護基準をクリアするためには、かなり看護師を充足させる必要があるからです。
一般求人広告に採用情報が出ることは少ないため、各大学病院のホームページの採用欄をチェックすることをおすすめします。
大学病院ごとに違いますが、履歴書の他、過去に就労した医療機関の「就労証明書」や、卒業した看護師養成機関の「卒業証明書、成績証明書」が必要な場合があります。
さいごに
いかがでしたか?大学病院ってこんなところ、というイメージがついた、と感じて頂ければ嬉しいです。
私は大学病院、国立病院を経て民間病院に転職し、25年以上看護師を続けています。大変なこともありましたが、大学病院で学んで良かった!と思うことは度々あります。
就職の選択肢の一つに大学病院を加えてみてはいかがでしょうか。未来のエキスパートナースを目指して歩き出しましょう。
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